予想のつかない展開。
これは映画にとって最も重要な要素のひとつではないでしょうか。
今週の紹介文、書くのがとっても難しいんです。
なぜなら今回の二本立てはまさに、“ネタばれ厳禁”映画だから。
う〜んでもやっぱり、少し書いても良いですか?
だって、両作品ともすっごくおもしろいんですよ! 思わず誰かに語りたくなってしまうんです…。
『トランス』はダニー・ボイル監督の最新作。
『スラムドッグ$ミリオネア』でその年のアカデミー賞を総なめ、
2012年ロンドンオリンピックでは開会式の演出を担当し、
今や巨匠と言っても過言ではないボイル監督ですが、
本作はそんな肩書きなんてどこ吹く風の快作、いや怪作に仕上がっています。
物語の登場人物は主に3人。
記憶を無くし、盗んた絵画の隠し場所を忘れてしまったオークションの競売人・サイモン、
彼と手を組んだギャングのボス・フランク、
そして記憶喪失のサイモンを担当する催眠療法士・エリザベス。
ゴヤの名画を巡って彼らの運命は思わぬ方向に転がっていきます。
巧妙でいて大胆なストーリーテリングと、最高にカッコ良い音楽。
交錯する現実と幻想、現在と過去が、私たちを記憶の迷宮に誘います。
デビューから今年で20年のボイル監督。
国民的になった今でも、こんなインディー精神に満ちた作品を撮ってしまうなんて!
もしかすると今が一番脂がノっている時なのかもしれません。
いっぽう『クロニクル』は、本作で劇場映画デビューを果たしたジョシュ・トランク監督作。
まさにインディー畑から出てきたばかりの彼が作りだしたのは、
ある日突然、超能力を手に入れた高校生の物語。
地味で暗いアンドリュー、アンドリューのいとこマット、学校の人気者スティーブ。
偶然にもこちらも登場人物は3人です。
SF系超能力映画はこれまでに数あれど、この作品がそれでもなお魅力的なのは、
現代の、どこにでもいる男子高校生の青春ストーリーの面を持っているから。
いわゆるPOV(登場人物がビデオ撮影したものをそのまま映画にする手法)によって、
アンドリューたち自身が記録する日々を、観客は身近に体験します。
彼らの毎日があまりに普通だからこそ、
超能力というありえない非日常が、ものすごくリアルに感じられるのです。
催眠術と超能力。
“特別な能力”を手に入れた者は、その力をどう使うのか。
今週の二本立ての鍵はここにあります。
善人なら、スーパーヒーローなら、世のため人のために使うでしょう。
でももし、そうじゃなかったなら…。
おっといけない! 少しお話しすぎてしまったでしょうか。
それでは、続きはスクリーンでお確かめください。
トランス
TRANCE
(2013年 アメリカ/イギリス 102分 シネスコ)
2014年1月25日から1月31日まで上映
■監督 ダニー・ボイル
■脚本 ジョー・アハーン/ジョン・ホッジ
■撮影 アンソニー・ドッド・マントル
■編集 ジョン・ハリス
■音楽 リック・スミス
■出演 ジェームズ・マカヴォイ/ヴァンサン・カッセル/ロザリオ・ドーソン/ダニー・スパーニ/タペンス・ミドルトン/サイモン・クンツ/マット・クロス
その日のオークション会場は、興奮に満ちていた。ゴヤの傑作「魔女たちの飛翔」が出品されたのだ。熾烈な競売の末、2750万ポンド(約40億円)という高値で落札された瞬間、会場にガス弾が投げ込まれ、会場は一瞬にしてパニックに陥る。白昼堂々と名画を奪ったのは、競売人(オークショニア)で実はギャングの一味であるサイモン。ところが、なぜか計画とは違う行動に出たサイモンは、ボスのフランクに殴られた衝撃で絵画の隠し場所の記憶を失ってしまう。
記憶と絵画を取り戻すため、催眠療法士エリザベスがサイモンの記憶を探る。だが、サイモンの記憶を深く探れば探るほど、関わる者たちは危険な領域へと引きずり込まれていく。そしてその先には、サイモンでさえ予想もつかなかった<真相>が待ち受けていた──。
1996年『トレインスポッティング』で世界的大ヒットを記録、2008年『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー賞8部門受賞、2010年『127時間』では総計117以上のノミネート、そして2012年には栄誉あるロンドンオリンピック開会式の総監督を務め、観衆を歓喜に包んだ――その溢れんばかりの多彩な才能で、世界を熱狂させ続けてきたダニー・ボイル。2013年、待望の最新作がついに完成。ジェームズ・マカヴォイ、ヴァンサン・カッセル、ロザリオ・ドーソンら個性豊かな俳優と最高のスタッフが結集し、オープニングからラストシーンまで、映画史上かつてない結末へと疾走する。
「度肝を抜く映画。とにかく見逃してはならない、ボイルが生んだもう一本の傑作!」 ――MOVIESCOPE
クロニクル
CHRONICLE
(2011年 アメリカ 85分 ビスタ)
2014年1月25日から1月31日まで上映
■監督・原案 ジョシュ・トランク
■原案・脚本 マックス・ランディス
■撮影 マシュー・ジェンセン
■編集 エリオット・グリーンバーグ
■音楽監修 アンドレア・フォン・フォースター
■出演 デイン・デハーン/アレックス・ラッセル/マイケル・B・ジョーダン/マイケル・ケリー/アシュリー・ヒンショウ
高校生のアンドリューにとって“話し相手”は中古のビデオカメラだけ。父親は大酒飲みで暴力的、母親は病気で寝たきり。学校の昼休みも運動場の片隅でただひとりパンを食べる毎日だった。アンドリューはそんな生活のすべてをカメラに語りかけながら記録していく。
ある日、同じ高校に通ういとこのマットにパーティに連れられていったアンドリュー。仲間に入れないアンドリューを見かねたマットとアメフト部のスター選手スティーヴは、アンドリューを誘って近くの洞窟探検をすることに。そこで3人は奇妙な物体に触れ…気がつくと、不思議な能力(チカラ)を身につけていた!
公開前から話題騒然となっていた『クロニクル』は、全米公開されるや否や初登場第1位を記録。SNSに自分を“記録(クロニクル)”することが日常化している現代の高校生のリアルな心理描写と、予測不可能な特殊能力アクションが話題を呼び、全米のティーンの間で“クロニクル現象”を巻き起こした話題作だ。
監督は、28歳の新鋭ジョシュ・トランク。本作のヒットを受け、今ハリウッドで最も期待されている新人だ。アンドリュー役で主演を務めたのは、出演作の日本公開が続くデイン・デハーン。若き日のレオナルド・ディカプリオを思わせるルックスと繊細で陰のある演技が注目され、『アメイジング・スパイダーマン2』ではハリー・オズボーン役を演じることが決まっている。また、マット役に『キャリー』のアレックス・ラッセル、スティーヴ役に『陽だまりのグラウンド』のマイケル・B・ジョーダンと、いずれもブレイク必至の若手俳優が集結した。
不意に手にしたチカラによって日常が破壊されていく衝撃を10代の目線で記録した、リアルすぎて危険な青春SFアクション映画『クロニクル』。もしアナタがチカラを手に入れたら…ソノチカラ、ドウツカウ?