【2022/4/30(土)~5/6(金)】『おもひでぽろぽろ』『平成狸合戦ぽんぽこ』『ホーホケキョ となりの山田くん』

ついにやってきたGW! 早稲田松竹の番組は日本アニメ界の巨匠・高畑勲監督特集です。中でも、今回上映する3作品は、90年代にスタジオジブリで製作された作品群。いずれも、日本人の生活や日常に寄り添い、心の奥底にあるあたたかさや記憶の断片のようなものが蘇る監督の大きな特徴が見出せます。

『おもひでぽろぽろ』では、小学五年生のタエ子の学校で起きた数々のエピソードを、大人になったタエ子が回想する形でストーリーが進みます。小学生編のシンプルな線と色面で構成された画づくりに対し、大人編のパートでは写実的でリアルな人物が描かれます。また、「プレスコ」と呼ばれる音声を収録してから映像をつける方法を採用し、より自然でリアルな演技が落とし込まれた、これまでの子供向けのアニメ映画作品とは一線を博した作品となっています。

『平成狸合戦ぽんぽこ』は、東京郊外を舞台に先祖伝来の“化け学”を駆使して、宅地開発に取り組む人間に対抗する狸たちの姿を描いた長編アニメ。日本人なら誰もが昔話や道端で遭遇したことがあるだろう狸。そして、狸と人間が共存していた美しい日本の田舎の風景は、誰もが懐かしさを感じてしまうでしょう。狸と人間が共存できる未来はあるのだろうか?一見子供向けに見えるかわいらしい狸たちの物語ですが、その化けの皮の下には、可笑しくほろ苦い結末が待っているのです。

『ホーホケキョ となりの山田君』は、いしいひさいち原作による4コマ漫画をベースに、平凡な日本の家族像を様々なエピソードを織り交ぜてユーモラスに描いた作品。一見単純に見えるゆるっとした2頭身の絵を、当時最新技術であったフルCGで作画しているから驚きです。(しかも、動画枚数はあの「もののけ姫」を上回るという衝撃の事実。)そこまでして表現したかった水彩画タッチは、監督こだわりの末に行き着いた汗と涙の結晶。手足の短い、シンプルなキャラクターの生き生きとした動きのリアリズムを是非大きなスクリーンで体感してほしいです。

高畑監督の作品には、トトロのような子供たちに大人気のキャラクターも、ナウシカのような美しいヒロインも、SFもファンタジーもほとんど出てきません。だからこそ、人間に化けることがヘタクソな狸、小さい頃に憧れだったパイナップル、居間でのチャンネル争い…どれもがまるで自分のことのように、愛しく思えるのです。別世界への冒険ではなく、日々の些細な瞬間を切り取ってきた高畑監督。今回スクリーンに映し出される世界は、そんな私たちの他愛のない毎日の素晴らしさを思い出させてくれるでしょう。

おもひでぽろぽろ
Only Yesterday

高畑勲監督作品/1991年/日本/118分/DCP/ビスタ

■脚本・監督  高畑勲 
■原作 岡本螢/ 刀根夕子「おもひでぽろぽろ」(徳間書店/青林堂刊)
■製作プロデューサー 宮崎駿
■プロデューサー 鈴木敏夫
■キャラクターデザイン 近藤喜文
■作画 近藤喜文/近藤勝也/佐藤好春
■撮影 白石久男
■美術 男鹿和雄
■編集 瀬山武司
■音楽 星勝
■主題歌「愛は花、君はその種子」 都はるみ
■制作 スタジオジブリ

■声の出演 今井美樹/柳葉敏郎/本名陽子/寺田路恵/伊藤正博/北川智絵/山下容里枝/三野輪有紀/飯塚雅弓/押谷芽衣/小峰めぐみ/滝沢幸代 /石川匡/増田裕生/佐藤広純/後藤弘司/石川幸子/渡辺昌子/伊藤シン/仙道孝子

■1991年日本アカデミー賞話題賞ノミネート

© 1991 岡本螢・刀根夕子・Studio Ghibli・NH

【2022年4月30日から5月6日まで上映】

私はワタシと旅にでる。

1982年、夏。10日間の休暇を取った27歳の会社員タエ子は、姉の夫の親戚が暮らす山形へ旅に出る。東京で生まれ育った彼女には、小学5年生の時、田舎がなくて寂しい思いをした記憶があった。旅の途中、彼女は当時の懐かしい思い出を次々と蘇らせていく。小学5年生の自分を連れたまま山形に到着した彼女は、親戚の家の息子トシオや農家の人々と触れ合う中で、本当の自分を見いだしていく。

だれにもある思い出と素敵な愛の訪れがあたたかく描かれる、宮崎駿・高畑勲が贈る感動作!

『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』『火垂るの墓』『魔女の宅急便』など、日本映画史上に残る数々のアニメーションを手がけてきた宮崎駿・高畑勲コンビの不朽の名作。原作は週刊誌に連載された同名の漫画。昭和41年の東京郊外で暮らす小学五年生のタエ子の学校で起きた数々のエピソードを、映画では大人になったタエ子が回想する形でストーリーが進む。

タエ子役には今井美樹、タエ子が旅先で出会う青年には柳葉敏郎が、それぞれアニメ声優として初出演。録った声にあわせて絵を描くプレスコ方式を採用し、ふたりの持ち味を十分に活かした新鮮な映像となっている。懐かしいこどもの頃の思い出や、人々とのふれあいの中で優しさや愛を見つけていくタエ子の姿は、深い感動と共感を呼ぶ。

(公開当時のチラシより一部抜粋)

平成狸合戦ぽんぽこ
Pom Poko

高畑勲監督作品/1994年/日本/119分/DCP/ビスタ

■原作・脚本・監督 高畑勲
■企画 宮崎駿
■プロデューサー 鈴木敏夫
■画面構成 百瀬義行
■キャラクターデザイン 大塚伸治
■作画 大塚伸治/賀川愛
■撮影 奥井敦
■美術 男鹿和雄
■編集 瀬山武司
■音楽 紅龍/渡野辺マント/猪野陽子/後藤まさる(上々颱風)/古澤良治郎
■主題歌「いつでも誰かが」 上々颱風
■制作 スタジオジブリ

■声の出演 古今亭志ん朝/野々村真/石田ゆり子/三木のり平/清川虹子/泉谷しげる/芦屋雁之助/村田雄浩/林家こぶ平/福澤朗/桂米朝/桂文枝/柳家小さん

■1995年アヌシー国際アニメーションフェスティバル長編部門グランプリ/1994年日本アカデミー賞 特別賞

© 1994 畑事務所・Studio Ghibli・NH

【2022年4月30日から5月6日まで上映】

タヌキだってがんばってるんだよォ。

まだ緑の多い東京は多摩丘陵。のんびりひそやかに暮らしていたタヌキたちだが、ある時、エサ場をめぐる縄張り争いが起こる。ところが、エサ場の減少は、人間による宅地造成が原因だと判明。このままでは、住む土地さえなくなってしまう。これぞ、多摩のタヌキ史始まって以来の一大事! その日からタヌキたちは開発を阻止するため、先祖伝来の”化け学”の特訓を開始。四国や佐渡に住む伝説の長老たちに助けを求める使者も送り、残ったタヌキたちはせっせと人間を化かすが、なかなか効果が得られず……。

アヌシー国際アニメーション映画祭で長編部門グランプリを受賞した、監督・高畑勲×企画・宮崎駿コンビの名作!

高畑勲監督が宮崎駿と『おもひでぽろぽろ』以来3年ぶりにコンビを組み、先祖伝来の″化け学″を駆使して、宅地開発に取り組む人間に対抗する狸たちの姿を描いた長編アニメ。1995年アヌシー国際アニメーションフェスティバル長編部門グランプリ受賞作。

多摩、千里、筑波などのニュータウンや各地のゴルフ場など、大規模に山林を開発し、短期間に地形まですっかり変えてしまった地域で、生き物たちは生活圏を失い、その多くが滅びたことは言うまでもないが、その周辺地域でも、この受難のあおりを受けて、人間の気づかない所で生き物たちの激しい生存競争がくりひろげられたのではないだろうか。
(中略)
この激動と戦乱の時代をタヌキたちはどう生き、どう死んでいったのか、過酷な運命に抗し、彼らの特技たる「化け学」はどう活用されたのか、それは感覚の鈍い現代の人間たちに少しは通じたのか、そしてこんな時代にあっても、恋の花はやはり咲いたのか、無事子孫は残せたのか、そのあたりの事情を『平成狸合戦ぽんぽこ』によって探ってみたい。――高畑勲 (公開当時のチラシ「当世タヌキの事情」より抜粋)

ホーホケキョ となりの山田くん
My Neighbors the Yamadas

高畑勲監督作品/1999年/日本/104分/DCP/ビスタ

■脚本・監督 高畑勲
■原作 いしいひさいち「となりの山田くん」(徳間書店・朝日新聞社・チャンネルゼロ刊)
■プロデューサー 鈴木敏夫
■演出 田辺修/百瀬義行
■作画 小西賢一
■撮影 奥井敦
■美術 田中直哉/武重洋二
■音楽・主題歌「ひとりぼっちはやめた」 矢野顕子
■制作 スタジオジブリ

■声の出演 朝丘雪路/益岡徹/荒木雅子/五十畑迅人/宇野なおみ/矢野顕子/柳家小三治/中村玉緒/ミヤコ蝶々/富田靖子/古田新太/斉藤 暁

■1999年文化庁メディア芸術祭アニメーション部門 優秀賞

© 1999 いしいひさいち・畑事務所・Studio Ghibli・NHD

【2022年4月30日から5月6日まで上映】

家内安全は、世界の願い。

山田さん一家は平々凡々な生活を送っている5人と犬1匹の家族だ。時には、買い物に夢中になるあまりスーパーに娘ののの子を家族全員が忘れて来てしまったり、一家を支える主人であるたかしが妻のまつ子とチャンネル争いをすることも、ねこ飯のことで息子ののぼると意見が食い違うこともあるけれど、なんだかうまくやってる。そんな彼らのモットーは、「家族揃って手を携えて生きていけば、"ケ・セラ・セラ"人生、なるようになる」である。

忘れものを届けに来ました。このヘンな家族は、まだ日本にいるのです。たぶん。

既成の映画の枠組みを超えた映画作りに取り組んできた高畑勲監督の意欲作。いしいひさいち原作による4コマ漫画をベースに、平凡な日本の家族像を様々なエピソードを織り交ぜてユーモラスに描く。4コマ漫画のテンポ、リズムを生かし、エピソードの積み重ねにより映画全体が構成されている。画面全体を水彩画風に、そしてセルを一切使わずフルデジタル処理に踏み切り、試行錯誤した結果、まるでひとりの人間がすべての絵を描いたように「動く水彩画」ともいうべき画面作りに成功した。

「山田家のひとたちが身近にいてくれるのを感じると、なぜかラクになります。元気が出ます。頬がゆるみ、息がつけて、今日一日もなんとかやって行けそうな気がします。」
――高畑監督の企画書より

(当時のチラシより一部抜粋)