【2022/1/29(土)~2/4(金)】『キネマの神様』『海辺の映画館―キネマの玉手箱』 // 特別レイトショー『ニュー・シネマ・パラダイス』

早稲田松竹スタッフ

今週の上映作品のテーマは「バック・トゥ・ザ・シアター ~映画館にまつわる物語~」。そこで突然ですが、当館スタッフ数名に映画館の原体験や思い出を聞いてみました。


~スタッフMさんの思い出~
私が子供の頃、お正月といえば映画鑑賞やサーカス観覧でした。映画館は自由席で二本立て、三本立ては当たり前の時代。その頃観た映画で1966年製作の日ソ合作映画『小さい逃亡者』が記憶に残っています。全体的なストーリーは定かではありませんが、10歳の少年が父を捜しに一人でソ連まで行き、言葉の通じない国で「パパ、モスクワ」と行き先を告げるシーンと、線路伝いに歩くシーンがとても印象的で今でも鮮明に覚えています。

~スタッフKさんの思い出~
私がはじめて映画館で観た作品は、恐らく『千と千尋の神隠し』です。とても大きな劇場が満席で、一番前の席で見上げながら映画を観た覚えがあります。当時とても無口な子供だったらしいのですが、その帰り道はあまりの興奮でめちゃくちゃ饒舌だったという話を母から聞きました。今の自分とあまり変わっていないなあと思います。

~スタッフSさんの思い出~
小学二年生の時に初めて映画館に家族と行き、一大ブームを巻き起こしていた『タイタニック』を観た。当時はまだ読めない漢字も多いから、私は字幕を必死で理解しようとしていたし、ジャックがローズをデッサンするシーンでは、今までリカちゃん人形か銭湯でしか見たことのない女性のヌードを大きなスクリーンで初めて見て、どぎまぎしたような気がする。よく覚えているのが、タイタニックが沈んでしまい、船内にどんどん海水が押し寄せて行くシーン。とにかくみんな苦しそうだったので、その時絶対に私は溺死しない、したくないと心に誓った。

~スタッフHさんの思い出~
進路の決まった中学生3年の春休み。仲の良かった野球部4人で水戸芸術館で『秋刀魚の味』を見ました。映画が芸術でもある事を知りました。背伸びして初めての小津安二郎を見た後の、青く透き通った空と乾いた風は、今でも忘れられない思い出です。

~スタッフNさんの思い出~
小学校の同級生8人くらいで『リング』を観に行った。子供の頃から幽霊とか怖い話とかが大の苦手で本当は全然行きたくなかったけど、それを隠して友達に付き合った。でも映画が始まるとマジでちびりあがるほど怖くて、いよいよ盛り上がってきたところで耐えられずトイレに避難。しばらくロビーで時間を潰し、そろそろ怖いところ終わったかな~と劇場の扉を開けた瞬間、貞子がテレビからバーン!!!!・・・あれ以上のトラウマ映画は現在に至るまで無い。

~スタッフDさんの思い出~
映画館というと「大井武蔵野館」が真っ先に思い浮かぶ。私が最も通った映画館だと思う。最高の鑑賞状況が整った劇場ではなかったかもしれない。でもなぜか客席に着くと落ち着いた。そんな映画館。同じような気持ちにさせてくれた映画館はまだまだある。文芸坐2、三鷹オスカー、高田馬場パール座、銀座並木座・・・。かつて東京に存在した名画座たちに最敬礼であります。


皆さまにも、映画館の思い出はたくさんありますよね。いつ、どこで、誰と、どんな気分で観たかなど、映画の内容とセットになって記憶に刻まれているはず。願わくば、早稲田松竹も誰かのそんな映画体験の一部になっていますように。

今週は、映画と映画館への愛が詰め込まれた、珠玉の作品たちをお届けします。

海辺の映画館―キネマの玉手箱
Labyrinth of Cinema

大林宣彦監督作品/2019年/日本/179分/DCP/PG12/ビスタ

■監督 大林宣彦
■製作協力 大林恭子
■脚本 大林宣彦/内藤忠司/小中和哉
■脚本協力 渡辺謙作/ 小林竜雄
■撮影・合成 三本木久城
■アクション監督 森聖二
■編集 大林宣彦/三本木久城
■音楽 山下康介

■出演 厚木拓郎/細山田隆人/細田善彦/吉田玲/成海璃子/山崎紘菜/常盤貴子/小林稔侍/高橋幸宏/白石加代子/尾美としのり/武田鉄矢/南原清隆/片岡鶴太郎/柄本時生/村田雄浩/ 稲垣吾郎/蛭子能収/浅野忠信/伊藤歩/品川徹/入江若葉/渡辺裕之/手塚眞/犬童一心/根岸季衣/中江有里/笹野高史/本郷壮二郎/川上麻衣子/満島真之介/大森嘉之/ 渡辺えり/窪塚俊介/長塚圭史/寺島咲/犬塚弘

■2019年東京国際映画祭特別功労賞受賞/広島国際映画祭2019ヒロシマ映画賞受賞/2019年ロッテルダム国際映画祭Perspectives部門招待

© 2020「海辺映画館-キネマの玉手箱」製作委員会/PSC

【2022年1月29日から2月4日まで上映】

また見つかった。何がだ? 永遠。

尾道の海辺にある唯一の映画館「瀬戸内キネマ」が、閉館を迎えた。嵐の夜となった最終日のプログラムは、「日本の戦争映画大特集」のオールナイト上映。映画を観ていた若者3人は、突然劇場を襲った稲妻の閃光に包まれ、スクリーンの世界にタイムリープする。戊辰戦争、日中戦争、沖縄戦、そして、舞台は原爆投下前夜の広島へ――。そこで出会ったのは移動劇団「桜隊」だった。3人の青年は、「桜隊」を救うため運命を変えようと奔走するのだが……!?

映画は未来を変えられる──!! 大林宣彦監督が新しい世代へ託すメッセージ。

大林宣彦監督が、20年振りに「尾道」へ還ってきた。尾道にある海辺の映画館を舞台にした最新作は、まさに“キネマの玉手箱”! 物語は、戦争の歴史を辿りながら、無声映画、トーキー、アクション、ミュージカルと様々な映画表現で展開していく――。惜しくも、大林宣彦監督は肺がんのため2020年4月、本作の公開を前にこの世を去り、これが最新作にして遺作となってしまった。

メインキャストとして、銀幕の世界へタイムリープする3人の若い男を、厚木拓郎、細山田隆人、細田善彦が演じ、3人の男たちそれぞれの運命のヒロインを本作が映画初出演となる吉田玲、大林組初参加の成海璃子、前作に続く出演となる山崎紘菜が演じている。また、本作の物語の軸となる移動劇団「桜隊」の看板女優を、近年の大林作品を支える常盤貴子が演じる。

さらに、大林組常連から初出演のキャストまで、大林監督の“映画への情熱”と“平和への想い”を受け止め、様々な分野からキャストとして参加した豪華出演者の奇跡のコラボレーションにも注目。生のエネルギーにあふれた、誰も体験したことがないエンタテインメントが、幕を開ける!

キネマの神様
It's A Flickering Life

山田洋次監督作品/2021年/日本/125分/DCP/ビスタ

■監督 山田洋次
■原作  原田マハ『キネマの神様』(文春文庫刊)
■脚本 山田洋次/朝原雄三
■撮影 近森眞史
■編集 石島一秀
■音楽 岩代太郎
■主題歌 RADWIMPS 『うたかた歌』(feat.菅田将暉)
  
■出演 沢田研二/菅田将暉/永野芽郁/宮本信子/野田洋次郎/北川景子/寺島しのぶ/小林稔侍/リリー・フランキー/前田旺志郎/志尊淳/松尾貴史/広岡由里子/北山雅康/原田泰造/片桐はいり

© 2021「キネマの神様」製作委員会

【2022年1月29日から2月4日まで上映】

あの人を愛したから、その神様に出会えました。

無類のギャンブル好きなゴウは、妻と娘にも見放されたダメ親父。そんな彼にも、たったーつだけ愛してやまないものがあった。それは「映画」――。

若き日のゴウは助監督として、映写技師のテラシンをはじめ、時代を代表する名監督やスター女優の園子、また撮影所近くの食堂の看板娘・淑子に囲まれながら夢を追い求め、青春を駆け抜けていた。しかし、ゴウは初監督作品『キネマの神様』の撮影初日に転落事故で大怪我をし、その作品は幻となってしまう。

半世紀後の2020年。あの日の『キネマの神様』の脚本が出てきたことで、ゴウは忘れかけていた夢や青春を取り戻してゆく――。

原田マハの小説「キネマの神様」を山田洋次監督が映画化した、松竹映画 100 周年記念作品。

松竹キネマ合名社の設立、そして数々の名作を創り出した蒲田撮影所の開所を迎えた1920年から、日本映画史を飾る傑作、ヒット作の製作、配給、興行を続け、2020年に100周年を迎えた松竹映画。本作『キネマの神様』は、数々の名画を生み出してきた松竹映画100年の歴史を見つめ、これから100年の映画界へのバトンになってほしいという希望が込められた、松竹100周年記念作品である。原作はこれまで数々の文学賞を受賞してきた人気小説家・原田マハによる「キネマの神様」。彼女が自身の家族、経験をもとに書きあげた思い入れ深い小説を、日本映画界を代表する山田洋次監督がオリジナルの映画作品へと昇華させた。

2020年3月にクランクインし、ちょうど半分を撮り終えた3月末にダブル主演の1人である志村けんが逝去。その後、撮影の長期中断が余儀なくされるなど、度重なる困難に見舞われたが、脚本を再考し新たなキャストを迎えて映画は完成。ダブル主演を務めるのは志村けんの遺志を継ぐ沢田研二と、誰もがその人気と実力を認める俳優・菅田将暉。更に日本を代表する名女優・宮本信子と若手人気女優・永野芽郁など記念すべき作品にふさわしい豪華なスタッフ/キャストが集結した。

【特別レイトショー】ニュー・シネマ・パラダイス
【Late Show】Cinema Paradiso

ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品/1989年/イタリア・フランス/124分/DCP/PG12/ビスタ

■監督・脚本 ジュゼッペ・トルナトーレ
■製作 フランコ・クリスタルディ
■撮影 ブラスコ・ジュラート
■音楽 エンニオ・モリコーネ/アンドレア・モリコーネ(愛のテーマ)

■出演 フィリップ・ノワレ/ジャック・ペラン/サルヴァトーレ・カシオ/マルコ・レオナルディ/アニェーゼ・ナーノ/プペラ・マッジオ

■カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞/アカデミー賞最優秀外国映画賞受賞/英アカデミー賞最優秀主演男優賞・最優秀助演男優賞・最優秀外国語映画賞・最優秀作曲賞・最優秀脚本賞受賞受賞/ゴールデングローブ賞最優秀外国語映画賞受賞/ヨーロッパ映画賞最優秀男優賞・審査員賞受賞 ほか多数

© 1989 CristaldiFilm

【2022年1月29日から2月4日まで上映】

映画から夢が広がった 大切なぼくの宝箱

1980年代のローマ。成功した中年の映画監督サルヴァトーレは、故郷のシチリアにいる母親から、アルフレードが死んだという伝言を受ける。アルフレードという懐かしい名前を聞いただけで、サルヴァトーレの脳裏にはシチリアのジャンカルド村での少年時代の記憶が、まざまざとよみがえった…白くて埃っぽい広場、教会、少年のサルヴァトーレを魅了した映画館パラダイス座。そしてパラダイス座の映写技師、アルフレード――。

戦後間もないジャンカルド村の唯一の娯楽はパラダイス座だった。トトと呼ばれていた少年サルヴァトーレも、母親の目を盗んで映画館に通いつめていた 。彼の心を魅了したのは、フィルムの宝庫である映写室と、それを操る映写技師のアルフレード。頑固者のアルフレードは映写室の聖域からトトを追い出そうとするが、やがてふたりの間には不思議な友情が芽生えていく…。

フィルムは回り、トト少年の夢は広がる。映画ファンが愛してやまない永遠の傑作をふたたび!

1989年のカンヌ国際映画祭審査員特別賞に輝き、イタリア映画としては15年ぶりにアカデミー賞最優秀外国語映画賞を受賞した『ニュー・シネマ・パラダイス』。日本でも単館で公開されるや、40週という異例のロングランを記録し、空前の大ヒットとなった。

人々はパラダイス座に集まっては、笑い、泣き、冒険に胸を躍らせ、恋に身を焦がす。一癖もふた癖もある映画館の常連たち、トトの成長と旅立ち、そしてアルフレードとの親子にも似た関係。監督ジュゼッペ・トルナトーレは当時33歳とは思えない見事な手腕で、映画館をとりまく人生模様と映画への愛をユーモラスかつノスタルジックに描いてみせた。そして、それを支えたのが巨匠エンニオ・モリコーネの素晴らしい音楽。有名な旋律にのせて訪れる怒涛のラストシーンは、映画ファンなら決して忘れられない感動の一瞬になるだろう。

「映画の神秘、その魅力、人を笑わせ、泣かせ、夢見させる、その力。トルナトーレは、この美しい映画の中で、これらすべての感情を与えてくれる。」――――フランチェスコ・ロージ(『予告された殺人の記録』監督)

「これは映画館を愛する人々のために、映画館に身を捧げた男の映画である。ブラボー、トルナトーレ!」――――パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ(『グッド・モーニング・バビロン!』監督)