スパニッシュ・アパートメント
L'AUBERGE ESPAGNOLE
(2001年 フランス/スペイン 129分)
2004年12月18日から12月24日まで上映
■監督・脚本 セドリック・クラピッシュ(『猫が行方不明』『パリの確率』)
■出演 ロマン・デュリス/ジュディット・ゴドレーシュ/オドレイ・トトゥ/セシル・ドゥ・フランス/ケリー・ライリー
■2002年セザール賞有望若手女優賞受賞(セシル・ドゥ・フランス)
(C)2003 TWENTIETH CENTURY FOX誰と恋をしたらいいのか?どんな仕事をしたらいいのか?人はいつも迷い道の途中。
パリで暮らす25歳の青年グザヴィエ(ロマン・デュリス)は経済を専攻する大学生だ。卒業を間近に控え就職活動ににいそしむ年齢。夢を追いかけるか、安定した人生を求めるか。
父親のコネを使って面会した、お役所の大物ペラン氏が言うには「スペイン語とスペイン経済を勉強しなさい」そうすれば「将来性のある仕事をみつけてやろう」。
かくして、恋人のマルティーヌ(オドレイ・トトゥ)を残しスペインはバルセロナへの留学を決意する。バルセロナの空港におり立ったグザヴィエは、ワイルドな街の雰囲気に若干おびえつつ、母親に紹介されたアパートへ向う。
が、しかし。そこは長く滞在できる環境ではなかった。グザヴィエは、空港で知り合った男に泣きつき、その男の部屋で居候をしながら、自分のアパート探しをはじめた。
苦難の果てに見つけたのは、彼にとっての“理想の部屋”。その部屋にはヨーロッパ各国からやってきた5人の若者たちが(家賃をうかすために)一緒に暮らしていた。5人による“面接”にみごとパスしたグザヴィエは晴れて“スパニッシュ・アパートメント”のメンバーとなる。
とはいえ、その暮しは混乱の極み。冷蔵庫内の置き方から、お風呂場の掃除の仕方、恋愛、友情、喧嘩に挫折…。
本作の原題は『L'auberge espagnole』。直訳すれば“スペインの宿”となるが、フランス語のスラングで“ごちゃまぜ”という意味も持つ。まさにごちゃまぜな、グザヴィエのスペインでの生活はどうなってゆくのか…。
本国フランスではもちろん、ヨーロッパ各国で大ヒットを記録し、批評的にも大絶賛を受けたセドリック・クラピッシュ監督の青春映画。
ヨーロッパの若者たちに圧倒的な共感を迎えられたこの作品は、フランスのアカデミー賞であるセザール賞に5部門でノミネートされ、最優秀新人賞をセシル・ド・フランスにもたらすことになった。
(ロバ)
ドリーマーズ
THE DREAMERS
(2003年イギリス/フランス/イタリア 117分 )
2004年12月18日から12月24日まで上映
■監督 ベルナルド・ベルトルッチ
■原作・脚本 ギルバート・アデア
■出演 マイケル・ピット/エヴァ・グリーン/ルイ・ガレル/ジャン=ピエール・レオ
1959年、そのすべてが新しく、世界中に衝撃を与えた、『勝手にしやがれ』。ルーブル美術館を9分45秒で駆け抜けるゲリラ撮影、『はなればなれに』。
ベルトルッチ自らが「ヌーヴェルヴァーグへのオマージュ」と公言する最新作『ドリーマーズ』は名作映画からの夥しい引用に満ちているだけでなく、ジミ・ヘンドリックスの名曲「サード・ストーン・フロム・ザ・サン」から始まり、ドアーズ、ジャニス・ジョップリンなど、カウンター・カルチャーの時代を疾走した音楽が、映像と見事に融合している。
1968年。五月革命に揺れるパリ。アメリカ人留学生のマシュー(マイケル・ピット)は、セーヌ河畔のシャイヨー宮にあるシネマテーク・フランセーズに通いつめていた。
ある日、創設者アンリ・ラングロワの解雇に講義するデモの最中に、魅惑的で洗練された双子の姉弟イザベル(エヴァ・グリーン)とテオ(ルイ・ガレル――フィリップ・ガレルの息子!)に出会う。3人のシネフィルたちはたちまち意気投合。マシューは、大人の尊大さと子供の脆さを持ち合わせた双子たちに、急速にのめりこんでいく。
冒頭のデモのシーンから、当時の実際の映像と、再現した映画の映像をコラージュしており、その両方に顔を出すジャン=ピエール・レオー。若き日の姿と、年老いた彼の姿を繋いで見られるのがおもしろい。相変わらずオーバーアクションだ。
しかし、ベルトルッチ自身が「五月革命を描きたかったわけではない」と語るとおり、これは五月革命の映画ではない。確かに、時代の史実も、エスカレートする映画クイズも、そして頻繁に挟み込まれる古い映画のコラージュも、双子という親密性に対する「パリのアメリカ人」マシューの介入という関係も、どれも中途半端な印象がつきまとうのは否めない。しかしその中途半端さこそ、ベルトルッチが描きたかったものなのではないか。
映画も、政治も、セックスも、きっかけさえあればいとも簡単にのめりこめる若者たち。68年という歴史的な時代を背景にしていながら、五月革命にとらわれずに若者の生態を描写する事によって浮き彫りになる、その青さ・曖昧さ・儚さは、刹那的にしか生きられない彼らの実情を物語っている。
若さに対する無意識と、政治・社会に対する無教養ゆえの行動。彼らの本質はどこに存在するのか。そして彼らはどこに行きつくのか。
ドリーマーズ。夢を見る人たち。夢とは現実と同時に見ることはできないのである。
(mana)