オタール・イオセリアーニ PROFILE
1934年2月2日、旧ソビエト連邦グルジア共和国(現ジョージア)のトビリシに生まれる。56年から61年まで、モスクワのソ連映画学院の監督科に在籍。卒業後は編集技師として働き、いくつかのニュース映画を監督する。
66年に長編第1作『落葉』を発表。その内容から国内では公開禁止となるが、カンヌ国際映画祭に出品し、初めて西側で紹介される。79年に活動の拠点をフランス・パリに移すが、その後も精力的に創作活動を続ける。長編作品はいずれもカンヌ・ヴェネチア・ベルリンで賞賛を浴び、世界の名匠としての地位をゆるぎないものにした。最新の作品は、集大成ともいえるシニカルな人間賛歌『皆さま、ごきげんよう』(2015)。
混沌とする社会の不条理を、反骨精神たっぷりにセンスの良いユーモアで、ノンシャランと笑い飛ばす。円熟味を増しながらも自由で独創性あふれる作品作りで、世界中の映画ファンを魅了し続けている。
四月
April
■監督 オタール・イオセリアーニ
■脚本 オタール・イオセリアーニ/エルロム・アフヴレディアニ
■撮影 ユーリ・フェドネフ
■音楽 スルハン・ナシーゼ
■出演 ギア・チラカーゼ/タティアナ・チャントゥリア
■2000年カンヌ国際映画祭特別招待作品(復元版)
【2023/11/4(土)~11/10(金)上映】
遊び心が満載!イオセリアーニの中編デビュー作
物質的豊かさを求めるうちにケンカを繰り返すようになった若い男女が、愛の大切さに気づくまでを、セリフを使わず音(楽)と映像だけでコミカルに描く。製作当時、不当な上映禁止処分に遭い、“幻の傑作”と言われていたが、2000年カンヌ国際映画祭で復元され、世界中から集まった観客を熱狂させた。
落葉
Falling Leaves
■監督 オタール・イオセリアーニ
■脚本 オタール・イオセリアーニ/アミラン・チチナーゼ
■撮影 アベサロム・マイスラゼ
■出演 ラマ―ズ・ギオルゴビアーニ/マリナ・カルツィヴァゼ/ゴギ・ハラバゼ
■1968年カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞受賞/ジョルジュ・サドゥール賞受賞
【2023/11/4(土)~11/10(金)上映】
イオセリアーニの名前が世界に知られるきっかけとなった記念すべき長編第1作。
ワイン工場の若い技術者ニコは、真面目な人柄で職人たちからも信頼を得ていた。出世主義者の同僚オタルは、そんな彼らを見下していた。工場はノルマ達成のため、未成熟のワインを瓶詰めするよう命じる。ニコは強硬に抵抗するが…。公開禁止となり、製作から2年後にカンヌ国際映画祭に出品。初めて西側で紹介された。
歌うつぐみがおりました
Once Upon a Time There Was a Singing Blackbird
■監督 オタール・イオセリアーニ
■脚本 オタール・イオセリアーニ/ディミトリ・エリスタヴィ/オタール・メフリシヴィリ/イリア・ヌシノフ/シェルマザン・カキチャシヴィリ/シモン・ルンギン
■撮影 アベサロム・マイスラゼ
■美術 ディミトリ・エリスタヴィ
■出演 ゲラ・カンデラキ/ジャンスグ・カヒゼ/マリナ・カルツィヴァゼ
■1974年カンヌ国際映画祭監督週間正式出品
【2023/11/4(土)~11/10(金)上映】
“ジョージア風ヌーヴェルヴァーグ”と名付けたいほどにみずみずしく描いた初期の傑作。
若きティンパニー奏者のギアは、気が多くルーズだが悪気がないので憎めないヤツだ。今日もまた約束事と時間に追われて生きる彼に、思いもよらぬ結末が…。愛すべき主人公の姿は『勝手にしやがれ』のジャン=ポール・ベルモンド、トリュフォー作品のジャン=ピエール・レオーを彷彿させる魅力がたっぷり。
田園詩
Pastorale
■監督 オタール・イオセリアーニ
■脚本 レゾ・イナニシヴィリ/オタール・イオセリアーニ/オタール・メフリシヴィリ
■撮影 アベサロム・マイスラゼ
■編集 ジュリエッタ・べズアシヴィリ
■美術 ヴァフタン・グルルワ
■音楽 テイラムズ・バクラゼ
■出演 ナナ・イオセリアーニ/レゾ・チャルハラシヴィリ/ヌクリ・タヴィタシヴィリ/マリナ・カルツィヴァゼ/タマラ・ガバラシヴィリ
■1981年ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞
【2023/11/4(土)~11/10(金)上映】
自然と人間をみずみずしいタッチでとらえ、祖国への思いを綴った映像叙事詩。
ジョージアのとある農村にトビリシから弦楽四重奏団の若者たちが夏合宿にやって来る。彼らは練習をしながら、村人たちと交流する。宿泊先で、幼い弟や妹の面倒を見ながら、彼らの世話をする娘エドゥキは、自由で都会的な音楽家たちに憧れる。
『落葉』(66)、『歌うつぐみがおりました』(70)に続いて、ジョージア映画界の重鎮アベサロム・マイスラゼが撮影を手がけ、ジョージアの農村における自然と人間たちの日々の営みを余韻たっぷりに映し出す。イオセリアーニの娘ナナ・イオセリアーニが、エドゥキを演じている。
蝶採り
Chasing Butterflies
■監督・脚本 オタール・イオセリアーニ
■撮影 ウィリアム・ルプシャンスキー
■編集 ジョスリヌ・ルイス/ナタリー・アルキエ/アーシュラ・ウェスト
■美術 エマニュエル・ド・ショヴィニ
■音楽 二コラ・ズラビシヴィリ
■出演 ナルダ・ブランシェ/アレクサンドル・チェルカソフ/アレクサンドラ・リーベルマン/エマニュエル・ド・ショヴィ二/ピエレット・ポンポン・べラッシュ/タマラ・タラサシヴィリ/リリア・オリヴィエ/オタール・イオセリアーニ
■1992年ヴェネチア国際映画祭PASINETTI(新聞記者協会)賞/1993年モスクワ国際映画祭アンドレイ・タルコフスキー賞
【2023/11/4(土)~11/10(金)上映】
古き良き時代へのノスタルジーをにじませながら、お金の力とはかなさをシニカルに描いた1本。
フランスの古い城館で余生を過ごす2人の老婦人。森でピストルを撃ち、オーケストラに参加したりと充実した日々を送る彼女たちの元に、バブル景気の日本から、城を買いたいとビジネスマンがやって来た。老婦人は断固拒否するが、彼女たちのひとりが急死したことから事態は思わぬ方向へ…。
城主マリ=アニエスのいとこを演じ、本作以降イオセリアーニ作品の常連となったナルダ・ブランシェは、イオセリアーニのパリの自宅のご近所さんで、「見事な身振りや言葉の勘所をわきまえた本物の老婦人」として抜擢された。