甘い生活
LA DOLCE VITA
(1960年 イタリア・フランス 173分)
2008年1月19日から1月25日まで上映 ■監督・原案・脚本 フェデリコ・フェリーニ
■脚本 エンニオ・フライアーノ/トゥリオ・ピネッリ/ブルネット・ロンディ
■音楽 ニーノ・ロータ

■出演 マルチェロ・マストロヤンニ/アニタ・エクバーグ/アヌーク・エーメ/バーバラ・スティール/ナディア・グレイ/ラウラ・ベッティ

手の届くはずのなかった月に足あとを残し、遺伝子の塩基配列さえ解析してしまう飛躍的な技術の進歩。我々は、未知を既知に、不可能を可能にしたいという貪欲な好奇心を持ち、それに叶うだけの技術を身につけてきた。可能性を限りなく広げ、進化を続けているかのように思える人類。

しかしその一方で、遥か紀元前より盛衰を繰り返し、豊な生活を得るたびに、デカダンに陥ってきた歴史もある。私たちの中に脈々と流れ、変わることのない人間の本質。その本質を曇りなき眼で見つめ、描き出したのがフェデリコ・フェリーニ、その人である。

pic作家志望の夢破れ、しがないゴシップ記者へと落ちぶれたマルチェロ。頽廃と空虚に包まれたローマの毒気に犯され、彼は自分を見失ってしまった。 豪華なナイトクラブで富豪の娘と出会えば、安ホテルで一夜を明かし、ハリウッドのグラマー女優を取材すれば、野外で狂騒し、トレビの泉で戯れる。倦怠、狂宴、不毛な愛・・・

「生活を変えたい。何もかも。ぼくは惰性で生きている。何もかも失くしそうだ。」

マルチェロは喘ぐ。だが、もはや彼には絶望的な現実から逃れる術はない・・・

1940年代初頭に確固たる地位を得たネオレアリズモ。カンヌ映画祭グランプリを受賞し、当時イタリアで大ヒットを記録した「甘い生活」は、その潮流の集大成とも言える作品であった。

pic公開からもう半世紀近くになる。だが、この作品が単なる異国の昔語りへと成り下がることはない。そこに描かれる人間の本質が普遍的であるからだ。

21世紀、日本。
高度経済成長の末、私たちが直面している現実は、フェリーニが描いた頽廃によく似た空気を帯びている。

──お前正直な話率直に言って日本の現状をどう思う?俺はこれは憂うべき状況とは全然考えないけれども、かといって素晴らしいとは絶対思わねえな俺は。──(エレファントカシマシ「ガストロンジャー」より)

私たちはこの「甘い生活」から何を感じ、何を考えるべきなのだろうか。

(タカ)



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マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶
MARCELLO, UNA VITA DOLCHE
(2006年 イタリア 102分)
pic 2008年1月19日から1月25日まで上映 ■監督 マリオ・カナーレ/アンナローザ・モッリ
■ナレーション セルジオ・カステリット

■出演 アルマンド・トロヴァヨーリ/バルバラ・マストロヤンンイ/キアラ・マストロヤンニ/クラウディア・カルディナーレ/ソフィア・ローレン/ルキノ・ヴィスコンティ/フェデリコ・フェリーニ/エットレ・スコーラ/フィリップ・ノワレ/アヌーク・エーメ/ジュゼッペ・トルナトーレ/マルコ・ベロッキオ

ジュゼッペ・トルナトーレ、フェデリコ・フェリーニ、ルキーノ・ヴィスコンティ、ソフィア・ローレン……。この豪華絢爛な顔ぶれ!彼らはこのドキュメンタリー映画の登場人物である。そして彼らは語る。「俳優 マルチェロ・マストロヤンニ」について。

picフェリーニの『甘い生活』で演じた、デカダンな生活に侵されていくジャーナリスト志望の若者役で人気を博し、その後、テオ・アンゲロプロス、ミケランジェロ・アントニオーニ、ロバート・アルトマン、マノエル・デ・オリヴェイラなど、イタリアにとどまらず世界の巨匠たちの作品に次々と出演したマルチェロ。生前の出演作は160本にのぼり、スランプとも低迷期とも無縁な、非常に稀有な俳優なのだ。

だが、さまざまな関係者のインタビューで見える、彼の姿は──。

朝は寝坊する。台詞を全然憶えてこない怠け者。撮影中、セットに電話ボックスを作らせ、カットがかかるとすぐに意中の女性に電話していた。女性対して都合のいい嘘をつく。

これだけ聞くと、何だかただのダメ男みたいな気がしてくる。だが、そんな一見身勝手な彼の振舞いを悪く言うものは不思議といない。マルチェロの行為は、見返りを求めない、純粋な気持ちが成せるものだからだ。そう、彼自身“子ども”そのものなのだ。

マルチェロは1992年の来日の際、『徹子の部屋』にゲスト出演している。司会の黒柳徹子は、これまで登場した約8000人のゲストの中で「一番素敵な男性はマストロヤンニ」と言っていたらしい。スターであるのに気負わない、周りの人にスターであると思わせない、ピュアで粋で自由な彼の姿は徹子さんをも虜にしたのだった。

マルチェロ・マストロヤンニ。
若い世代には、初めてこの名前を聞く人も多いのかも知れない。往来のファンも、彼の映画を観たことの無い人も、なぜあんなにも彼が愛され、そして今も愛され続けているのか、スクリーンで確認すべし!!

(はま)


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