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人と人との生活は不思議なバランスで成り立っています。通勤のときだけ顔を合わせる見知らぬ人や挨拶だけを交わす隣人が、いつもの時間・いつもの場所にいたときにはなぜだか安心したり、反対にいなかったときには妙に気になってしまったりします。知り合って間もない人が自分の生活環境を大きく変えることもあれば、疎遠になってしまった人と急に接点を取り戻したりすることもあります。淡々と過ぎていく自分の人生に入れ替わり立ち替わり現れては消えていく人々。永続的な関係性ではないからといって、シニカルになる必要はないのかもしれません。あの時、あの場所の思い出を彩る慎ましいつながりがそこにはあるのではないでしょうか。

『イン・ザ・スープ』では映画制作を目指しながら生活に追われている青年アルドルフォと、彼の前に急に現れるいかがわしい男・ジョーと隣人のアンジェリカ。『スモーク』ではタバコ屋の店主オーギー、その客であり小説家のポール、そしてなんともつかみどころのないように見える青年ラシード。それぞれが自分の日常を過ごしながら、関わり合い、物語は進んでいきます。どちらの作品もさまざまな人々が行き交う街・ニューヨークを舞台に、お互いのつながりに一喜一憂しながら、少しづつ関係性が浮き彫りになります。それぞれ問題を抱えながらも、コミカルで温かい登場人物たちのほのぼのとした日常が、切なさと期待が入り混じった余韻を私たちに残してくれるはずです。

驚くことにどちらの映画も季節はクリスマスシーズンなのです。浮き足立っているはずの街や人をよそに、ささいな日常を懸命に生きる登場人物たちの物語に、何か大切な価値観を見出すことができるのかもしれません。そして、もしかしたら私たちの毎日も、そんな魅力にあふれた彼らの日常とどこかで繋がっているのかもしれない、なんて考えると、なんだかウキウキしてしまいます。

(ジャック)

イン・ザ・スープ
IN THE SOUP
(1992年 日本/アメリカ 93分 35o ビスタ/MONO) pic 2017年6月17日から6月23日まで上映 ■監督・脚本 アレクサンダー・ロックウェル
■エグゼクティブ・プロデューサー すずきじゅんいち/船原長生
■脚本 ティム・キッセル
■撮影 フィル・パーメット
■編集 ダナ・コンドン
■音楽 メーダー

■出演 スティーヴ・ブシェミ/シーモア・カッセル/ジェニファー・ビールス/ジム・ジャームッシュ

■1992年サンダンス・フィルム・フェスティバルグランプリ・審査員特別賞受賞/ヴェネチア国際映画祭正式出品

人生はイン・ザ・スープ(どつぼにはまる)なことだらけ…
でも、心はきっとあたたまる。

pic 舞台はクリスマスのニューヨーク。映画作りに魅せられたシャイな青年アルドルフォは、隣に住む美女アンジェリカをヒロインにいつか映画を撮ることを夢見ている。しかし、現実はわずかな金で食いつなぐ毎日。そこへ映画製作の資金援助をするというワルでお調子者な男ジョーが現れた! アルドルフォは資金調達のために怪しげな仕事の片棒を担がされ、“どつぼ=イン・ザ・スープ”にハマってしまう――。

珠玉のアメリカン・インディーズ・フィルムの感動作!!
監督自身の実話を基に、
映画に愛をこめたハート・ウォーミングな物語!

pic監督はジョン・カサヴェテス監督に献辞を捧げた秀作『父の恋人』、クエンティン・タランティーノ監督らと組んだオムニバス映画『フォー・ルームス』を手がけたアレクサンダー・ロックウェル。スタイリッシュなモノクロームの映像の美しさや、映画への愛に満ちた独特のキャスティングの妙味で観客を魅了し、アメリカの若い監督の才能を発掘するサンダンス・フィルム・フェスティバル(1992年)で見事グランプリに輝いた。

pic 主演に『ファーゴ』『ゴースト・ワールド』のスティーヴ・ブシェミ。また、カサヴェテス作品には欠かせない名優シーモア・カッセル、『フラッシュ・ダンス』で大ブレイクしたジェニファー・ビールス、そして、『ナイト・オン・ザ・プラネット』『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』のジム・ジャームッシュ監督が若き姿で友情出演している。

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スモーク デジタルリマスター版
Smoke
(1995年 アメリカ/日本 113分 DCP PG12 ビスタ)
pic 2017年6月17日から6月23日まで上映 ■監督 ウェイン・ワン
■原作・脚本 ポール・オースター
■撮影 アダム・ホレンダー
■編集 メイジー・ホイ
■音楽 レイチェル・ポートマン

■出演  ハーヴェイ・カイテル/ウィリアム・ハート/ストッカード・チャニング/ハロルド・ペリノー/フォレスト・ウィテカー/アシュレイ・ジャッド

■1995年ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員特別賞)・国際評論家協会賞・観客賞受賞

©1995 Miramax/N.D.F./Euro Space

本当に大切なものは煙のようなもの。
心が渇いたときに何度でも味わいたくなる。

pic1990年ブルックリン――。14年間毎日同じ時間に同じ場所で写真を撮り続けるタバコ屋の店主、オーギー。 最愛の妻を事故で亡くして以来書けなくなった作家、ポール。 18年前にオーギーを裏切り昔の男と結婚した恋人、ルビー。 強盗が落とした大金を拾ったために命を狙われる黒人少年、ラシード。それぞれの人生が、織りなす糸のように絡み合い、感動のクライマックスへと向かっていく…。

たった1館で9万人も動員し、
その後、日本中で大ヒットした不朽の名作が
デジタルリマスター版で甦る――。

pic 現代アメリカを代表する作家ポール・オースターが1990年ニューヨークタイムスに発表した短編小説「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」をもとに、作者自ら脚本を書き下ろし、『女が眠る時』『 ジョイラッククラブ』のウェイン・ワン監督が映画化した言葉にならない感動作。都会で暮らす男女それぞれの嘘と本当、過去と現在が交差する中で生まれた不思議な絆。目には見えないが必ず存在するタバコの煙のように曖昧でつかみどころのない真実を問いつめる。

主演は『ピアノ・レッスン』『レザボア・ドックス』などで幅広い演技を披露するハーヴェイ・カイテルと『蜘蛛女のキス』でアカデミー賞主演男優賞受賞したウィリアム・ハート。 その他『大統領の執事の涙』のフォレスト・ウィテカー、実力派女優ストッカード・チャニングらが脇を固める。また、クライマックスで流れるトム・ウェイツの名曲「Innocent when you dream」も忘れ難い余韻を残している。

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