1971年生まれ。千葉県出身、仙台市在住。96年「悪党たちが目にしみる」が、サントリーミステリー大賞佳作入選。00年「オーデュボンの祈り」が第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞。以降、「ラッシュライフ」(02)、「陽気なギャングが地球を回す」(03)、「重力ピエロ」(03)、「アヒルと鴨のコインロッカー」(03)、「チルドレン」(04)、「グラスホッパー」(04)、「終末のフール」(06)、「フィッシュストーリー」(07)、「モダンタイムス」(08)と話題作を発表し続けている。「死神の精度」(05)で第57回日本推理作家協会賞、「ゴールデンスランバー」(08)にて第5回本屋大賞と第21回山本周五郎賞を受賞した。
【映画化された作品】
・『陽気なギャングが地球を回す』(06年)
・『アヒルと鴨のコインロッカー』(07年)
・『死神の精度』(08年)
・『フィッシュストーリー』(09年)
・『重力ピエロ』(09年)
・『ラッシュライフ』(09年)
・『ゴールデンスランバー』(10年)
1968年、長崎県生まれ。97年、「最後の息子」で第84回文学界新人賞を受賞し、小説家デビュー。同作で第117回芥川賞候補となる。02年、「パレード」で第15回山本周五郎賞を受賞し、同年には「パーク・ライフ」で第127回芥川賞を受賞。殺人事件を題材にした長編「悪人」では、第34回大佛次郎賞・第61回毎日出版社文化賞を受賞している。「東京湾景」、「7月24日通り」、「春、バーニーズで」など、映像化される作品が多い。韓国など海外でも人気が高く、新作の「横道世之介」は日韓同時発売となった。
【映像化された作品】
・『東京湾景』(04年、『東京湾景 〜Destiny of Love』としてドラマ化)
・『春、バーニーズで』 (06年、ドラマ化)
・『7月24日通り』 (06年、『7月24日通りのクリスマス』として映画化)
・『water』 (07年、自ら映画化し、監督デビューを果たした)
・『パレード』 (10年)
・『女たちは二度遊ぶ』 (10年、BeeTV放送)
・『悪人』 (10年秋公開予定)
夏の始まりは、外の景色がワントーン明るくクリアで、 いいことが起こりそうな予感がしてわくわくしてしまう。 私はそんなこの時期が一番好きです。
今の時代は、インターネットで調べ物が簡単にできるようになりましたが、 昔は情報収集するために外出をしていましたよね。 図書館に足を運んだり、街を何気なく歩いて、感性を磨いたり…。 家の中のパソコンから離れて、ふらっと映画でも観に行きませんか? 新しい発見や、日常からの開放…。 自分にとって何かプラスになることがあるかもしれません。
今週の上映作品、『パレード』『ゴールデンスランバー』は、 どちらもベストセラー小説から生まれたものです。
『パレード』の著者、吉田修一は1997年『最後の息子』で小説家デビュー。 『パレード』で第15回山本周五郎賞を、『パーク・ライフ』で127回芥川賞を受賞しました。 テレビドラマ化、映画化された作品も多く、今秋には映画『悪人』の公開が決定しています。 対する『ゴールデンスランバー』の著者、伊坂幸太郎は、ミステリー界に旋風を巻き起こし、 発表作品が次々と映画化されていく気鋭の人気作家。 去年、早稲田松竹でも『フィッシュストーリー』『重力ピエロ』を上映しご好評頂いたのは、まだ記憶に新しいところです。
どちらの作品も事件が絡んだサスペンスでありながら、内容は全く違うもの。 それぞれの思ってもみなかった展開や結末、そして個性のあるキャラクターに注目。 犯人は誰なのか、次の展開はどうなるのか、この人にはどんな秘密があるのか…。 最後まで飽きのこない、のめり込むことができる作品です。
『パレード』に登場する若者たちは、お互い深くは触れ合わず無関心。 でもなんとなく居心地がいい。それもひとつの仲間の形です。 そういう間柄で自由に生活している世代が懐かしく、うらやましくもあります。 見方を変えれば、こういう表面上の付き合いは、オフィスでの人間関係に似ているのかもしれません。 対して、『ゴールデンスランバー』の仲間の形は、 『パレード』の「表面上の付き合い」とは対照的で、 学生時代の友人や、昔の仕事仲間、 そして初めて出会う人たちと「助け合う」という 人情味あふれる形で描かれています。
人との関係は、目に見えなくても知らない間に築かれているもの。 改めて振り返ると、自分はどれだけ周りの人や友人に支えられているかを これらの映画は気付かせてくれます。 日々の生活の中では、「何か満たされないな」と思っていても、 本当は自分の周りには沢山の愛情があることに気付けていなかったり、 忘れたりしてしまっているのかもしれません。 私はこの2つの作品を観て、昔の友達や仕事仲間に会いたい気持ちになりました。 学生の頃いつも一緒にいた友人や 仕事でピンチになった時、助けてくれた人たちに。
事件に巻き込まれながら、それぞれの人間関係が重要なキーになる2作品。是非、みなさまも仲間と一緒にご覧になってはいかがでしょうか。
パレード
(2010年 日本 115分 ビスタ/SR)
2010年6月26日から7月2日まで上映
■監督・脚本 行定勲
■原作 吉田修一『パレード』
■撮影 福本淳
■音楽 朝本浩文
■出演 藤原竜也/香里奈/貫地谷しほり/林遣都/小出恵介
「嫌なら出てくしかなくて、居たければ笑っていればいい」――都内のマンションに暮らす男女4人の若者達。几帳面で健康オタクの会社員・直輝、自称イラストレーターの未来、無職で恋愛に依存している琴美、先輩の彼女に恋をしている大学生の良介。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼のサトルが加わり、町では女性を狙った暴行事件が連続して起こり始めた。穏やかだった日常は歪み始め、やがて思いもよらない結末が彼らに訪れる…。
原作は、第15回山本周五郎賞受賞作である、吉田修一の青春群青劇『パレード』。これまでも原作ものを多く手掛けて来た行定監督だが、自ら映画化を企画し、長年温めてきた本作は別格なようだ。単独で脚本を執筆したのは今回が初めてだという監督にとって、困難にぶつかった時はその都度、戻るべき場所が原作だったという。「余計なことを描いていないのに、内在している気持ちや感情がひしひしと伝わってくる」という原作が内在するものを実感すればするほど、ありきたりのサスペンスや安易な救いを投げかけるものからは遠ざかった。そして、ラストシーンもクラインクイン直前に変更された。
主演、直輝を演じるのは、『カイジ 人生逆転ゲーム』のヒットも記憶に新しく、映画・舞台を中心に活躍し、本格的実力派俳優として高い評価を得ている藤原竜也。未来には、トップモデルであり、多数のドラマにも出演している香里奈。琴美役に、07年NHK連続テレビ小説『ちりとてちん』のヒロインを始め、映画『ジェネラル・ルージュの凱旋』の好演が印象的な貫地谷しほり。さらに映画『バッテリー』でフレッシュにデビューした平成生まれの新風・林遣都が男娼・サトルという難役に挑み、良介役には幅広い演技力で定評のある小出恵介が演じた。「今回はキャスティングそのものが演出。確固たる5人だった」と監督が語る、旬の才能にも要注目!
ゴールデンスランバー
(2009年 日本 139分 ビスタ/SRD)
2010年6月26日から7月2日まで上映
■監督・脚本 中村義洋
■脚本 林民夫/鈴木謙一
■原作 伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』
■撮影 小松高志
■音楽 斉藤和義
■出演 堺雅人/竹内結子/吉岡秀隆/劇団ひとり/香川照之/柄本明/濱田岳/渋川清彦/ベンガル/大森南朋/貫地谷しほり/相武紗季
野党初の首相となった金田が仙台市内でパレードを行うその日、数年ぶりに大学時代の友人・森田に呼び出された青柳は、森田から「お前、オズワルドにされるぞ」「逃げろ。とにかく逃げて、生きろ」という忠告を受ける。爆発音がしたかと思うと、警察官たちが2人の乗っている車に駆け寄り、躊躇なく発砲。青柳は、反射的に地面を蹴り、仙台の街中へと走り出す。
金田首相は、爆弾をしかけられたラジコンヘリによって暗殺された。世間では、青柳が現場近くにいたという目撃情報や、爆弾に使われたラジコンヘリを青柳が専門店で購入する姿を防犯カメラで捉えた映像などが公開され、青柳は首相暗殺犯へ仕立て上げられていく。しかし、どれも身に覚えがない。青柳は、自分が知らないところで、いつの間にか大きな力が働いていたことを知るのだった。
原作は若手ナンバーワンのミステリー作家、伊坂幸太郎。次々と映画化される伊坂作品の中でもスケールの大きい本作を、監督するのは中村義洋。過去の伊坂×中村作品である『アヒルと鴨のコインロッカー』『フィッシュ・ストーリー』の完成度の高さ、そこで生まれた2人の信頼関係から映画化が実現した。宮城県や仙台市も協力を惜しまず、撮影は全て仙台でのオールロケ。首相が暗殺される凱旋パレード、市内の地下に張り巡らされた雨水管内を青柳が走り回るシーン、仙台名物の花火大会なども全て現地でのロケによるものだ。
主人公の青柳を演じるのは、『南極料理人』『クヒオ大佐』と主演作が続く堺雅人。『ジャージの二人』『ジェネラル・ルージュの凱旋』を通して築き上げた中村監督との信頼関係は厚い。一方、青柳の元恋人役を演じるのは、『チーム・バチスタの栄光』『ジェネラル・ルージュの凱旋』の田口役を中村監督と作り上げた竹内結子。『ジェネラル〜』トリオが伊坂作品にどう挑むのかも大きな見どころだ。