<チャーリー・カウフマン>
1958年ニューヨーク生まれ。90年代からテレビのコメディ・シリーズのための脚本を書きはじめ、高い評価を得る。
99年にスパイク・ジョーンズ監督作『マルコヴィッチの穴』で初の長編映画の脚本を執筆。アカデミー賞脚本賞にノミネートされた他、英国アカデミー賞脚本賞、ロサンジェルス映画批評家協会賞脚本賞など各国の賞に輝き、一躍注目を浴びる。また、同じくスパイク・ジョーンズ監督作の『アダプテーション』では、ゴールデングローブ賞脚本賞とアカデミー賞脚色賞ノミネート。ミシェル・ゴンドリー監督作の『エターナル・サンシャイン』でついにアカデミー賞脚本賞を受賞、さらにゴールデン・グローブ賞脚本賞にノミネートされた。最新作『脳内ニューヨーク』で初めて監督を務め、見事数々の賞に輝いた。
・『マルコヴィッチの穴』製作総指揮・脚本('99)
・『ヒューマンネイチュア』製作・脚本('01)
・『コンフェッション』脚本('02)
・『アダプテーション』製作総指揮・脚本('02)
・『エターナル・サンシャイン』製作総指揮脚本('04)
・『脳内ニューヨーク』監督・脚本・製作('08)
<スパイク・ジョーンズ>
1969年メリーランド州生まれ。高校卒業後ロサンジェルスに移り、スケートボードの写真とビデオ撮影を始める。その後、ビースティ・ボーイズ、ビョークなどのミュージック・ビデオを手掛け、新鮮な映像で注目される。彼のビデオは何度もMTVビデオ・ミュージック・アワードにノミネートされ、3度の最優秀ディレクター賞を受賞している。
99年、チャーリー・カウフマン脚本の『マルコヴィッチの穴』で映画監督デビュー。アカデミー賞監督賞ノミネートをはじめ、MTVアワード・アワード新人監督賞、ニューヨーク映画批評家協会新人監督賞など数々の賞に輝く。2作目である『アダプテーション』は、ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞。また、映画やミュージック・ビデオの分野にとどまらず、TVの『ジャッカス』シリーズの脚本・製作に携わり、また俳優としても活躍するなど、常に世界に驚きを与え続けている新進気鋭のフィルムメーカーである。
・『マルコヴィッチの穴』監督('99)
・『スリー・キングス』出演('99)
・『ヒューマン・ネイチュア』製作('01)
・『アダプテーション』監督('02)
・『ジャッカス・ザ・ムービーシリーズ』製作総指揮('02/'06)
・『脳内ニューヨーク』製作('08)
・『かいじゅうたちのいるところ』監督('09)
『マルコヴィッチの穴』『ヒューマンネイチュア』『アダプテーション』を生み出した黄金コンビ、チャーリー・カウフマン×スパイク・ジョーンズ。共に『マルコヴィッチの穴』で衝撃的な映画デビューを果たして以来、世界中に驚きや喜び、混乱や希望を与え続けてきた。2人の才能が出会った時、それは私たちが新しい発見をする時でもある。最新作『脳内ニューヨーク』で我々が対面するのは、「自分の理想のニューヨークを本物のニューヨークの中にもう一つ作る男」という、我々の想像を遥かに超えたイマジネーションの世界だった。
主人公のケイデンに次々と降りかかる災難…絶望、傷心、うまくいかないセックス、恋愛、病気、そして迫りくる“死”。人生の崩壊と対面した孤独な男の姿を、丁寧に、愛情深く、またユーモアをもって描かれた本作は、時に“奇跡”と称されるほどの高評を博した。これはもともと、スパイク・ジョーンズがホラー映画の脚本を依頼したのがきっかけで執筆されたもの。脚本が完成した2年後、『かいじゅうたちのいるところ』の撮影準備に入っていたジョーンズに代わり、いつかは自分の作品を監督してみたいと考えていたカウフマンがメガホンを取った。こうして遂にカウフマンのオリジナル脚本による監督デビューが実現し、更にジョーンズがプロデューサーを務めたことで、全世界待望の黄金コンビが再び結成されたのだ。
一方のスパイク・ジョーンズが監督した『かいじゅうたちのいるところ』は、同名の世界的に有名な絵本が原作となっている。しかしながら、映画は原作に対する忠実なオマージュではなく、原作の輝きと精神を受け継いだオリジナルストーリー。「“子供向け”の映画を作ろうとしたわけじゃない。“子供時代”を描いた映画を作ろうとしたんだ」とジョーンズが語るように、この映画は「かつて子供だった大人たち」にとって、自らの幼少時代を辿り、今は奥に潜む(だが確かに存在する)繊細で本能的な感情の琴線に触れる機会となるはずだ。予測できず、コントロール不能で、訳がわからなかったりする感情。悲しい、嬉しい、楽しい、好き、嫌い、寂しい…心に正直な“ワイルド・シングス(かいじゅうたち)”は、どんな年齢にも共通し、私たちの中に住み着いているものだからだ。そんなかいじゅうたちを愛情たっぷりに描いた本作に、原作者のモーリス・センダックも「この映画が大好き」と手放しで絶賛をおくった。
「人生の崩壊」を迎えた男と「かいじゅうたち(ワイルド・シングス)」に出会った少年。様相は違えども、きっと全ての人に共通する人生の冒険が、この2本には詰まっている。自分自身の“今までとこれから”に想いをめぐらせ、ちょっぴり人生が愛おしくなる映画たち。新しい発見を、是非、あなたにも。
(2008年 アメリカ 124分 シネスコ/SRD)
2010年6月12日から6月18日まで上映
■監督・脚本 チャーリー・カウフマン
■製作 スパイク・ジョーンズ
■視覚効果監修 マーク・ラッセル
■撮影 フレデリック・エルムズ
■音楽 ジョン・ブライオン
■出演 フィリップ・シーモア・ホフマン/サマンサ・モートン/ ミシェル・ウィリアムズ/キャサリン・キーナー/エミリー・ワトソン/ダイアン・ウィースト/ジェニファー・ジェイソン・リー/ロビン・ワイガート/セイディー・ゴールドスタイン/ホープ・デイヴィス/トム・ヌーナン
■LA批評家協会賞美術賞/インディペンデント・スピリット賞新人作品賞・ ロバート・アルトマン賞(アンサンブル演技作品賞) ほか多数
人生失敗続きの劇作家、ケイデン。ある日突然、愛する妻が娘を連れて家を出て行ってしまい、彼は絶望のどん底に突き落とされる。そんな彼に、マッカーサー・フェロー賞(別名“天才賞”)を受賞した知らせが届く。賞金を手に入れた彼は、その全てを注ぎ込み、前代未聞のプロジェクトを実行する。それは、自分の頭の中にあるニューヨークを、本物のニューヨークの中に、もう一つ作ってしまうことだった。
この壮大なプロジェクトに惹かれ、次々と俳優、スタッフたちが集結した。超巨大な倉庫の中に作られていく、ケイデンの<脳内ニューヨーク>。彼は俳優たちに、“舞台のニューヨークに自分の人生を構築し、再現する”ように指示を出す。そうして毎日毎日稽古に打ち込むケイデンだったが、どうしても打ち明けられないことがあった。それは、この舞台はいつになったら上演できるのかということ。稽古を始めてから、すでに17年もの月日が流れてしまっていた…。
全世界が熱狂した驚嘆と感動のライフ・エンタテインメント!
原題にある“SYNECDOCHE(シネクドキ)”とは、日本語で言うと「提喩(ていゆ)」という意味にあたる。提喩とは、全体が一部を表し、また一部が全体を表す関係を言い換えること。例えば聖書にある言葉「人はパンのみに生くるにあらず」というのは、魚や野菜も食べないと生きられないという意味ではもちろんなく、「パン」が食糧全体を言い表している。“シネクドキ・ニューヨーク”というタイトルが指すのは、現実と脳内のニューヨークが奇妙に混ざり合い、影響しあい、区別がつかなくなる中で、苦悩と迷走の日々を送ったケイデンの人生そのものなのかもしれない。そんなケイデンが迎える結末とは、一体なんなのだろうか。人生に絶望した男の途方もない挑戦を描いた、カウフマン作品最高傑作の誕生!
(2009年 アメリカ 101分 シネスコ/SRD)
2010年6月12日から6月18日まで上映
■監督・脚本 スパイク・ジョーンズ
■脚本 デイヴ・エッガース
■原作 モーリス・センダック『かいじゅうたちのいるところ』(冨山房刊)
■製作 トム・ハンクス
■撮影 ランス・アコード
■音楽 カレン・O/ カーター・バーウェル
■出演 マックス・レコーズ/キャサリン・キーナー/マーク・ラファロ
8歳になるマックスは、いたずら好きでやんちゃ、でも本当は寂しがり屋で繊細な心の持ち主だ。このごろ彼は、どんどん不満がたまってきていた。お姉ちゃんは自分をのけ者扱い。離婚したママも恋人を作り、マックスが話しかけても上の空。とうとう不満が爆発したマックスは、ある夜ママに噛みつき、そのまま家を飛び出した。見知らぬ浜辺まで走ってきたマックスは、そこにあった船で一人海へと漕ぎ出し、ある島に辿り着いた。
島の奥へと入って行くと、そこにいたのは…見たこともない大きな体のかいじゅうたち!突然現れた見知らぬ子供にかいじゅうたちは驚き、マックスを「食べる」と言い出した。マックスは咄嗟に「僕は王様だ」と口からでまかせを言う。すると、かいじゅうたちは王様の登場を喜び、マックスに王冠をかぶせた。マックスの最初の命令、それは「かいじゅうおどりをはじめよう!」…こんなワクワク、他に知らない。かいじゅうたちとマックスの、摩訶不思議な冒険が始まる!
さあ、かいじゅうおどりをはじめよう!
原作『かいじゅうたちのいるところ』は、世界で一番有名な絵本のひとつといっても過言ではない。数々の賞に輝くとともに、1963年の出版から今もなおベストセラーであり続ける怪物絵本だ。それだけに、世代を越えたファンは数知れない。製作を務めるトム・ハンクスもそのひとり。ハンクスが映画製作に乗り出した際、真っ先に取り組んだプロジェクトのひとつがこの絵本の映画化であった。そこに決定的なビジョンを与えたのが、これまた熱烈な原作ファンであった監督スパイク・ジョーンズだったのだ。更に、ロックバンド“YEAH YEAH YEAHS”のボーカル、カレン・Oと、『マルコヴィッチの穴』のカーター・バーウェルが音楽を担当。かいじゅうたちとマックスの心の旅にぴったりと寄り添う感情豊かな音楽が、映画全体に輝きを吹き込んだ。
(ザジ)