toppic ★『8 1/2』『青春群像』は、本編上映中、お見苦しい箇所・お聞き苦しい箇所がございます。ご了承の上、ご鑑賞いただきますようお願いいたします。

フェデリコ・フェリーニ

監督■フェデリコ・フェリーニ

1920年1月20日、イタリア・リミニ生まれ。「映像の魔術師」の異名を持つ。

17歳まで奔放な生活を送った後、ローマで小説の挿絵画家、新聞の寄稿、ラジオ・ドラマの脚本などさまざまな職業を経て、脚本家として映画界入りを果たす。巨匠ロベルト・ロッセリーニ監督の依頼で「無防備都市」の脚本に参加、以後は“ネオリアリスト”系脚本家として高く評価される。50年にアルベルト・ラトゥアーダと共同で「寄席の脚光」を演出し、監督業に進出。

54年の「道」で世界的に名を知られ、「8 1/2」では64年度アカデミー外国賞を受賞し、巨匠としての座をゆるぎないものにした43年にジュリエッタ・マシーナと結婚して生涯一緒だった。93年、心臓発作のためにこの世を去った。

フィルモグラフィ

・無防備都市('45)脚本
・戦火のかなた('46)脚本
・アモーレ('48)脚本/製作
・ポー河の水車小屋('49)脚本
・越境者 ('50)脚本/原案
・神の道化師、フランチェスコ('50)脚本
・街は自衛する('51)脚本
・青春群像('53)監督/脚本
・道('54)監督/脚本
・崖('55)監督/脚本
・カビリアの夜('57)監督/脚本
・甘い生活('59)監督/脚本/原案
・ボッカチオ'70('62)監督/脚本
・8 1/2('63)監督/脚本
・魂のジュリエッタ('64)監督/脚本
・世にも怪奇な物語('67)監督/脚本
・スイート・チャリティ('68)原作
・サテリコン('69)監督/脚本
・フェリーニの道化師('70)監督/脚本/出演
・フェリーニのローマ('72)監督/脚本/原案
・フェリーニのアマルコルド('74)監督/脚本
・あんなに愛しあったのに('74)出演
・ネオ・ファンタジア('76)撮影協力
・カサノバ('76)監督/脚本/原案
・オーケストラ・リハーサル('78)監督/脚本
・女の都('80)監督/脚本
・フェリーニの都('80)出演
・そして船は行く('83)監督/脚本
・ジンジャーとフレッド('85)監督/脚本
・インテルビスタ('87)監督/脚本/出演
・ボイス・オブ・ムーン('90)監督/脚本
・キング・オブ・アド('91)監督
・フェリーニ 大いなる嘘つき('02)出演
・マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶('06)出演

*日本公開作品のみ



私が映画だ!

この強烈なセリフを残したことはあまりにも有名ですが、
その言葉どおり、亡くなってから20年近く経つ今でも、
多くの芸術家たちから愛され続けるイタリアの巨匠、フェデリコ・フェリーニ。

皆さまお待たせいたしました、前回上映した『甘い生活』から4年ぶり、
監督特集では実に6年ぶりに、フェリーニが早稲田松竹に帰って来ました。

私が初めて観たフェリーニの作品は『道』。
「ジェルソミーナ! ジェルソミーナ!」
記憶の片隅にいつまでも残るこの台詞。
ファウスト、モラルド、カビリア、マルチェロ、そしてグイド…。
フェリーニの映画では、何度も主人公の名前が呼ばれます。
そして妻ジュリエッタ・マシーナや、盟友マルチェロ・マストロヤンニ、
フェリーニが愛した俳優たちの様々な表情。 クローズアップ。
“映像の魔術師”と呼ばれるほどの、派手なセットで知られるフェリーニですが、
カーニバルの中にあるものはいつも、素朴で純粋な人間愛です。

すべての芸術とは自叙伝的なものだ。つまり、真珠は貝の自叙伝なのだ。

今回上映する作品は, ネアリアリスモ的な感覚が息づく初期の秀作『青春群像』と、
フェリーニの名を揺るがないものにした代表作『8 1/2』
一見対照的に見えるこの2本は、“自伝的作品”という意外な共通項をもっています。
生まれ故郷リミニで悶々と青春を送る若者たちと、
創作活動や対人関係に疲れ果てた映画監督。
どちらもかつての、そして現在のフェリーニの姿です。
青春時代の曖昧さ、不確かさ。
喧騒の後にやってくるどうしようもない脱力感。
過去の思い出に留まりたい気持ちと、
ここではないどこかに逃げ出したい衝動。
誰もが知っている、でもどこか遠くに置いてきたような感覚を、
フェリーニの映画は鮮明に呼び起こさせます。

人生は祭りだ。一緒に楽しもう。

人生とは一瞬の夢のようなもの、というのがフェリーニの考え方。
生きていくのは煩わしく、ややこしいことばかりだけど、
だからこそ、どうせなら楽しんだほうがいい。
いやはや、なんて素敵な考え方でしょう。
現在も過去も未来もごちゃまぜにして、
にぎやかで騒がしく、それでいて哀愁に満ちたフェリーニの映画。
その溢れるヒューマニズムが、いつの時代も、私たちを虜にする魅力なのです。
さぁ、あなたもそろそろフェリーニ・マジックにかかってみませんか。
きっと切なさと喜びの入り混じった、びっくりするほどの感動が待っているはずです。

(パズー)


青春群像
I VITELLONI
(1953年 イタリア・フランス 106分 スタンダード/MONO) 2012年6月9日から6月15日まで上映 ■監督・脚本 フェデリコ・フェリーニ
■脚本 エンニオ・フライアーノ/トゥリオ・ピネッリ
■撮影 オテッロ・マルテッリ/ルチアーノ・トラザッティ/カルロ・カルリーニ
■音楽 ニーノ・ロータ

■出演 フランコ・ファブリッツィ/アルベルト・ソルディ/レオノーラ・ルフォ/リカルド・フェリーニ/ジャン・ブロシャール

■ヴェネチア国際映画祭 サン・マルコ銀獅子賞受賞

★本編上映中、一部、お見苦しい箇所がございます。ご了承の上、ご鑑賞いただきますようお願いいたします。

手に入ったばかりの栄光は全て夢と消える
フェリーニが故郷を舞台に描く青春の真実

美人コンテストで優勝したサンドラは妊娠していることがわかった。町を出ようとしていた相手の男ファウストは、父親にそのことを知られて結婚させられた。母と姉と三人暮らしのアルベルト、作家志望のレオポルド、リカルドそれにサンドラの弟モラルドなど、ファウストの仲間たちは相変わらず遅くまで遊び歩いて時間をつぶしていた。

皆で海岸へ出かけた時、アルベルトは姉が縁を切ったはずの妻子ある男と会っているのに行き会った。そのことを姉に問い詰めたが、姉は心を閉ざすばかり。ファウストは義父の紹介で骨董品店に勤め始めるが、妻と出かけた映画館で他の女性に目をつけ妻を一人置き去りにしたり、女好きは相変わらず。町にカーニヴァルがやってきた夜、ファウストは店の主人ジュリアの見違えるような姿に惹かれる。そして夜明け頃、ダンスホールから戻ってきたアルベルトは、意を決した姉が男の待つ車へ乗りこんでいくのを見たのだった――。

誰の胸にもある
絶望の滲む青春時代の郷愁――
巨匠フェリーニ初期の自伝的作品

30歳に手がとどこうかというのにいまだに無為徒食、モラトリアムを地でいくような五人の青年たちの姿を描いたフェリーニの初期の作品。登場する青年たちは皆、元気にあふれているものの人生の目的もはっきりせず、ただやたらにエネルギーを浪費するだけ。そんな生活ぶり(原題は<のらくら者たち>)に、そこはかとない不満や不安を秘めながら、ただ美しいばかりの青春の姿とは一味違った青春の真実をにじませる。

舞台となっている都市がフェリーニの故郷リミニをモデルにしていること、フェリーニの実弟リカルド・フェリーニがリカルド役で登場していることなどもあり、自他ともに認めるフェリーニの自伝的映画である。青春の郷愁をくすぐる感傷的な佳作。


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8 1/2【完全修復ニュープリント版】
Otto w Mezzo
(1963年 イタリア 138分 ビスタ/MONO) 2012年6月9日から6月15日まで上映 ■監督・脚本 フェデリコ・フェリーニ
■製作 アンジェロ・リッツォーリ
■脚本 トゥリオ・ピネッリ/エンニオ・フライアーノ/ブルネッロ・ロンディ
■撮影 ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ
■音楽 ニーノ・ロータ

■出演 マルチェロ・マストロヤンニ/アヌーク・エーメ/クラウディア・カルディナーレ/サンドラ・ミーロ/バーバラ・スティール

■アカデミー賞外国語映画賞・衣装デザイン賞(白黒)/NY批評家協会賞外国映画賞受賞

★本編上映中、お見苦しい箇所・お聞き苦しい箇所がございます。ご了承の上、ご鑑賞いただきますようお願いいたします。

人生は祭りだ!
巨匠フェリーニの最高傑作、時を超えてふたたび

pic映画監督のグイド・アンセルミは温泉治療のためホテルに滞在している。彼はそこで新作の準備をしながら、過去の思い出に迷い込み、不安やヴィジョンに囚われ様々な想像の世界へと降りて行き、また現実の世界にたち帰って来る。グイドは湯治場で気持ちを落ち着かせようとするが、情婦がやってきて身辺をかき乱した上に、妻も来るという知らせをうけて仕事は一向に進まない。

picやがて業を煮やしたプロデューサーたちがやって来る。彼らの前ではグイドも一介の使用人にすぎず、何ということもなく彼らの意向に押し切られていき、不安はさらに募る。グイドが創作に行き詰り、ついに新作の中止を決意すると、超能力を持つ魔術師が「待ってくれ」とあらわれて――。

天才が天衣無縫につくった作品が、
絵画でもなく、彫刻でもなく、音楽でもなく、
詩でもなければ物語でもなく、
たまたま映画だった奇蹟的な傑作。

pic『道』『カリビアの夜』のリアリズムの世界から、夢と現実が溶け合う幻想的な世界へ。フェリーニの大きな飛躍となった記念碑的作品である。奇妙な題名(はっかにぶんのいち、と読む)は、これまでのフェリーニの作品数が短編を半分に数えて8と1/2になる意味。それだけに自伝的要素が濃い。

映画作りの困難、妻と愛人との板ばさみといったなまなましい現実と、子供時代の記憶、カーニヴァルやサーカスのようににぎやかな夢の世界が波のように打ち寄せる。温泉場に夢のようにあらわれる美神クラウディア・カルディナーレや、少年時代の思い出のなかの太った女サラギーナに、フェリーニの女性讃歌があらわれている。猥雑な大人の現実を生きながら、フェリーニには、それだからこそイノセンスへの強い思いがあった。失われた無垢へのフェリーニの強い想いが、現代人の心をいまも揺さぶる。映画監督のみならず、世界中のあらゆるジャンルのクリエイターたちから敬愛され、今もなお多大な影響を与え続ける巨匠、フェデリコ・フェリーニの最高傑作!



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