ラストエンペラー
THE LAST EMPEROR
(1987年 イタリア/イギリス/中国 163分)
2004年12月25日から2005年1月7日まで上映 ■監督・脚本 ベルナルド・ベルトルッチ(『ドリーマーズ』
■脚本 マーク・ペプロー/エンツォ・ウンガリ
■撮影 ヴィットリオ・ストローラ
■音楽 坂本龍一/デヴィッド・バーン/スー・ソン

■出演 ジョン・ローン/ジョアン・チェン/ピーター・オトゥール/坂本龍一/デニス・ダン/ヴィクター・ウォン/高松英郎

■1987年アカデミー賞作品賞・監督賞・脚色賞・編集賞・撮影賞・作曲賞・音響賞・美術監督賞・美術装置賞・衣装デザイン賞受賞

(C)松竹

pic巨匠B・ベルトルッチが4年の歳月を費やし、中国本土に一大ロケーションを敢行した歴史ドラマ。それまで『暗殺の森』、『ラストタンゴ・イン・パリ』そして『1900年』等、世界中でセンセーショナルを巻き起こしてきたベルトルッチの所謂オリエンタル路線第一作でもある。

わずか3歳で清朝皇帝の座に着きながらも、近代化の嵐にもまれ孤独な青春を送らざるを得なかった溥儀。満州人の長たる誇りが、クーデターにより皇帝の座を追われた後もふつふつとたぎり、日本帝国と手を取って満州国建設の野望に賭けて行く。

pic文化大革命以降に至るまで、文字通り激動の溥儀の人生を余す所なく描ききったベルトルッチの演出、盟友ヴィットリオ・ストラーロによる見事としかいいようのないカメラワーク、そして坂本龍一、デヴィッド・バーンら東西の作曲家の手によって感動を付加する音楽。その全てが超一級品。

物語は史実に則って進行していくが、歴史に詳しくなくとも充分に楽しめる。スケールの大きな映像美の中で語られるのは、溥儀という一人の男の数奇な人生なのだ。

pic上映時間163分とかなり長尺だが、そこは稀代のストーリーテラー、ベルトルッチ。冒頭からラストまでを男の生涯を円のように包みこむ秀逸な脚本構成で一気に見せてしまう。むしろ終わってしまうのが惜しい位である。

映画史に残る傑作。この機会に是非ともスクリーンでご覧いただきたい。

(マコト)


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ラスト サムライ
THE LAST SAMURAI
(2003年 アメリカ 154分)
pic 2004年12月25日から2005年1月7日まで上映 ■監督・脚本・製作 エドワード・ズウィック
■脚本 ジョン・ローガン/マーシャル・ハースコヴィツ
■出演 トム・クルーズ/ティモシー・スポール/渡辺謙/ビリー・コノリー/トニー・ゴールドウィン/真田広之/小雪

■2003年アカデミー賞助演男優(渡辺謙)ほか3部門ノミネート

舞台は明治維新の日本。オールグレン大尉(トム・クルーズ)は、近代化を目指す政府軍の指南役として日本に招かれ、そこで勝元(渡辺謙)という男と出会う。

pic彼は天皇と国のために代々命を捧げてきたサムライ一族の長として深く尊敬されている男である。今まさに過去の遺物として葬り去られようとしている最後のサムライたち。

南北戦争の英雄でありながら、今や名誉も誇りも見失い、抜け殻のようになって生きるオールグレンの心に、彼らが「サムライ・スピリッツ」を呼び覚ました。

picそこに描かれるかつての日本に、そしてそこに生きる男たちの生きざまに、我々日本人こそが目を見張り、胸にこみ上げるものがきっとあるに違いない。日本という国は、こんなにも美しい国だったのか、日本人はかつてこれほどまでに誇り高く、強く、真っ直ぐに生きてきたのか、と。

やがてサムライたちは最後の決戦へ旅立って行くが、その目には一点の曇りも迷いも無く真摯で美しい。忘れかけていた日本人の心が、ここにはある。

picエドワード・ズウィック監督は、以前から日本の文化や映画に魅了されてきたという。「最初に黒澤明の七人の侍を見たのは17歳の時。それ以来何度見たか覚えていないくらい繰り返し見ている」と語るズウィック。「映画製作者の道に進むきっかけとなった」とまで言っている。

ズウィックの映画では、戦争と名誉という単純には語り尽くせないテーマに焦点を当てることが多い。そんな彼にとって、西洋の兵士と日本のサムライとの共通点、またはその違いを映画の中で浮き彫りにすることは、真に意欲的な仕事であったと言えるだろう。

(cotd)



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