2026.05.28

スタッフコラム「わが職場の日常」 byKANI-ZO

「過去と未来がつながる映写」

私が早稲田松竹に勤めはじめた15年前。映写室には2台の35mmフィルム映写機と編集台のみがあり、毎日二本立てを上映していました。上映中の暗い映写室で、私たち映写スタッフは翌週のフィルムをチェックし編集するのが日常でした。寒い日はフィルムに添える指の感覚がなくなり、暑い日は映写機のランプから発せられる熱に耐えながら作業していたのも懐かしい思い出です。そうやって沢山のフィルムに触れながら、画面サイズや音声フォーマットなどの映写の基礎知識が身に付いていきました。

そんな作業も慣れてきた2年目に、クリスティ社製のデジタルシネマプロジェクター(DLP)・ソラリアワン+が早稲田松竹にやってきました。右も左もわからなかったプロジェクターの扱い方。35mm映写機では物理的にフィルムを動かすので、目や耳から得られる情報で判断できることが多くあります。けれどデジタルプロジェクターは素材もデータで機材内部も基盤が多く物理的に判断するのが難しい部分がありました。映写スタッフでマニュアルを読み込んだり、わからないことは調べたりと悪戦苦闘の日々でした。ちょうど、35mm映写機のパーツ供給が終了していく話が出始めていた頃でした。

そんな変化していく映写環境の中で、私は学校や市町村のホール、大型ホールでの試写会での移動映写の仕事に誘われました。上映環境のない場所に映写機やスクリーン、スピーカーなどを設営して上映を行う仕事です。普段見ることのない大型ホールの裏側で、100キロほどのプロジェクターや35mm映写機、幅20メーターのスクリーンを先輩たちと設営するのが私は楽しくて仕方ありません。上映が終了すればすぐに撤去してしまう儚さもまた好きでした。毎回異なる場所での仕事は、映画館の中だけでは分からなかった知識や体験がありました。

そのなかで出会った人の協力を得ながら、早稲田松竹の35mm映写機も今では自分たちで一通りのメンテナンスができるようになりました。さらに、はじめはおっかなびっくりだった早稲田松竹のプロジェクターも、基盤の入れ替えやパーツの交換の度に新しい発見をしながら安心して扱えるようになりました。すべてを一人で把握するのは大変ですが、たくさんの人がそれぞれの知識を集めて問題に立ち向かうのも、映写の面白い部分です。

様々な場所で映写していると、機械が大好きな私にとってはご褒美のような仕事―映写機のメンテナンスが舞い込みます。分解しクリーニングしながら触っていると仕組みを理解できることや、不調のあった映写機が元気な音で動き出す姿を見ることが楽しいのです。その映写機が劇場の人たちや映画を見るお客さんを笑顔にしている手ごたえを得られる瞬間でもあります。

沢山の映画を上映し、学びをくれた早稲田松竹のソラリアワン+も13歳になり、まもなく現役引退です。導入から引退まで見届ける映写機は私にとって初めてなので感慨深いです。新しいプロジェクターは光源がランプからレーザーへ、解像度は2Kから4Kへアップグレードし6/20よりデビュー予定です。私たちもどんな映像が早稲田松竹のスクリーンに生まれるのか楽しみにしています。ソラリアワン+がやってきた時のように、期待と不安の入り混じる気持ちが沸き上がります。だから映写はやめられませんね。

(KANI-ZO)