トンネル
DER TUNNEL
(2001年 ドイツ 167分)
2004年10月9日から10月15日まで上映
■監督 ローランド・ズゾ・リヒター
■脚本 ヨハンヌ・W・ベッツ
■出演 ハイノ・フェルヒ/ニコレッテ・クレビッツ/セバスチャン・コッホ/マフメット・クルトゥル/フェリックス・アイトナー
★本編はカラーです
(C)アルシネテラン1961年8月13日、一夜にして東西ドイツは分断され、家族や恋人たちが引き裂かれた。人々はあらゆる手を尽くして東西の垣根を越えようとしたが、今や国境沿いにはコンクリートの頑強な壁が立ちはだかっていた。
東ドイツ水泳チャンピオンのハリー(ハイノ・フェルヒ)は、妹ロッテとその幼い娘を、東側から助けようとしていた。技師のマチス(セバスチャン・コッホ)は、国境警備隊に逮捕されてしまった妊娠中の妻カロラが心配でならなかった。西ベルリンに暮らすフィリッツィ(ニコレッテ・クレビッツ)は、東側にいる恋人を呼び寄せたいと思っていた。
彼らは西ベルリンで出会い、東側に残してきた大切な人々を救い出そうと、壁をはさんで西から東へ抜けるトンネルを掘ることを思いつく。不法出入国を取り締まる東ドイツ国家保安局の警備は日に日に厳しさを増す中、トンネル計画は進められた…。
壁ができて間もない頃の1960年代初頭、家族、知人などを東ベルリンから亡命させるために、計10本程度のトンネルが掘られたとされている。その中で最も有名な「トンネル29」と呼ばれているものの脱出劇を描いたのがこの映画。
もともとは前後編のTVシリーズとしてドイツで放映され、国内で高い評価を得たあと劇場版に編集しなおされた。一見地味な展開だが、2時間半を越える上映時間をちっとも長く感じさせない、張り詰めた緊迫感が持続している。
それにしても厚さにして1mもない壁を越えるために、145mもの長さのトンネルを掘り続けるという根気の凄さ!これが実際に起きた出来事だということを思うと、その重みに心が動かされずにいられない。
俳優たちの演技もよく、感動の人間ドラマとしても、手に汗握る脱出劇としても、政治サスペンスとしても楽しめる。
(mana)
グッバイ、レーニン!
GOOD BYE, LENIN!
(2003年 ドイツ 121分)
2004年10月9日から10月15日まで上映
■監督・脚本 ヴォルフガング・ベッカー
■脚本 ベルント・リヒテンベルグ
■音楽 ヤン・ティルセン
■出演 ダニエル・ブリュール/カトリーン・ザース/マリア・シモン/チュルパン・ハマートヴァ
■2003年ベルリン国際映画祭ヨーロピアンフィルム賞受賞ほか
★本編はカラーです
(C)ギャガ・コミュニケーションズ1989年、ベルリンの壁崩壊直前の東ベルリン。事件は東ドイツ建国40周年を祝う盛大な式典が行われた、10月7日の夜に起こった。
改革を求めるデモに参加したアレックスは、東ドイツに忠誠を尽くす愛国主義者の母・クリスティアーネに、警官ともみあっている姿を目撃されてしまう。ショックで心臓発作を起こしたクリスティアーネはそのまま昏睡状態に陥る。責任を感じたアレックスは毎日のように、看病を続けた。
その間も、歴史の歯車は急速に回転し続ける。11月9日、ベルリンの壁崩壊。東ベルリンには資本主義の波が押し寄せ、アレックスの環境はどんどん変わっていく。そんな中、母は奇跡的に意識を取り戻すが、「もう一度強いショックを与えたら命取りになる」と医者から忠告されてしまう。
東ドイツ崩壊を知ったときの母のショックを案じたアレックスは、母を自宅に引き取り、東ドイツ体制が続いているフリを装うのだが…。
タイトルやストーリーのイメージから、政治色の強い暗めな映画だと思い込んでしまったが、全く違った。壁崩壊はあくまで狂言回しでしかなく、コメディタッチ(でもバカ笑いでなく、くすりと笑えるかんじ)な味付けで、家族愛をほんのりあたたかく描いた、ハートフルな物語。
なくなった社会主義国家・東ドイツを存在しているように見せるための小細工(まさに小細工としか言い様がない!)の数々がすばらしい。ゴミ捨て場で拾ったビンを煮沸消毒して中身を入れ替えたり、ラベルを張り替えたり、果てはニュース番組まで偽造してしまう。アナログな小細工を必死で繰り返す姿が本当におかしい。
本国ドイツでは600万人を動員する記録的大ヒットとなり、ベルリン映画祭で最優秀ヨーロッパ映画賞(嘆きの天使賞)を受賞。話や背景はまったく違うのに、どこか『アメリ』を彷彿とさせる映画だと思ったが、それもそのはず、音楽を担当してるのが『アメリ』と同じヤン・ティルセン。
押し付けがましくない展開に、役者の演技も絶妙。特に終盤の母親の「視線の演技」には泣けます!
(mana)