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上の絵を見てください。
美少女が戦慄の表情で叫んでいます。
見るからに恐ろしい事が起こっていそうな予感がしますね〜。

「恐怖」
それは人間なら誰もが持っている感情。
恐怖とは、気味の悪い、いや〜なものである一方で、“怖いものみたさ”という言葉があるように、
どうしようもなく魅かれてしまう感情でもあります。
そして恐怖を目に見せてくれる絶好の方法が、映画という娯楽。
誰もが知っている名匠アルフレッド・ヒッチコックはどんな作品を残したのか?
それは言わずもがな、ホラー、サスペンス、ミステリーという「恐怖映画」です。
身の毛のよだつようなイメージや、徐々に忍びよってくる気配、ただらなぬ緊張感…
レンタルビデオ屋に行くと必ずある、黒とか青の表紙ばかり並んでるあのコーナー。
「恐怖」とは、映画を語るうえで避けて通れないものなのです。
今週はそんな「恐怖映画」を知り尽くした、二人の名監督の二本立てをお届けします。

ジョン・カーペンター監督『ザ・ウォード/監禁病棟』は、
外から一切遮断された監禁病棟を舞台にした密室ホラー。
記憶をほとんど失った主人公、一人また一人と消えてゆく患者の少女たち、
そして徐々に姿を現す世にも恐ろしい亡霊…
マスター・オブ・ホラーの異名をとるジョン・カーペンター監督、
10年振りの新作でも、ホラー映画ファンの期待をこうも裏切らないとは!!
いかにも"出そう"なところで、
くるぞくるぞくるぞくるぞ…ばーーーーんっ!
と登場する化け物は、爽快ですらあります。
少女たちが美しい顔を歪ませて叫ぶ悲鳴はもはや耳に心地よいかも(?)。
とにかくテンポやタイミングが寸分の狂いも無くばっちりなので、
「怖い!けどわくわく!!」の連続のうちに物語は進んでいくのです。
これぞまさに最高峰のホラー映画!

そして対するはロマン・ポランスキー監督『ゴーストライター』
元英国首相のゴーストライターを依頼された男が国家機密に巻き込まれていくサスペンス。
まず映画の冒頭がとても怖い。
曇天の空に荒れた海。港に着いたフェリーから車が次々と出てゆく中、
残された誰も乗っていない一台の車…フェリーまで運転していたはずの持ち主はいない…
いや、まるで“ゴースト”が乗っているかのように、運転席の空いた車は不気味に佇んでいます。
このオープニングからもう心を鷲掴みにされてしまうのですが、
すごいのは、そのままのテンションで映画の最後までいってしまうという事。
ラストシーンなんてもう(おっと!)…全身鳥肌です!
映画が終わったあと、そのあまりの完成度に私は思わず拍手してしまいました。

カーペンターの監督デビューは72年、ポランスキーはなんと64年。
彼らの作品を観ていると、映画とは職人技なのだとうならされます。
「見事」としか言いようのないカット割や音楽の効果、
カメラの位置も小道具も天気さえもすべてが計算されたもの。
意外性がないって? そんなことはありません。
その道を突き詰めてきた者だけの“王道”という匠の技。
30年、40年と「恐怖映画」と向き合ってきたからこそできる至高の技術は驚きの連続です。

映画とは、娯楽であると同時に優れた芸術でもある。
ヒッチコックの描いた「恐怖」はまさにそれでした。
かつては当たり前だったものが少なくなってしまった近年、
娯楽と芸術、両方をばっちりと兼ね備えた作品がここにあります。
最近ドキドキが足りないなぁ…と思うそこのあなた、
今週は早稲田松竹で超一級品のドキドキを体験できますよ。
お気をつけてご覧ください!

(パズー)

ザ・ウォード/監禁病棟
JOHN CARPENTER'S THE WARD
(2010年 アメリカ 89分 R15+ シネスコ/SRD) 2012年2月25日から3月2日まで上映
■監督・脚本 ジョン・カーペンター
■脚本 マイケル・ラスムッセン/ショーン・ラスムッセン
■撮影 ヤーロン・オーバック
■音楽 マーク・キリアン

■出演 アンバー・ハード/メイミー・ガマー/ダニエル・パナベイカー/ローラ=リー/リンジー・フォンセカ/ジャレッド・ハリス

逃げることは許されない、
本当の恐怖を知るまでは――

picクリステンは気が付くと森の中を走っていた。辿り着いた一軒の農家に迷うことなく火を付け、警察に捉えられた彼女は、そのまま精神病院の、特定の患者だけを収容するウォード(監禁病棟)へと送られる。そこには同じような境遇の少女が4人いた。自分だけは正常だと信じていたクリステンだったが、担当医のカウンセリングを受けた結果、ほとんどの記憶を失っていることに気づく。

不安を抱えたまま迎えた夜、クリステンは病棟の廊下を歩くおぞましい顔をした少女の姿を目撃する。この病棟には看護師でもなく、患者でもない、何か別の存在がいる…。そして一人ずつ消えていく少女たち。クリステンは必至の思いで病棟から脱出を試みるが、やがて彼女自身想像し得なかった恐ろしいまでの真実に直面するのだった――。

鬼才ジョン・カーペンター監督10年ぶりの完全復活!
マスター・オブ・ホラーが沈黙を破る!!

pic『ハロウィン』、『遊星からの物体X』でホラー、SFの金字塔を打ち立てたジョン・カーペンター。その後も常に挑戦的なテーマを扱い、低予算でもアイディア次第でおもしろい映画が撮れるということを証明してきた。撮りたいものが出てくるまでメガホンを取らないカーペンター監督。前作『ゴースト・オブ・マーズ』から10年の年月を経た今、満を持して沈黙を破り、待望の新作が公開される!

主演は、10月に全米公開となった『The Rum Diary(原題)』でジョニー・デップの相手役に大抜擢された、今ハリウッドで大注目を集めているアンバー・ハードが務めている。さらに『Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼』などのダニエル・パナベイカー、メリル・ストリープの実の娘であるエイミー・ガマーなど、若手気鋭女優が総出演。彼女たちがジョン・カーペンター監督の新章となる本作でかつてない化学反応を引き起こす!


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ゴーストライター
THE GHOST WRITER
(2010年 フランス/ドイツ/イギリス 128分 シネスコ/SRD) 2012年2月25日から3月2日まで上映
■監督・製作・脚本 ロマン・ポランスキー
■製作 ロベール・ベンムッサ/アラン・サルド
■脚本 ロバート・ハリス
■原作 ロバート・ハリス「ゴーストライター」(講談社文庫刊)
■撮影 パヴェル・エルデマン
■音楽 アレクサンドル・デスプラ

■出演 ユアン・マクレガー/ピアース・ブロスナン/キム・キャトラル/オリヴィア・ウィリアムズ/トム・ウィルキンソン/ティモシー・ハットン/ロバート・パフ/ジェームズ・ベルーシ/イーライ・ウォラック

■2010年ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀監督賞)/2011年セザール賞監督賞・脚色賞・音楽賞・編集賞受賞/2010年ヨーロッパ映画賞作品賞・最優秀監督賞・主演男優賞・脚本賞・美術賞・作曲賞受賞/2011年ロンドン批評家協会映画賞英国助演女優賞受賞/2010年ロサンゼルス映画批評家協会音楽賞受賞

知りすぎた、男(ゴースト)――

pic元英国首相アダム・ラングの自叙伝執筆を依頼されたゴーストライター。ラングが滞在する真冬のアメリカ東海岸にある孤島に1ヶ月閉じ込められることと、締め切りまで時間がないことを除けばおいしい仕事のはずだった。しかし前任者のゴーストライターであったマカラは、書き直しを命じられ、大酒を飲んで溺死したという――。

pic不吉な予感を感じながら仕事を始めた直後、ラングに、イスラム過激派のテロ容疑者を“不法”に捕え、拷問にかけたという戦犯容疑がかかる。しかし、この政治スキャンダルはまだ序章にすぎなかった。はかどらない仕事と格闘していく中、ゴーストライターはラングの発言と前任者マカラが遺した資料との間に矛盾を見出し、ラング自身の過去に隠されたもっと大きな秘密に気付き始める。やがて彼はラングの妻ルースと専属秘書アメリアとともに、国際政治を揺るがす恐ろしい影に近づいてゆく…。

名匠ポランスキーがサスペンスフルに描く、
映画史に名を刻む、エンターテインメントの金字塔!

picアカデミー賞監督賞に輝いた『戦場のピアニスト』から9年。間もなく80歳を迎えるロマン・ポランスキーが、久しぶりに本格派サスペンスに挑んだ。映画オールタイムベストテンにたびたび登場し、代表作との呼び声が高い『チャイナタウン』を彷彿とさせる本作は、まさに“職人技”の円熟した演出力で、ベルリン国際映画祭銀熊賞を皮切りに数々の賞に輝いた。原作はイギリスのベストセラー作家ロバート・ハリスによる同名小説。政治記者としてトニー・ブレア元首相の傍にいた経験を活かした原作から、ポランスキーとの共同作業ですばらしい脚本を完成させた。

「僕はゴーストです。(I'm your ghost.)」と、名前のない主人公として観る者をスクリーンの中へと誘うのは、『トレインスポッティング』から『スター・ウォーズ』のオビ=ワン役まで、カメレオン俳優としての名を欲しいままにしているユアン・マクレガー。気負いのない自然かつチャーミングな演技で、“巻き込まれ型”ヒーローを文句なしに演じきった。一方、魅力的で自信に満ち溢れた元英国首相を、『007』シリーズのボンド役で有名なピアース・ブロスナンが怪演。彼らを取り巻く女性陣には、ランスの秘書アメリアを「SEX AND THE CITY」シリーズのキム・キャトラルが、妻ルースをオリヴィア・ウィリアムズが扮した。さらに、イーライ・ウォラックはじめ、ティモシー・ハットン、トム・ウィルキンソンなど名優がずらりと顔を揃え、物語のみならず名演が映画の興奮を掻き立てる傑作を生みだしている。


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