永遠のマリア・カラス
CALLAS FOREVER
(2002年 イタリア/フランス/イギリス/ルーマニア/スペイン 108分)
2004年3月13日から3月19日まで上映
■監督・脚本 フランコ・ゼフィレッリ
■脚本 マーティン・シャーマン
■出演 ファニー・アルダン/ジェレミー・アイアンズ/ジョーン・プロウライト/ジェイ・ロダン
声を失い、愛するギリシャの富豪オナシスも亡くし、パリで失意のどん底にいた歌姫マリア・カラス。『カルメン』の映画化に復活を決意し、過酷な稽古や再起への不安を乗り越え、生きる情熱と以前のプライドを取り戻していくが、果たして彼女の新しい幕は開くのか…。
神に祝福された歌声と美貌で瞬く間にオペラ界の頂点に登りつめた天才歌手マリア・カラス。そのなカラスの謎の晩年を演じるのは『8人の女たち』で再評価されたファニー・アルダン。歌と恋に生きた女の艶やかさとプライドを滲み出るような渾身の演技で魅せ、孤高の芸術家の深い孤独と苦悩が浮き彫りになっていく。
「華やかな伝説やスキャンダルの影に隠されたカラスの真実を伝えたい。」と彼女の盟友でオペラ演出家であるイタリアの巨匠フランコ・ゼフィレッリが監督、亡き友に捧げた魂の物語である。
圧巻の舞台シーンでは、カラス全盛期の歌声がファニー・アルダンの華麗な演技に重なり、伝説の歌姫マリア・カラスがスクリーンに甦る。贅を尽くしたロココ調のカラスの部屋や、ファニー・アルダンがエレガントに着こなす20点ものシャネルの衣装も見所である。
(WING)
マグダレンの祈り
THE MAGDALENE SISTERS
(2002年 イギリス/アイルランド 118分 )
2004年3月20日から3月26日まで上映
■監督・脚本・出演 ピーター・ミュラン
■出演 ノラ=ジェーン・ヌーン/アンヌ=マリー・ダフ/ドロシー・ダフィ/ジェラルディン・マクイーワン/アイリーン・ウォルシュ
■2002年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞(監督:ピーター・ミュラン、出演:ジェラルディン・マクイーワン/ノラ=ジェーン・ヌーン)ほか
★本編はカラーです
カトリック教会のことを詳しく知らない日本人が見た場合には、この作品のもつ一面…理不尽さを指摘せずにはいられない。
史実かどうかは別として、1960年代まではアイルランドのカトリック教会では特に性に対する罪には厳しく、こうした罪を犯せば地獄に行くことや厳しい罪の償いが強調され、アイルランドの社会全体に影響を与えていたことは事実であったとされている。
しかし、この作品の強みはなんといっても登場人物のキャラクターである。三人の主人公はマグダレン修道院のひとつに同じ日に収容された少女たち…美しい孤児のバーナデット(ノーラ=ジェーン・ヌーン)〈とんでもなく美しい〉、いとこにレイプされた少女マーガレット(アンヌ=マリー・ダフ)、赤ん坊と引き離された未婚の母ローズ(ドロシー・ダフィ)、それぞれが理不尽な理由で修道院に送り込まれ、冷酷なシスターたちに労働力として酷使され、外に出ることはおろか外部の人間と話すことも禁じられてしまう。
全ての人間性を剥奪された環境の中で、それでも最後まで決して希望を失わず立ち向かう彼女たちの凛とした美しいほどの力強さ。『マグダレンの祈り』はそんな彼女たちの姿を圧倒されるような深い感動と共に描き出した重厚な作品であり、118分があっという間に過ぎてしまう。そしておそらくエンドロールで席を立つ気になれないものが込み上げてくる秀作である。
(WING)