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トマス・ピンチョンの小説が遂に初映画化! しかも監督は名実ともにアメリカ最高の映画作家ポール・トーマス・アンダーソン!
というニュースを聞いて、大いなる期待とともにそれ以上の不安を抱いた映画ファンはたくさんいるだろう。 かくいう私もそのひとり。何しろピンチョンの小説は複雑怪奇で人を喰ったポストモダン文学の代名詞的存在。 ほんとに映像化なんて可能なの? と。

だが、映画『インヒアレント・ヴァイス』は、そんな杞憂を吹き飛ばすかのような快作だった。 舞台はヒッピー文化の終焉期の70年代ロサンゼルス。陽気でありながら、どこかメランコリックな倦怠感も支配するこの街で、 ホアキン・フェニックス演じる探偵ドックが迷い込む異様に入れ込みまくった事件の顛末。 現れては消えていく個性派俳優たちのアホな怪演の数々や、サム・クックやカン、坂本九といった 絶妙な選曲センス(特にタイトルの出る瞬間は悶絶もの!)は観る者を気持ちよく煙に巻いていく。

P・T・アンダーソンが今回の映画に取りかかるに際して最も参考にしたのは、 なんと少年期に夢中で観ていた『フライング・コップ 知能指数0分署』 (おバカコメディ『裸の銃を持つ男』の前身となったTVムービーシリーズ)だとか。

「『フライング・コップ』を子どもの頃に観て感じたこと、 「なにをやってもいいんだ」「すべては可能なんだ」と思ったことを自分の中で甦らせるのは大事だと思ったんだ。 それから、ひとつのフレームの中で、クレイジーなことがいくつも同時におこっていてもいいんだ、と思い出すこと。 それは、勇気を与えてくれるクスリを飲むような感じだった。 それを、ピンチョンが書いた物語を映画化する手法として使えると思ったし、すごく役に立った。」 (雑誌「ユリイカ」2015年・5月号所収インタビューより)

P・T・アンダーソンは、誰もが映像化に二の足を踏んでいた文学史上の怪物の作品を、 決して気張らず、映画に最初に夢中になった頃の純粋な感覚に立ち返ることで見事に自分のものにしたのだ。

ピンチョンとP・T・アンダーソンの出会いから生み出されたのが『インヒアレント・ヴァイス』なら、 タランティーノとトニー・スコットの邂逅から生み出されたのが『トゥルー・ロマンス』。 本作のシナリオは、まだ監督デビュー前のタランティーノが執筆したものだ。

千葉真一主演のカンフー映画3本立てを上映する、場末の映画館から始まる運命の恋! という物語の発端からしてタランティーノの妄想が爆発しているが、警察とマフィアを敵に回しながら一途な愛を貫き通して疾走する主人公カップルのクラレンスとアラバマには、 まだ単なる映画好きのビデオ屋店員に過ぎなかった当時のタランティーノの、「こうありたい!」という切実な願望が託されている。

さらに本作の魅力を高めているのが、実力派キャスト陣に支えられたキャラクターの魅力だ。 特にパトリシア・アークエットの体を張った熱演は、一歩間違えれば荒唐無稽になりかねない役柄に血の通った人間らしさを与えている。 本作白眉とも言える、デニス・ホッパーとクリストファー・ウォーケンの対決シーンを始め、 激しいバイオレンスシーンの中にもタランティーノらしい含蓄ある台詞の応酬が絶妙なスパイスとして効いている。 しょうもない役を嬉々として演じるブラット・ピットを始め、 カメオ出演している豪華スターたちを見つけるのも楽しい(サミュエル・L・ジャクソンがどこに出てるかわかります?)。

監督のトニー・スコットは、ニューシネマへの憧憬が混じるタランティーノの初期衝動とも言えるシナリオを、 絶妙なさじ加減で一級のエンターテインメントへと昇華した。 監督がタランティーノの反対を押し切り、破滅的だったシナリオから改変したというラストシーンに溢れるあたたかい光が美しい。

『インヒアレントヴァイス』『トゥルー・ロマンス』、どちらも主な舞台となるのはカルフォルニア州ロサンゼルス。 怪しい人間たちが跋扈する、アブナイけど目が離せない都市を巡るふたつの物語をご堪能あれ。

(ルー)

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トゥルー・ロマンス ディレクターズカット版
TRUE ROMANCE
(1993年 アメリカ 121分 ブルーレイ シネスコ) pic 2015年7月4日から7月10日まで上映 ■監督 トニー・スコット
■脚本 クエンティン・タランティーノ
■撮影 ジェフリー・L・キンボール
■音楽 ハンス・ジマー

■出演 クリスチャン・スレイター/パトリシア・アークエット/デニス・ホッパー/ヴァル・キルマー/ゲイリー・オールドマン/ブラッド・ピット/クリストファー・ウォーケン/サミュエル・L・ジャクソン/マイケル・ラパポート/ブロンソン・ピンチョット/ソウル・ルビネック/クリス・ペン/トム・サイズモア

どう猛な愛だけが 生き残る

picデトロイトのコミック・ブック店で働くクラレンスは、プレスリーとクンフー映画に夢中の若者。誕生日の夜、場末の映画館で千葉真一の映画を観ていた彼は、アラバマという女の子と知り合う。ベッドの中で彼女は、実はクラレンスの店のボスから、「誕生日のプレゼントに」と頼まれたコールガールであることを明かす。だが、2人は激しく愛し合い、翌日には結婚する。

クレランスは、アラバマの元ヒモであるドレクセイに話をつけに行ったが殺されかかり、逆に相手を殺してしまった。彼女の荷物と間違えて持ち帰ったスーツケースに入っていたのは、大量のコカイン。それを売ろうとロサンゼルスへ向かった2人は、組織の殺し屋に追われ、警察にも追われることに・・・。

監督トニー・スコット×脚本タランティーノ
90年代を代表する傑作が再びスクリーンに!

picストレートな表現と、目まぐるしく展開するストーリーに、息つく間もない極上のスピード感。1994年に日本公開された本作『トゥルー・ロマンス』は、前年に公開された『レザボア・ドッグス』で監督デビューを果たしたクエンティン・タランティーノによる脚本、そして『トップガン』『アンストッパブル 』の故トニー・スコット監督による、ラブストーリー+アクション+バイオレンスがないまぜになった、90年代を代表する傑作である。

pic主演は『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』、『ニンフォマニアック』のクリスチャン・スレイターと、『ロスト・ハイウェイ』、『6才のボクが、大人になるまで。』のパトリシア・アークエット。そのほか、デニス・ホッパー、クリストファー・ウォーケン、ゲイリー・オールドマン、ヴァル・キルマー、ブラッド・ピット、サミュエル・L・ジャクソンなど、主役級の個性派達が脇をかためる。

激しい恋に落ちた若い2人が織り成す愛と逃避行。色褪せぬ真実の愛は、時代を越えてさらに胸に突き刺さる!

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インヒアレント・ヴァイス
INHERENT VICE
(2014年 アメリカ 149分 DCP R15+ ビスタ) pic 2015年7月4日から7月10日まで上映 ■監督・製作・脚本 ポール・トーマス・アンダーソン
■原作 トマス・ピンチョン「LAヴァイス」(新潮社刊)
■製作 ジョアン・セラー/ダニエル・ルピ
■撮影 ロバート・エルスウィット
■編集 レスリー・ジョーンズ
■音楽 ジョニー・グリーンウッド

■出演 ホアキン・フェニックス/ジョシュ・ブローリン/オーウェン・ウィルソン/キャサリン・ウォーターストン/リース・ウィザースプーン/ベニチオ・デル・トロ/マーティン・ショート/ジェナ・マローン/ジョアンナ・ニューサム/エリック・ロバーツ/ホン・チャウ/マーヤ・ルドルフ/サーシャ・ピーターズ/マイケル・ケネス・ウィリアムズ/ジーニー・バーリン

■第87回アカデミー賞脚色賞・衣装デザイン賞ノミネート/LA批評家協会賞音楽賞受賞/インディペンデント・スピリット賞 ロバート・アルトマン賞受賞

ヒッピー探偵、元カノの愛人の大富豪を救えるか?

picロサンゼルスに住む、私立探偵のドックの前に、今も忘れられない元カノのシャスタが現れる。不動産王で大富豪の愛人になったシャスタはドックに、カレの妻とその恋人の悪だくみを暴いてほしいと依頼する。だが、捜査に踏み出したドックは殺人の濡れ衣を着せられ、大富豪もシャスタも失踪してしまう。ドックは巨額が動く土地開発に絡む、国際麻薬組織のきな臭い陰謀に引き寄せられていく。

愛だけは無事でありますように――
70年代ポップ・カルチャーに彩られた

pic 現代文学界の怪物と畏れられる謎の覆面天才作家、トマス・ピンチョンが、自身の小説の映画化を初めて許した! その相手は、わずか7本の長編映画で世界3大映画祭の監督賞を制覇、アカデミー賞にも5度ノミネートされた天才監督、ポール・トーマス・アンダーソン。そして、世界中に熱狂的な信者を持つこの若き巨匠が主演に選んだのは、ハリウッドきっての異端児にして天才俳優、ホアキン・フェニックスだ。

picチャールズ・マンソン率いるカルト集団による女優惨殺事件、ニクソン大統領の派兵、ベトナム戦争など、翳り始めていた時代に抵抗するように全盛期を迎えた、きらびやかなポップ・カルチャーと音楽が満載!  細部にまで魂が宿る世界観を創造するために、ポール・トーマス・アンダーソン監督と固い結束で結ばれたスタッフが集結、さらに監督が「何年も一緒に仕事をしたいと待ち望んでいた俳優たち」の総出演が実現した。 彼らが創り出した不条理だけど心地よく、孤独なのに愛に満ちた、魅惑の世界へようこそ――!

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