【2024/4/6(土)~4/12(金)】『サッドヴァケイション』+『レイクサイド マーダーケース』 / 『月の砂漠』+『東京公園』

まつげ

『月の砂漠』の永井は、IT起業家として時の人となる。ビジネスマンと家族の父親として、人生の成功者となるはずだった。東京に巣食う孤独や閉塞感が、そんな永井に牙をむく。「欲しいと思ったものを手に入れると、その欲しかったものは消えてなくなる。あとに残るのは妄想だけ。」もがけばもがくほど、周りは離れていき自身も壊れていく。そして行き着いたのは、東京から離れ自然豊かな山間にある古い一軒家。そこで、満月の光は苦しむ永井を優しく照らしていく。

『レイクサイド マーダーケース』の並木は、娘の中学お受験合宿に嫌々ながらも家族で参加することとなる。普段の並木は妻とは別居し、さらには浮気もしている。けれど、模擬面接では仲の良い夫婦を演じる。過度な中学受験に疑問を抱きつつも、他の家族と足並みを合わせ、合宿をやり過ごそうとしていた。しかし、合宿のさなか起きた殺人事件を発端に、避けては通れない状況に向き合うことになる。

一方、『東京公園』ではカメラマン志望の大学生光司が、東京の公園で家族写真を撮り続けている。そこへ、一人の男から「ある女性を尾行してほしい」と理由もわからぬまま依頼される。彼女は東京の公園を巡っていた。光司もその後を追う。「人は幸せのにおいのあるほうにいくんだよ」と光司の姉は説く。光司は、悩みを抱えながらも懸命に生きる周りの人々に支えられながら成長していく。そして、都会の喧騒の中でほっと一息できる公園のような、人間の愛おしさや優しさを見つけ育んでいく。

そんな東京からほど遠い、北九州を舞台に描かれる『サッド ヴァケイション』。『Helpless』から始まり、『EUREKA ユリイカ』へと積み重ねてきた物語とそこに生きる登場人物たち。それらが交差する“北九州サーガ”の着地点。主人公健司は『Helpless』でバイクに跨る高校生だった。時は流れ、健司のその後を生きる姿が描かれる。人の人生はつながり絡み合う、誰一人として同じ道はない。

決して誰も置いてゆかない。生きていく事で生まれる新しい道。つながり、支えあえばさらにその道は広がってゆく。たくさんの人と作り上げた物語の最後には「監督 青山真治」の名前がある。これからもずっと永遠に。

サッド ヴァケイション
Sad Vacation

青山真治監督作品/2007年/日本/136分/35mm/ビスタ/SR

■監督・原作・脚本 青山真治
■プロデューサー 甲斐真樹
■撮影 たむらまさき
■編集 大重裕二
■音楽 長嶌寛幸

■出演 浅野忠信/石田えり/宮崎あおい/板谷由夏/中村嘉葎雄/オダギリジョー/光石研/斉藤陽一郎/辻香緒里/川津祐介/とよた真帆/嶋田久作/豊原功補/山口美也子/高良健吾

■第64回ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門オープニング作品/第32回トロント国際映画祭正式出品作品/第12回釜山国際映画祭正式出品

© 間宮運送組合 2007

【2024/4/6(土)~4/12(金)上映】

あの女を不幸にするためなら、俺はどんなことでもやってやる

舞台は若戸大橋のたもとの小さな会社、間宮運送。社長の間宮は、かつてバスジャック事件の被害に遭った梢、借金取りに追われる後藤をはじめ、資格を剥奪された医者やヤクザから身を隠して暮らす流れ者たちに職と住み処を与えていた。一方密航の手引きをしていた健次は、追っ手から逃れるために運転代行へと職を変え、間宮と出会う。そこで健次は、玄関先に出てきた間宮の妻・千代子の姿を見て驚愕する。千代子は、かつて健次を捨てて出ていった母に違いなかった。母への復讐を胸に秘めともに暮らし始めた健次の前に、偉大なる母性が立ちはだかる…。

すべてを包み込み美しく生きるゆるぎない女たちの物語。

鮮烈なデビュー作『Helpless』から11年、『EUREKA ユリイカ』から7年の時を経て描き出した“北九州サーガ”の集大成的作品である本作『サッド ヴァケイション』。「EUREKA ユリイカ」で三島由紀夫賞を受賞するなど、小説家としても活躍する青山自身の同名小説をベースに、全編北九州ロケを敢行した意欲作。新たなエッセンスはずばり“やさしさ”。鋭い洞察力と膨大な知識に裏打ちされた作家性は健在であるが、観るものを釘付けにするストーリー展開、ヴァラエティに富んだ新鮮な音楽などが加わり、名快かつ爽快感溢れる青山ワールドが広がっている。

主演は『Helpless』に続いて健次を演じる浅野忠信。もう一人の主役というべき母・千代子役を石田えり、『EUREKA ユリイカ』に続いて梢を宮﨑あおいが扮する。そのほか、板谷由香、中村嘉葎雄、オダギリジョーら豪華キャストが共演。また、洗練された音楽センスに定評のある青山監督が『レイクサイドマーダーケース』『エリ・エリ・レマ・サバ・クタニ』に続いて長嶌寛幸とコラボレート。今回もさまざまなジャンルの音楽を引用し、生み出し、映画を盛り上げる。本作では、キャラクターの感情や人間性を表現した音がそれぞれにあてられており、演出の重要なエッセンスとなっている。

レイクサイド マーダーケース
Lakeside Murder Case

青山真治監督作品/2004年/日本/118分/35mm/ビスタ/SR

■監督 青山真治
■プロデューサー  仙頭武則
■原作 東野圭吾「レイクサイド」(実業之日本社刊)
■脚本 深沢正樹/青山真治
■撮影 たむらまさき/池内義浩
■音楽 長嶌寛幸

■出演 役所広司/薬師丸ひろ子/柄本明/鶴見辰吾/杉田かおる/黒田福美/眞野裕子/豊川悦司

©2005 フジテレビジョン

【2024/4/6(土)~4/12(金)上映】

お受験合宿の夜、お父さんの愛人が殺されました。

名門中学への受験を控え、子供の勉強合宿のために湖畔の別荘に集った3組の家族と塾講師。並木俊介は受験に疑問を抱きつつも、娘の舞華のために、別居中の妻である美菜子と仲のよい夫婦を演じていた。その晩、俊介の愛人である高階英里子が何の前触れもなく別荘を訪れる。俊介は英里子と外で落ち合う約束をするが、英里子は現れない。別荘に引き返すと、そこには英里子の死体が横たわっていた。「私が殺した」という美菜子の言葉に愕然とする俊介をよそに、事態はさらに混迷を深めていく…。

人間の狂気を浮かび上がらせる、新感覚サイコミステリー

ベストセラー作家・東野圭吾が2002年に書き下ろしたミステリー小説「レイクサイド」。名門中学受験を控えた4家族が勉強合宿に訪れた湖畔の別荘。そこで起こった殺人事件の真相を描いた本作は、発売後たちまちベストセラーを記録した。この原作を青山真治監督が自身初となるミステリー映画の演出を手掛けた。

主人公の並木俊介を演じるのは役所広司。俊介の妻・美菜子役には薬師丸ひろ子が扮する。また、豊川悦司、柄本明、鶴見慎吾、杉田かおるなど個性派・演技派たちが脇を固め、物語に奥行きと厚みをもたせる。人里はなれた湖畔の別荘を舞台に繰り広げられる。緊張感溢れる謎解きと息をもつかせぬサスペンス。そして驚愕の真相…。人間の狂気を浮かび上がらせる、新感覚サイコミステリー。

月の砂漠
Desert Moon

青山真治監督作品/2002年/日本/131分/35mm/スタンダード/SR

■監督・脚本・編集 青山真治
■プロデューサー  仙頭武則
■プロダクションスーパーバイザー 佐藤公美
■撮影 田村正毅

■出演 三上博史/とよた真帆/柏原収史/碇由貴子/細山田隆人/國村隼/生瀬勝久/ピエール瀧/村上淳/粟田麗/江角英明/船木誠勝/津田寛治/板尾創路/夏八木勲/秋吉久美子/萩原健一

■第54回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品

© 2001/2003 「月の砂漠」製作委員会

【2024/4/6(土)~4/12(金)上映】

アシタ、アナタはドコにイル?

日本人初の株式海外市場上場を達成し、IT革命児となった永井には、「家=house」はあっても「家庭=home」はない。出ていった妻アキラと娘カアイは永井が虚ろに見つめる写真やビデオといった虚像の中で存在するのみだ。

「欲しいと思ったものを手に入れると、その欲しかったものは消えてなくなる」時代の寵児とされる永井はテレビ番組に出演し語る。その番組を見ていた男娼のキーチは、その晩道端で偶然永井と出会う。「あんたの“欲しかったもの”って、家族のこと?」と尋ねるキーチは、永井は答えるかわりにこう頼んだ。「妻と娘を探してくれ。見つけたら、女房を誘惑して寝てくれ」その頃、アキラとカアイは、シティホテルの一室に滞在していた…。

日本の家族の肖像を鋭く描いた問題作

カンヌ映画祭にて国際批評家連盟賞とエキュメニック賞の二冠に輝いた前作『EUREKA ユリイカ』に続き、再び仙頭プロデューサーとコンビを組んだ本作『月の砂漠』。日本人2人目の快挙となる、2年連続でカンヌ映画祭コンペティション部門へ正式招待された。

主演の永井役は本作が6年ぶりの映画出演となった三上博史。妻アキラ役を演じたとよた真帆は、本作出演後に青山真治監督と結婚した。キーチ役には柏原収史が扮する。そのほか國村隼、夏八木勲、秋吉久美子、萩原健一などベテランの俳優陣が脇を固める。

高度成長時代からバブル崩壊を経て構造不況が叫ばれた2000年頃の現代日本。そして株式上場こそが企業の到達点であり、さらなる成功の始発点とされた日本経済神話。市場の罠に陥ったベンチャーの旗手が、崩壊した家庭を取り戻そうともがく姿を描く。

東京公園
Tokyo Park

青山真治監督作品/2011年/日本/119分/DCP/ビスタ

■監督 青山真治
■原作 小路幸也「東京公園」(新潮文庫刊)
■脚本 青山真治/内田雅章/合田典彦 
■撮影 月永雄太
■編集 李英美 
■音楽 山田勲生/青山真治

■出演 三浦春馬/榮倉奈々/小西真奈美/井川遥/高橋洋/染谷将太/長野里美/小林隆/宇梶剛士

©2011「東京公園」製作委員会

【2024/4/6(土)~4/12(金)上映】

「彼女の写真を撮ってほしい」突然の依頼がはじまりだった。

東京の公園で、家族写真を撮り続ける大学生の光司は、幼い頃に亡くした母の影響でカメラマンを目指していた。ある日一人の男性から「彼女を尾行して、写真を撮って欲しい」と突然の依頼が舞い込む。光司は理由もわからないままに依頼を受けるが、このことをきっかけに自分自身と、そしてそばにいる女性たちと向き合うことになる。何でも話せて一緒にいることが自然だった、幼馴染の富永。いつもやさしく力強く支えてくれる、親の再婚で義理の姉となった美咲。そして、記憶の中の誰かに似ているファインダー越しに佇む女性。光司の視線が3人の女性をまっすぐ見つめるとき、彼自身もまた変わりはじめていく――。

もう一度、幸せに。やさしくも切実な想いがあふれる、みずみずしいラブストーリー。

「東京バンドワゴン」で多くのファンを生んだ小路幸也の同名小説「東京公園」を青山真治監督が映画化。『サッド ヴァケイション』以来4年ぶりの長編となった本作で撮り上げたのは、恋愛、結婚、家族のなかに息づく、純度の高い愛の物語。そばにいるからこそ、気づくことのできなかった思い。失くしてしまった存在と向き合う勇気。自分自身の心の奥底を見つめ、相手のまなざしを受け止めたとき、ようやく新たな時間が動き出していく――。

光司役には三浦春馬。受け身がちに生きてきた光司が揺らぎながらも成長していく姿を伸びやかに演じる。富永を演じるのは榮倉奈々。心に影を抱えながらいつも明るく振る舞う幼馴染を魅力的にみせている。そして小西真奈美、井川遥、染谷将太、高橋洋、宇梶剛士といった実力派俳優が共演。光に満ちあふれた公園を舞台に、そばにいる大切な人を見つめ、寄り添いたくなる、切なくて優しい物語。