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監督

監督■ジャック・オディアール

1952年パリ生まれ。父は脚本家として『殺人鬼に罠をかけろ』『冬の猿』『地下室のメロディー』など、数々のフィルム・ノワールの傑作を手がけたミシェル・オディアール。

一時は教職を志すが、文学の勉強に挫折し、編集技師として映画界入り、ロマン・ポランスキーの『テナント』(76年・ビデオ公開)、パトリス・シェローの「ジュディット・テルポーヴ」(68年)等を手掛ける。

父とともに脚本を執筆し、一本立ち後も着実に評価を得る。94年の『他人のそら似』(ミシェル・ブラン)では台詞を担当し、94年『天使が隣で眠る夜』で待望の監督デビュー。セザール賞第1回監督作品賞を受賞したほか、ジョルジュ・サドゥール賞に輝いた。

96年『つつましき詐欺師』ではカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞。そして01年に『リード・マイ・リップス』を監督。5年の歳月を費やして完成させたこの作品は、フランス全土はもちろんアメリカでもロングラン・ヒットを記録、セザール賞では作品賞、監督賞など9部門にノミネートされ、主演女優賞、脚本賞、音響賞の3部門で受賞に輝いた。

ハーヴェイ・カイテル主演の『マッド・フィンガーズ』をリメイクした『真夜中のピアニスト』は2005年ベルリン映画祭にて最優秀音楽賞を受賞。09年『預言者』は審査員特別グランプリを受賞。最新作でありセザール賞で脚色賞など4部門を受賞した『君と歩く世界』は現在公開中。

・プロフェッショナル(1981)<未>脚本
・死への逃避行 (1983)脚本
・ウエディングベル/Mr.レディMr.マダム3(1986)脚本
・キリング・タイム(1987)脚本
・バクステール/ぼくを可愛がってください。さもないと何かが起こります。(1988)<未>脚本
・バルジョーでいこう!(1992)脚本
・天使が隣で眠る夜(1994)監督/脚本
・つつましき詐欺師(1996)<未>監督/脚本
・エステサロン/ヴィーナス・ビューティ(1999)脚本
・リード・マイ・リップス(2001)監督/脚本
・真夜中のピアニスト(2005)監督/脚本
・預言者(2009)監督/脚本
・君と歩く世界(2012)監督/脚本/製作

今週は現在『君と歩く世界』が公開中のジャック・オディアール監督特集。
彼の代表作『真夜中のピアニスト』『預言者』の上映。
どちらの作品も犯罪映画という、どこかおどろおどろしい印象を取り除くと、
もどかしさを抱えて生きている青年が、大人へと成長を遂げる、
という普遍的な物語になっている。

母親のようなピアニストになりたいと静かに願う一方で、父親ロベールの稼業を継ぎ、
暴力にまみれた不動産の裏ブローカーとして働くトム(『真夜中のピアニスト』)。

傷害罪で収監され、右も左もわからない監獄の中で、囚人のトップに君臨する
コルシカ・マフィアのセザールに強引に仲間へと引きずり込まれたマリク(『預言者』)。

父親たちの下で、生きる術を学んできたトムとマリクに生じる葛藤は、
別段暴力の世界に身を置いていなくとも当たり前の感情なのかもしれない。
父親に対する、愛情と憎しみ、恐怖と憧れ。

そして子供たちは父と肩を並べたことで、初めて"自分"というものを発見する。

トムは中国人ピアニスト、ミャオ=リンとの言葉を介さない音楽での交歓に心を震わせた。
マリクは自分が殺したレィエブと、自分が犯した罪と対峙することで、
文字を学び、仲間を作り、監獄の社会を動かす存在にまで上り詰めた。
かつての自分の姿を見つめ直すことが、未来へと繋がってゆく。

暴力の連鎖を断ち切り、ピアノの旋律に耳を澄ますトム。
6年の刑期を終え、出所する事となったマリク。
はじめはどこか幼げに見えた2人の表情が、
精悍な一人の男の顔付に変わった様は必見である。

(ミスター)


真夜中のピアニスト
De battre mon coeur s'est arrete
pic
(2005年 フランス 108分 ビスタ/SR)
2013年4月20日から4月26日まで上映
■監督・脚本 ジャック・オディアール
■脚本 トニーノ・ブナキスタ
■オリジナル脚本 ジェームズ・トバック
■撮影 ステファーヌ・フォンティーヌ
■音楽 アレクサンダー・デスプラ

■出演 ロマン・デュリス/ニエル・アレストリュプ/リン・ダン・ファン/オーレ・アッティカ/エマニュエル・ドゥヴォス/ジョナサン・ザッカイ/ジル・コーエン/アントン・ヤコレコフ/メラニー・ロラン

■2005年ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀音楽賞)受賞/英国アカデミー賞外国語映画賞/セザール賞作品賞・監督賞ほか6部門受賞

僕から音楽があふれ出す

picトムは28歳。放埓な父親の跡を継ぐことを宿命づけられているように、今は、薄汚れ時として残酷な裏切りが横行する不動産の裏ブローカーの世界に生きている。しかし、彼の心には何時の日にか、母親のようなピアニストになりたいという夢が眠っていた。そしてその夢は突然動き出す。

ある日、彼は昔の恩師に出会い、再びピアニストの道を勧められたのだ。心を揺さ振られた彼は過酷な裏稼業と仲間から離れようと試みる。彼を助けるのは、フランス語を話すこともできない中国からやって来た女流ピアニストのみ。音楽だけを唯一の会話として、2人はオーディションを目指して練習に励むが、その前には幾つもの困難が立ちはだかっていた…。

パリを、そして世界を熱狂させた
ニュージェネレーション・ムービー!

pic78年にハーヴェイ・カイテル主演、ジェイムズ・トバック監督によって製作された『マッド・フィンガーズ』を、『リード・マイ・リップス』の名匠ジャック・オディアール監督がリメイク。舞台を現代のパリに移し、金に執着する父親との絆と確執を軸に、裏の世界に身を堕としながらも、ピアニストの夢を追う主人公の葛藤を描き切った。主人公トムの目線に合わせ、全編手持ちカメラにより撮影された本作は、黒く艶やかな夜のパリをスタイリッシュな映像で鮮やかに切り取る。

pic主演は『スパニッシュ・アパートメント』や『PARIS』など、セドリック・クラピッシュ監督作常連のロマン・デュリス。繊細さと野性味を兼ね備えたキャリア最高の演技を見せ、国内外で絶賛された。父親役には『サラの鍵』のニエル・アレストリュプ、トムをめぐる女性たちにオーレ・アッティカ、エマニュエル・ドゥヴォス、リン=ダン・ファンなど個性派がそろって出演。また本作のもう一つの主役とも言えるアレクサンドル・デスプラによる音楽は、ベルリン国際映画祭で最優秀音楽賞を受賞している。


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預言者
Un prophete

(2009年 フランス 150分 ビスタ/SRD)
2013年4月20日から4月26日まで上映
■監督・脚色 ジャック・オディアール
■脚本 アブデル・ラウフ・ダブリ/ニコラス・プフェリ
■脚色 トーマス・ビデガン
■撮影 ステファーヌ・フォンティーヌ
■音楽 アレクサンダー・デスプラ

■出演 タハール・ラヒム/ニエル・アレストリュプ/アデル・ベンチェリフ

■2009年カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ受賞/米アカデミー賞外国語映画賞ノミネート/ロンドン国際映画祭最優秀作品賞受賞/セザール賞作品賞・監督賞ほか7部門受賞 ほか多数受賞・ノミネート

■オフィシャルサイト http://sumomo.co.jp/yogensha/

いつか必ず 光は差す

pic無学で身寄りのない19歳のアラブ系青年のマリクは傷害罪で禁固6年の判決を受け、中央刑務所に送られてくる。刑務所の中は、様々な民族や宗教が入り混じるモザイクの様相を呈していた。ある日、マリクは刑務所内の最大勢力コルシカ・マフィアのボス、セザールに殺しを依頼される。苦悩の末「任務」を果たすことに成功したマリクは、生き残る為に様々な事を「学び」始めるが…。

圧倒的なリアリズムと胸を打つラストの爽快感
フィルム・ノワールの新たな傑作

pic最新作『君と歩く世界』が日本公開中のジャック・オディアール監督が、2009年のカンヌ国際映画祭で見事グランプリを受賞した本作。主要キャストはコルシカ・マフィアの親分を演じたニエル・アレストリュプ以外、殆ど無名の俳優で構成され、刑務所のセットは本物そっくりに作り上げられた。巧みなストーリーテリングに加え、撮影テクニックにも目を見張るものがあり、鳥肌の立つほどの臨場感で観る者を圧倒する。本作で本格的に俳優デビューを果たしたタハール・ラヒムは次世代のフランス映画界のスター候補として最も注目を集める存在になった。また、凄惨なプリズン・ドラマであるにもかかわらず、ラストシーンは爽快感と幸福感に満ち溢れ、深い感動を覚えるに違いない。

pic「この物語は“塀の外”にいる我々にとっても普遍性を持って迫ってくることでしょう。マリクの生き様は、混沌の中で正義の行方を見失いつつある我々に、“如何に生きるべきか”を突き付けているのです。」
―――ジャック・オディアール



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