監督■ジャック・ドゥミ
1931年6月5日生まれ。港町ナントで少年期を過ごし。14歳で監督を志す。
長編第一作の『ローラ』は巨匠J・P・メルヴィルに「ヌーヴェルヴァーグの真珠」と激賛される。難産の末発表した『シェルブールの雨傘』でその年の主要映画賞を総なめに。続く『ロシュフォールの恋人たち』で長年の夢だったオールスター・キャストによる本格ミュージカルを実現した。
その後200万人動員の大ヒット作『ロバと王女』を発表するも企画が次々に頓挫する等、不遇が続く。そんな時期に手がけたのが日本資本による『ベルサイユのばら』の映画化だった。90年10月27日逝去。夫人はこちらも名匠のアニエス・ヴァルダ監督。
・グレバン蝋美術館(1958)<未>監督
・ローラ(1961)監督/脚本
・新7つの大罪(1962)監督/脚本
・シェルブールの雨傘(1963)監督/脚本
・天使の入江(1963)<未>監督/脚本
・ロシュフォールの恋人たち(1966)監督/脚本
・ロバと王女(1970)監督/脚本
・ハメルンの笛吹き(1971)監督/脚本
・モン・パリ(1973)監督/脚本
・ベルサイユのばら(1979)監督
・都会のひと部屋(1982)<未>監督
・想い出のマルセイユ(1988)監督/脚本
・ジャック・ドゥミの少年期(1991)原作/出演
・ポール・グリモー短編傑作集(1998)共同監督
『レ・ミゼラブル』の大ヒットで、
ミュージカルブームが再び高まりつつある昨今。
皆さま、あの伝説のフレンチ・ミュージカルを
よもや忘れてはいらっしゃらないでしょう。
ヌーヴェルヴァーグきってのロマンチスト、ジャック・ドゥミと、
代表作をあげたらきりがないフランスを代表する音楽家、
ミシェル・ルグランが手を組んだ、
天才コンビによる紛れもない最高傑作。
今週は『シェルブールの雨傘』
『ロシュフォールの恋人たち』を上映いたします。
ポップでカラフルな色づかい、女優たちの美しさ、
クレーンを使ったワンシーンワンカット、
キラキラハッピーな恋と悲しくて切ない愛、
そして、一度聴いたら忘れられない珠玉の音楽…。
うーんどうしたって気分が上がってしまう!
思わず早稲田通りをハミングしながらスキップしてしまいそう?!
シェルブールの雨傘
(1964年 フランス・ドイツ 91分 ビスタ/ドルビーA)
2013年6月15日から6月21日まで上映
■監督・脚本・作詞 ジャック・ドゥミ
■製作 マグ・ボダール
■撮影 ジャン・ラビエ
■美術 ベルナール・エヴァン
■衣装 ジャクリーヌ・モロー
■音楽 ミシェル・ルグラン
■出演 カトリーヌ・ドヌーヴ/ニーノ・カステルヌオーヴォ/マルク・ミシェル/エレン・ファルナー/アンヌ・ヴェルノン
■1964年カンヌ国際映画祭グランプリ・国際カトリック映画事務局賞・フランス映画高等技術委員会賞受賞/1964年米アカデミー賞外国映画賞ノミネート
★製作から長い年月が経っているため、本編上映中お見苦しい箇所・お聞き苦しい箇所がございます。ご了承の上、ご鑑賞いただきますようお願いいたします。
港町シェルブールで、ささやかだけど美しい恋を育むふたり――自動車修理工のギイと傘屋の少女ジュヌヴィエーヴ。しかしアルジェリア戦争の影は、ふたりに着々と近づいていた。ギイに届いた徴集礼状。彼の不在はジュヌヴィエーヴにとってしだいに耐え難いものになってゆく。だが、彼女はギイとの子供をお腹に宿していた。
そんな折、ギイの出兵前から店の窮地を助けてきた宝石商のカサールが、ジュヌヴィエーヴの妊娠も意に介せず求婚してきて…。
観ているこっちが照れてしまいそうな情熱的な台詞…でも大丈夫、この映画、ぜーんぶ歌でできているんです! これぞミュージカル、というよりオペラ? 普通の台詞は一言もありません。こんな斬新なことを思いついたドゥミ監督もすごいけど、それに答えたルグランもすごいです。映画における音楽の大切さをこれほど感じる作品もないでしょう。表題曲「シェルブールの雨傘」の素晴らしさといったら!
しかしなんといっても主演のカトリーヌ・ドヌーヴ。"世界で一番の美女"と言われた彼女の本作での美しさは言葉にできないほどです。ドヌーヴは当時、ロジェ・ヴァディム監督との間に息子をもうけながらも破局し、若干20歳にして未婚の母となっていました。役柄に近い経験をした彼女が演じるからこそ、ジュヌヴィエーヴが選ぶ人生が涙を誘うのかもしれません。
出資を渋られ低予算で製作されたこの作品は、カンヌ映画祭で見事グランプリを受賞、ドゥミ監督の名を一躍世界に知らしめました。傘が乱舞するオープニングから、切なすぎる雪のラストシーンまで、すべてが美しく愛おしい傑作です。
ロシュフォールの恋人たち
(1967年 フランス・アメリカ 127分 シネスコ/MONO)
2013年6月15日から6月21日まで上映
■監督・脚本・作詞 ジャック・ドゥミ
■製作 マグ・ボダール
■撮影 ギスラン・クロケ
■美術 ベルナール・エヴァン
■衣装 ジャクリーヌ・モロー/マリー・クロード・フーケ
■音楽 ミシェル・ルグラン
■出演 フランソワーズ・ドルレアック/カトリーヌ・ドヌーヴ/ジーン・ケリー/ジョージ・チャキリス/ダニエル・ダリュー/ジャック・ペラン/ミシェル・ピコリ/グローヴァー・デイル
■1968年米アカデミー賞ミュージカル映画音楽賞ノミネート
★製作から長い年月が経っているため、本編上映中お見苦しい箇所・お聞き苦しい箇所がございます。ご了承の上、ご鑑賞いただきますようお願いいたします。軍港の町ロシュフォールにめぐってきたお祭りの季節。旅芸人のエチエンヌとビルのコンビが到着しショウの準備を始めた。美しい双子の姉妹ソランジュとデルフィーヌも、新しい恋の予感を感じ思わず歌い出す。町に駐屯している水兵マクサンス、彼が訪ねたカフェのマダムで姉妹の母であるイヴォンヌ、彼女のかつての恋人シモン・ダム、その友達の著名な作曲家アンディ。 町中が沸き立つ週末の3日間に、彼等の出会いが交錯しては新たな恋が生まれ、かつての恋が再燃する――。
雨が降りしきるシェルブールの町で涙したあとには、底抜けに明るいロシュフォールのお祭りに出かけましょう! 双子姉妹のおそろいのつば広帽子とワンピースや、ラメづくめのゴージャスなドレス、水兵さんのマリンルック、町行く人や建物のいろ、いろ、いろ…もうとにかくカラフル! ドゥミ監督の魔法にかかれば、小さな軍港の町はたちまちワンダーランドに変身してしまいます!
そして前作の成功もあり、キャストもびっくりする豪華さです。カトリーヌ・ドヌーヴ&フランソワーズ・ドルレアックの本物姉妹が双子を演じれば、もちろん息はぴったり。(本作に出演した同年に、フランソワーズは交通事故で急逝しています。それを思うと少し悲しいけれど…。)ハリウッドからは『雨に唄えば』のジーン・ケリーと『ウエスト・サイド物語』のジョージ・チャキリスが参加、本場のアクロバットな踊りを存分に見せてくれます。それから若きジャック・ペラン! イケメンすぎてま、眩しい…。
そんな彼らが歌うのが、ミシェル・ルグランの陽気なナンバー! ルグラン本人も特別お気に入りと言う本作のサントラは、本当に名曲ばかり。聞いたことのある曲が必ずあるはずですよ。いやぁ、こんな素敵な音楽と、極彩色の衣装やセットに囲まれた撮影は、さぞかし楽しかっただろうなぁ…。画面からはみ出るくらいのハッピーオーラは、劇場でしか味わえません!
実は、この二作品ではそれぞれに、ドゥミ監督長編デビュー作『ローラ』の物語のその後が語られています。
踊り子ローラに恋をして破れた青年ローランが、『シェルブール〜』のあの人だったり、幸せになったはずのローラの意外な行く末が『ロシュフォール〜』で判明したり…。
今週の二本立てとあわせて、『ローラ』もぜひご覧ください!
ますますドゥミ作品のファンになってしまうことでしょう。
(文・パズー デザイン・ザジ)