【2022/12/17(土)~12/23(金)】『NOPE/ノープ』『ブラック・フォン』

「一体なんだこれは!!?」
観終わったあとの高揚感、そして爽快感…。私が「なにやらすごいものを観てしまった!」と大興奮した作品。それが今回上映する『NOPE/ノープ』と『ブラック・フォン』の現代スリラー2本立て。いや、スリラー、ホラー、SF、友情、オカルト…もはやジャンルなんて関係ない! もし、「怖そうだから…」と観ることを躊躇っている人がいたら絶対に勇気を出して観てみて欲しい。垣根を越えた壮大なカタルシスが早稲田松竹で待っている!

『NOPE/ノープ』はジョーダン・ピール監督(『ゲットアウト』『アス』)の3年ぶりとなる期待の新作。ロサンゼルス近郊の牧場、馬の調教師を生業にする一家が登場する。主人公のOJはどこにでもいる黒人の青年だが、牧場主であるOJの父が「空からの落下物」に直撃して突然死するという不幸に見舞われてしまう。OJがその時に目撃した「謎の飛行物体」を忘れられずにいると、妹のエメラルドは「動画に激写しバズって金持ちになる!」ということを思いつく…。

ピール監督の作品は、どれも人種差別や社会問題が背景にあり、今回の『NOPE/ノープ』もその要素を含みながら、これまでにないスケールで強烈な風刺が描かれる。登場人物たちは、エンターテイメントの世界で「見世物」として搾取されてきた人々である。「目を合わせること」で人々を飲み込んでいく謎の飛行物体は、なぜOJたちの前に現れたのだろうか? 互いの「見る」「見られる」の関係が交差して物語は進んでいき、謎の飛行物体の正体が明らかになる…。過去作品とは一線を画した壮大な世界観は、『TENET テネット』の名撮影監督ホイテ・ヴァン・ホイテマの圧倒的映像を以て「最悪な奇跡」の数々、謎の飛行物体 VS OJたちの熱い戦いが展開される。

『ブラック・フォン』は『ゲットアウト』を生んだハリウッド気鋭のホラー映画制作プロダクション「ブラムハウス」の最新作で、監督は『フッテージ』『ドクター・ストレンジ』のスコット・デリクソン。主人公フィニーはちょっぴり内気な少年。気の弱いフィニーはいじめっ子に目をつけられてしまうが、彼には怖いものしらずの妹グウェン、喧嘩番長のロビンといった心強い仲間がいる。そんな中、町で続く奇妙な誘拐事件にフィニーが巻き込まれてしまう…。

広大な牧場が舞台となる『NOPE/ノープ』とは対照的に、密室劇が繰り広げられる『ブラック・フォン』は、ホラー、スリラーのジャンルを踏襲しつつ子供たちの友情、絆を描いた作品でもある。密室の中で突然鳴り響く黒電話から聞こえる声は、なんとフィニーと同じく誘拐された子供たちの声。はじめは驚き恐ろしいものの、フィニーを助けようとする彼らの声に、見ている我々も不思議と勇気づけられる。黒電話を通じて段々と芽生えていく友情や、兄を探し並走する妹グウェンの姿に思わず胸が熱くなるのだ。作品の原作者は、あのスティーブン・キングの息子(!)ジョー・ヒル。デビューするまで、キングの息子であることを公表していなかった彼だが、その血筋は健在。キングに「地獄のスタンドバイミー」と言わしめた今作は、新たなジュブナイル映画の傑作ともいえる。

さて、『NOPE/ノープ』ではOJをはじめ、馬やチンパンジーといった動物たちが映画やドラマというエンターテイメントの世界において搾取の対象として登場する。『ブラック・フォン』は舞台背景である70年代に、誘拐事件がエンターテイメントとして消費されていた史実が存在している。なにもかも雑に消費され、すぐに忘れ去られてしまう。『NOPE/ノープ』のOJも、『ブラック・フォン』のフィニーも、そうやってないものにされてきたものたちなのだ。だからこそ、クライマックスで彼らが見せる逆襲パワーはすさまじい! ドキドキハラハラしながら、気づけば絶対に彼らを応援しているはず。そして愛すべき「兄妹」の奮闘記でもある両作品。彼らの活躍を見逃すな!

ブラック・フォン
The Black Phone

スコット・デリクソン監督作品/2021年/アメリカ/107分/DCP/PG12/シネスコ

■監督 スコット・デリクソン
■製作 ジェイソン・ブラム/C・ロバート・カーギル/スコット・デリクソン
■原作 ジョー・ヒル(短編集『ブラック・フォン』収録/ハーパーBOOKS刊)
■脚本 スコット・デリクソン/C・ロバート・カーギル
■撮影 ブレット・ユトキーヴィッチ
■編集 フレデリック・トラヴァル
■音楽  マーク・コーヴェン

■出演 イーサン・ホーク/メイソン・テムズ/マデリーン・マックグロウ/ジェレミー・デイヴィス/ジェームズ・ランソン

© 2021 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

【2022/12/17(土)~12/23(金)上映】

密室に鳴り響く、「死者からの電話」

コロラド州のとある町。そこでは、子どもの失踪事件が相次いでいた。ある日、少年フィニーは学校から帰る途中、黒い風船を持つマジシャンだという男に出くわし、そのまま拉致されてしまう。気がつくと、フィニーは地下室に閉じ込められており、そこには鍵のかかった扉と鉄格子の窓、そして断線した黒電話があった。すると突如、断線しているはずの電話のベルが鳴り響く。フィニーは恐る恐るその受話器を取るが、それは死者からのメッセージだった。一方、行方不明となったフィニーを探す妹グウェンは、兄の失踪に関する不思議な予知夢を見る。

ブラムハウス・プロダクションズと『ドクター・ストレンジ』のスコット・デリクソン監督が放つ以心電信サイコ・スリラー!

“スリラー・ホラーの帝王”スティーブン・キングの息子であるジョー・ヒルが、作家デビューを果たした短編集「20世紀の幽霊たち」の一篇「黒電話」を映画化。子どもの連続失踪事件が起きているコロラド州のとある町で、不気味なマスクの男にさらわれてしまった少年と、その行方を追う妹が対峙する恐怖を描く。

監督は『ドクター・ストレンジ』、『エミリー・ローズ』のスコット・デリクソン。本作では、良質ホラー作品を量産し続ける“恐怖の工場”ブラムハウス・プロダクションズとタッグを組み、新たな殺人鬼を世に送り出す。4度のオスカーノミネートを誇る名優イーサン・ホークが得体の知れない連続誘拐犯に扮し、キャリア史上最もおぞましい役に挑んだ。

ノスタルジアと恐怖とアメリカの子ども時代――スリラーを越えて、サイコパス、スーパーナチュラル、サイキックなど、さまざまな要素が同時進行的に繰り広げられるスリリングな映画が誕生した。

NOPE/ノープ
Nope

ジョーダン・ピール監督作品/2022年/アメリカ/131分/DCP/シネスコ

■監督・脚本 ジョーダン・ピール 
■製作 イアン・クーパー/ジョーダン・ピール
■撮影 ホイテ・ヴァン・ホイテマ
■編集 ニコラス・モンスール
■音楽 マイケル・エイブルズ 

■出演 ダニエル・カルーヤ/キキ・パーマー/ブランドン・ペレア/マイケル・ウィンコット/スティーヴン・ユァン/キース・デヴィッド

© Universal Studios. All Rights Reserved.

【2022/12/17(土)~12/23(金)上映】

絶対に、空を見上げてはいけない。

南カリフォルニア、ロサンゼルス近郊にある牧場。亡き父から、この牧場を受け継いだOJは、半年前の父の事故死をいまだ信じられずにいた。形式上は、飛行機の部品の落下による衝突死とされている。しかし、そんな“最悪の奇跡”が起こり得るのだろうか? 何より、OJはこの事故の際に一瞬目にした飛行物体を忘れられずにいた。牧場の共同経営者である妹エメラルドはこの飛行物体を撮影して、“バズり動画”を世に放つことを思いつく。やがて起こる怪奇現象の連続。それらは真の“最悪の奇跡”の到来の序章に過ぎなかった…。

全世界で話題騒然、全ての予想を覆すジョーダン・ピールからの挑戦状!

人種差別という根深い問題を斬新な視点からとらえ、アカデミー賞4部門にノミネートされた『ゲット・アウト』。意外性に富んだ展開と壮絶なバイオレンスを織り込み、格差社会のデフォルメを見せつけた『アス』。スリラーというジャンルに社会性を巧みに結びつけたこれらの意欲作の大ヒットにより、ジョーダン・ピール監督はハリウッドのイノベーターとして、今もっとも注目される存在となった。そんな彼の3年ぶりとなる待望の新作『NOPE/ノープ』が、いよいよベールを脱ぐ。

主人公OJを演じるのは、アカデミー主演男優賞にノミネートされた『ゲット・アウト』に続いてピールとタッグを組むダニエル・カルーヤ。また、シンガーとしても活躍するキキ・パーマーが妹エメラルド役を、さらに『ミナリ』でアカデミー主演男優賞にノミネートされたスティーヴン・ユァンがトラウマ的な過去を持つテーマパーク経営者に扮している。

また、クリストファー・ノーラン作品でお馴染みの名カメラマン、ホイテ・ヴァン・ホイテマが撮る奥行きのある雄大な映像も大きな見どころとなっている。