人生のゴールは人それぞれちがう。
生きていれば、立ち止まってモヤモヤすることは必ずあるだろう。
だから、心のモヤモヤは次のステージにすすむ為の準備期間。
そう思えば気持ちも幾分かラクになる。
今週上映する「色即ぜねれいしょん」と「女の子ものがたり」は、
モヤモヤ真っ最中の2人が主人公となっている。
「このままじゃダメだ。」
心の片隅でそう思いながらも、ぬるま湯のような生活から抜け出す力もいまひとつ沸いてこない。
でも変わりたい…でも…でも…でも…
なかなか実行できない自分にまた落ち込んだりと、まさに負のループ。
一度そこに迷い込んでしまったら、ひとりで抜け出すのはなかなか難しい。
しかし周りを見渡してみれば、家族、友人、恋人、先輩、後輩、同僚、
そして道行く赤の他人まで、そこにはたくさんの人がいる。
いつ誰が自分の背中を押してくれるかなんて分からない。
みうらじゅんが掲げた映画のテーマである“色即是空”は、まさにそれを象徴した仏教の教えだ。
『この世のすべてのものは、お互いにつながりを持っているからこの世にある』
つまり、他との関係が縁となって生起しているということを忘れてはいけないのだ。
何を正解とするか、何を幸せと感じるかは、10人いたら10人ちがうだろう。
だから、2人の主人公が見つけた道が正しいかどうかはわからない。
ただ、友達と共有した時間や、新しい出会い、そこで感じた思い、これだけは紛れもない真実。
そこから本当の自分を導き出せたとき、モヤモヤはあっという間に晴れわたり、
人生のゴールへまた一歩近づけるのかもしれない。
女の子ものがたり
(2009年 日本 110分 ビスタ・SR)
2009年12月12日から12月18日まで上映
■監督・脚本 森岡利行
■原作 西原理恵子(「女の子ものがたり」)
■音楽 おおはた雄一
■出演 深津絵里/大後寿々花/福士誠治/風吹ジュン/波瑠/高山侑子/森迫永依/板尾創路/奥貫薫/三吉彩花/佐藤初
■オフィシャルサイト http://onnanoko-story.jp/index.html)
スランプに陥った漫画家・高原菜都美、36才。部屋は散らかり放題、昼間からビールを飲み、執筆は進まず昼寝の日々。新米編集者の財前からは「先生、友だちいないでしょう?」とキツい一言が飛ぶ。その言葉で脳裏に浮かんできたのは、故郷・愛媛で過ごした少女時代。
海と山の見える小さな町で出会ったみさちゃんときいちゃん。なつみが拾った黒猫がきっかけで友だちになった3人は、それから毎日ずっと一緒にいた。
少女から大人に成長していく未完成でいとおしいあの頃、情けないことも 楽しくて輝いていたことも、自分の全てを受け入れてくれた大切な友だち。そして人生最大のケンカをした友だち。
あの頃から今につながっている一本の道。彼女たちと過ごした日々が、今も自分を励ましてくれることに気づいたとき、菜都美の心にある変化が起き始める。
原作は「毎日かあさん」がテレビアニメ化、「いけちゃんとぼく」が実写映画化されるなど、その作品群が次々と映像化され、サイバライヤーとなる2009年、最も注目を集めている人気漫画家・西原理恵子の自伝的ベストセラー漫画『女の子ものがたり』。
待望の映画版となる本作では、西原の子供時代を髣髴とさせるエピソードが次々と登場。西原作品ならではのカラフルな「色」にもこだわっており、なつみは黄色、みさは青、きみこはピンクをイメージカラーとしている。その3色が作品の随所にさりげなく散りばめられているので、そちらにもぜひ注目していただきたい。
決して裕福とはいえない暮らしの中で、明るくたくましく生き抜く女の子たちの姿は“自分だけのシアワセ”の見つけ方を教えてくれ、ちょっぴり行き詰ったあなたに元気を与えてくれるだろう。
色即ぜねれいしょん
(2009年 日本 114分 ビスタ・SR)
2009年12月12日から12月18日まで上映
■監督 田口トモロヲ
■脚本 向井康介
■原作 みうらじゅん(『色即ぜねれいしょん』)
■音楽 大友良英
■出演 渡辺大知/峯田和伸/岸田繁/堀ちえみ/リリー・フランキー/臼田あさ美/石橋杏奈/森岡龍/森田直幸/大杉蓮/宮藤官九郎/木村祐一/塩見三省
■オフィシャルサイト http://shikisoku.jp/indexp.html
安田講堂が陥落し、学生運動も下火になった1974年、京都。乾純は、仏教系男子校に通う高校一年生。ヤンキーたち体育会系が幅を利かせてる学校で、文化系の純は肩身が狭い。
ボブ・ディランに憧れてロックな生き方を目指しているが、家では優しすぎる両親にかわいがられ、片思いの女子にすら告白できず、何かに反抗する勇気もない。そんなロックとはほど遠い日々を悶々と過ごしていた。あの夏休みまでは…。
「行かへん?旅」
ある日、同じ文化系男子の伊部と池山から隠岐島の旅に誘われる。彼らによると、隠岐島のユースホステルにはフリーセックス主義者が集まるらしく、そこに行けば“モッテモテ”になるという。ギターケース片手に下心まるだしで出発した3人。その島での出会いによって“純”の世界は少しずつ変わり始める。
原作は、みうらじゅんの自伝的な青春小説『色即ぜねれいしょん』。“青春ノイローゼ”のモテない少年の成長物語を、独特のユーモアと温かい眼差しで描いた青春映画の金字塔だ。
そして、この傑作を完全映画化したのは、みうらじゅんの盟友・田口トモロヲ。若者から圧倒的な共感を集めた『アイデン&ティティ』に続く最強タッグが復活した!
『色即ぜねれいしょん』は今流行りの青春映画とはひと味違う。いかつい男子が猛烈にスポーツに打ち込む体育系でもなく、ケンカに明け暮れる男子たちを描いたヤンキー系でもない。普段まったく脚光を浴びることのない平凡な文化系男子の悶々とした日々が、フィルムに繊細に刻まれた作品だ。
時代や形は違えど、誰もが青春時代に経験したであろう悩みで悶々とする主人公の姿は、情けなくて、幼くて、とてつもなく恥ずかしくて、見ていられない。思わず、自らの青春時代の記憶を蘇らせ、笑いの渦に巻き込まれていく。そして、劣等感に苛まされたり、浅はかな行動でドジを踏んだり、不器用ながらも一歩ずつ成長していく主人公の中に自分自身を発見するだろう。
(ぐり)