−夢と仕事の狭間から−
子供の頃、夢と仕事はひとつのものだった。
大人になるにつれて、
夢と仕事の間に、だんだんと生まれている何かにふと気がつく。
トップスターの後方“20フィート”で歌うバックコーラスたち。
そのわずか数歩の距離にあるのは、タイミングのめぐり合わせと音楽業界の現実。
激戦だった、1976年F1グランプリシーズン。
最速を求めて闘った二人の天才レーサーの最終ポイント差わずか“1”。
勝者と敗者の味わいの違いは、資金力、戦術、センス、そして努力の差だけだろうか。
この夢と仕事の間に生まれる何かは、人によって異なり、時によって変化する。
それは、自らが求めている事と現実の違いから湧き上がる感情だからだろう。
二人のF1レーサーとバックコーラスの歌姫たちの、
夢と仕事の間に潜む様々な現実と、それに対する感情とが交錯し衝突する。
それでも、ひたむきに生きる彼らの姿から、浮かび上がってくる裸の魂。
『バックコーラスの歌姫たち』の監督モーガン・ネヴィルは、
製作のギル・フリーセンとともに、
バックシンガーという未知の世界を2年以上かけ取材し、
彼女たちと深い信頼関係を築き、
誰も見たことがなかったバックシンガーの世界の映画を完成させた。
『ラッシュ/プライドと友情』の監督ロン・ハワードは、
実際にクラッシュが起きたドイツのニュルブルクリンク(スポーツカー開発の聖地)で
撮影を敢行しリアリティを追求した。また、当時のF1の細部だけではなく、
ワンシーンに30台ものカメラを使い、F1の極限世界を新たな映像で生み出した。
サーキットやステージが華やかに輝いて見えるのは、
沢山の人たちの魂が詰まっているからこそだと、
舞台の裏側をしっかりと映し出している作り手たち。
両者の熱い魂は、早稲田松竹のスクリーンから
轟音のエキゾースト音になりソウルフルな歌声となり響き、
私たちの心を振るわせ、熱き血潮がたぎる。
ラッシュ/プライドと友情
RUSH
(2013年 アメリカ/ドイツ/イギリス 123分 シネスコ)
2014年7月5日から7月11日まで上映
■監督・製作 ロン・ハワード
■製作 アンドリュー・イートン/エリック・フェルナー/ブライアン・オリヴァー/ブライアン・グレイザー
■脚本・製作 ピーター・モーガン
■撮影 アンソニー・ドット・マントル
■音楽 ハンス・ジマー
■出演 クリス・ヘムズワース/ダニエル・ブリュール/オリヴィア・ワイルド/アレクサンドラ・マリア・ララ/ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ/クリスチャン・マッケイ
■2013年英国アカデミー賞編集賞受賞
1976年、F1黄金時代。世界を熱狂させた二人のレーサーがいた。ドライビングテクも私生活も情熱型のジェームス・ハントと、レース運びも人生も頭脳派のニキ・ラウダだ。シーズンはラウダの圧倒的なリードで幕を開けた。ジリジリと迫るハントを制し、ラウダのチャンピオンが確実視されたその時、全てが変わる壮絶なクラッシュ事故が起きる。
世界的大ヒットを記録した『アポロ13』『ダ・ヴィンチ・コード』のロン・ハワード監督が、実話を基に描く壮大なヒューマンドラマ。共に天才と呼ばれた二人のレーサーの人生を懸けた宿命の対決と、大クラッシュが分けたそれぞれの運命。F1史に刻まれる、最もドラマティックなシリーズとなった1976年のグランプリを舞台に、相対する二人のライバル関係、勝負、栄光、事故、そしてその先の人生を描く。イギリス人レーサーのジェームス・ハント役には『アベンジャーズ』『マイティ・ソー』シリーズのクリス・ヘムズワース。オーストラリア人レーサー、ニキ・ラウダを『グッバイ、レーニン!』『イングロリアス・バスターズ』で知られるドイツ人俳優ダニエル・ブリュールが演じる。
25人がスタートにつき、年に2人が死亡するというF1史上最も危険でドラマティックだった時代に、彼らは何に駆り立てられ、何を求めてアクセルを踏み込んだのか。アドレナリン全開の衝撃と興奮の先に、観る者全ての心を鷲づかみにする感動が待っている。
バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち
TWENTY FEET FROM STARDOM
(2013年 アメリカ 90分 ビスタ)
2014年7月5日から7月11日まで上映
■監督 モーガン・ネヴィル
■製作 ギル・フリーセン/ケイトリン・ロジャース
■撮影 ニコラ・マーシュ/グラハム・ウィロビー
■編集 ダグ・ブラッシュ/ジェイソン・ゼルデス/ケヴィン・クロウバー
■第86回アカデミー賞ドキュメンタリー長編賞受賞/2013年インディペンデント・スピリット賞ドキュメンタリー賞受賞/2013年放送映画批評家協会賞ドキュメンタリー賞受賞
マイケル・ジャクソン、ミック・ジャガー、ブルース・スプリングスティーン、スティング、シェリル・クロウ、スティーヴィー・ワンダー…音楽界のトップスターを影で支えてきたバックシンガーたち。数々のヒットソングで記憶に残るハーモニーを聴かせてきた彼女たちだが、その名前が知られることはほとんどない。これまでスターの影に隠れていた彼女たちに初めてスポットライトを当て、時には傷つけられて涙を流しながらも、歌うことに喜びを見出し、音楽を愛し続けた名もなき歌姫たちの人生をドラマティックに描き出す。
作品を通して描かれるのは、成功に酔いしれるような感動や、心が引き裂かれる思い。与えられた役割をきちんとこなすことの大切さ。自分が愛することを仕事にして、それに誇りを持って生きることを称える。その先を目指す時、その場に甘んじずリスクを取れるか取れないか。成功、誇り、夢、犠牲、そして葛藤…。
現在のポップミュージックを形作ることに貢献した陰の立役者に対する賛辞であるとともに、彼女たちの並々ならぬ波乱の人生を、当時の貴重な映像や至福の時をもたらしてくれる大物ミュージシャンとの即興セッションなどと共に描く。口コミで評判が広がり全米で大ヒットを記録、今年のアカデミー賞では見事最優秀ドキュメンタリー長編賞を受賞した本作。世界の映画評No.1サイトのロッテン・トマトでは98%がフレッシュ(絶賛)という驚異的評価を得た珠玉のドキュメンタリーである。