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みなさん、最近新しい自分に出会っていますか?
歳を重ねるにつれ、一年が過ぎるペースはみるみる早くなっていくのに、
それと比べて自分はもう簡単には変わらないだろうな、と思うことってありますよね。
今の状態から脱却したいという気持ちはありながら、
「いつも」の自分でいることはやっぱり楽で安心するし、
新しい世界に飛び込むのはなんだかんだ面倒で、勇気もない。
でもそんな自分の背中をポン、と押してくれるのは、
予想だにしない人物かもしれません。

今週は、どこか自信なさ気で梅雨空のようなモヤモヤを抱えた
どうしようもないオトコたちが主人公のお話。
そんな彼らが、ゆっくりと一歩一歩新しい自分に変ろうとする様を
ぜひ観客みんなで温かく見守っていただきたい、そんな二本立てです。

『キツツキと雨』の幸一(25歳)は、新人映画監督。
記念すべきデビュー作を撮るため、撮影隊とともに片田舎に来たのですが…。
スタッフからは「やるの?やらないの?」と大量の質問攻め、
キャストの女優は台詞を変えたいと言い出し、もう頭ん中は爆発寸前!
それはもう、朝の靴下選びで願掛けしてしまうほどのギリギリ状態。
そんななか出会ったのは、村の60歳の木こりでした。

一方 『人生はビギナーズ』のオリヴァー(38歳)は、アートディレクター。
さぞオシャレで、華やかな毎日を過ごしてると思いきや、恋人は…なし。
友達は仕事と犬(アーサー?♂)。
母が亡くなってから5年が経ったころ、ガンを宣告された父は彼に言いました。
「私はゲイだ。これからは本当の意味で人生を楽しみたいんだ。」
75歳で人生を謳歌する父と語る、母のこと、恋人のこと、人生のこと。
彼の知らなかった「新しい父」との出会いでした。

人は生きていたら、
どうしようもなく人と関わっていかなければなりません。
それが面倒だったり、自分の支えとなっていたり、カタチは様々。
でもひとつ変わらないのは、人と関わることは自分と向き合うということ。
今週の主人公たちも、村の木こりやゲイの父親に背中を押されながらも、
自分の力で新しい一歩目を踏み出していきます。
そのときはきっと、梅雨空も真っ青の夏空に変わっているはずです。

(おまる)

人生はビギナーズ
BEGINNERS
(2010年 アメリカ 105分 ビスタ/SRD) 2012年7月7日から7月13日まで上映 ■監督・脚本 マイク・ミルズ
■撮影 キャスパー・タクセン
■音楽 ロジャー・ネイル/デイヴ・パーマー/ブライアン・レイツェル

■出演 ユアン・マクレガー/クリストファー・プラマー/メラニー・ロラン/ゴラン・ヴィシュニック/メアリー・ペイジ・ケラー/キーガン・ブース/カイ・レノックス

■2011年アカデミー賞助演男優賞受賞/2011年ゴールデングローブ賞助演男優賞受賞/2011年ゴッサム・インディペンデント映画賞作品賞・アンサンブル演技賞受賞/2011年LA批評家協会賞助演男優賞受賞/2011年インディペンデント・スピリット賞作品賞・監督賞・助演男優賞ノミネート ほか多数

「私はゲイだ。」
父が75年目に明かした真実が、
僕の人生を大きく変えた。

pic「私はゲイだ。これからは本当の意味で人生を楽しみたいんだ。」それは母に先立たれた5年後、癌を宣告された父・ハルからの突然の告白。元々は厳格で古いタイプの人間だった父が、そのカミングアウトをきっかけに若々しいファッションに身を包み、パーティやエクササイズに精を出し、若い恋人まで作って新たな人生を謳歌した。

一方、息子・オリヴァーはといえば、38歳独身、友達は仕事と犬。元々の臆病な性格故か、父のカミングアウトにも戸惑いを隠せない。そんな心の動揺は運命の女性・アナとの恋にも自ら終止符を打つという最悪の結末を迎えてしまう。しかし、父のカミングアウトから“最期”までの5年間は、愛に溢れた幸せな日々だった。それは正に、自分の気持ちに正直になり、愛する誰かと共に生きることが人生で一番大切だという、父の最後の教え。オリヴァーにとって大切なこと、それは――。

人はいくつになっても新たな一歩を踏み出すことができる。
人生の“初心者”たちがそれぞれの道を切り拓く、希望の物語。

グラフィック・デザインやミュージック・クリップなどでめざましい活躍を続けてきたアーティスト、マイク・ミルズ。本作はマイク・ミルズのプライベートストーリーの映画化である。彼の父親は、75歳にして自らがゲイであることを突然カミングアウトし、 そしてその衝撃的な告白から5年後にこの世を去った。「父親のすべてを書かなければならない。そうすべき時が来たと感じた。」マイク・ミルズは父親への絶対的な敬意と愛情をもって、その死から5カ月かけて、脚本を練り上げた。

主人公を演じたのは、昨年の『ゴーストライター』でも演技力が高く評価されたユアン・マクレガー。父の人生に感化され、自身も少しずつ変化していく主人公の繊細な心情を演じきった。ヒロインに扮したのは『オーケストラ!』のメラニー・ロラン。そして父・ハル役を生き生きと演じた名優クリストファー・プラマーは、見事82歳にしてアカデミー賞助演男優賞に最高齢で輝いた。


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キツツキと雨
(2011年 日本 129分 ビスタ/SRD) 2012年7月7日から7月13日まで上映 ■監督・脚本 沖田修一
■脚本 守屋文雄
■撮影 月永雄太
■音楽 omu-tonebr

■出演 役所広司/小栗旬/高良健吾/臼田あさ美/古舘寛治/嶋田久作/平田満/伊武雅刀/山崎努

■第24回東京国際映画祭審査員特別賞受賞/第8回ドバイ国際映画祭【アジア・アフリカ部門】最優秀男優賞(役所広司)・最優秀脚本賞・最優秀編集賞受賞

雨でも…きっと晴れるさ。
無骨なキコリと気弱な映画監督のちょっといい出会い――

picキコリの克彦が暮らすのどかで小さな山村に、ゾンビ映画の撮影隊がやってきた。村の住人達は戸惑い気味だが、ひょんなことから克彦はゾンビのメイクでエキストラ出演するはめになる。キコリ仲間から出演をネタにされ、まんざらでもない克彦。いっぽう映画の監督である幸一は、大勢のスタッフやキャストから質問攻めにあい、生来の気の弱さから現場をまとめきれずにパニック寸前になっていた。

偶然出会ったキコリ60歳と新人監督25歳。初めは距離を置いていたふたりだが、克彦は撮影を通して映画の面白さに気づき、幸一は克彦と接することで本来の自分らしさを取り戻していく。そしてふたりの交流はいつしか村と撮影隊の奇妙なコラボレーションを生み出して――。

『南極料理人』の沖田修一監督最新作
やさしくておかしくてホロリとさせる
雨のち晴れのほんわかムービー

pic年齢も価値観も自分と異なる人生の人と出会ったら…。南極観測員たちの奇妙な共同生活を、温かな笑いで包みヒットした『南極料理人』から2年。沖田修一監督待望の新作は、片田舎に暮らす年配の木こりと、デビュー作の撮影に四苦八苦する新人監督の青年とのふれあいを描く、ハートフルなヒューマン・ドラマだ。ゾンビ映画の撮影隊という奇抜な設定を取り入れながら、人間が持つ可笑しさを独特の間を使い、心の芯まであたたまるような感動の物語を生み出している。

pic素朴で無骨な木こりの克彦に役所広司、25歳の新人監督幸一を小栗旬が演じ、初タッグが実現。共演に、高良健吾、臼田あさ美、ベテランの伊武雅刀、さらに山崎努など豪華キャストが顔をそろえる。誰だってひとつやふたつ問題を抱えている。でも、誰かとつながることで、新しい自分へと成長できる。下を向きがちな時、「絶対良いことがある!」と元気が湧いてくるような、温かな感動作が出来上がった。



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