監督、ロイ・アンダーソン。1943年、スウェーデン、エーテボリ生まれ。
長編デビュー作『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』(1969)は
1970年ベルリン国際映画祭主要4冠受賞など、世界的な成功をおさめ、以来コマーシャルの世界でも活躍している
今週は最新作『愛おしき隣人』と、リバイバルされた『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』を二本立てで上映します。
スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー
A SWEDISH LOVE STORY
(1969年 スウェーデン 114分)
2008年11月15日から11月21日まで上映
■監督・脚本 ロイ・アンダーソン
■出演 アン・ソフィ・シリーン/ロルフ・ソールマン/バーティル・ノルストレム/マグレート・ベバース/レナート・テルフェルト
■オフィシャルサイト http://kittoshiawase.jp/
この作品は大人のためのラブストーリーとも言える。少年少女が主役ではあるが、自分の過去の恋愛を思い出して共感できる作品ではないだろうか。40年経った今でもまったく色あせることなく、世界中の人々に感銘を与える秀作だ。
暖かい春の日が降り注ぐストックホルム郊外の療養所。15歳の少年ペールは美しい瞳とあどけない仕草の少女に目を奪われ、以来少女のことが頭から離れなくなる。彼女の名はアニカ、14歳。
二人は、お互い意識しながらも話しかけることができずにいた。青い恋、淡い恋。自分の若いころを思い出せば誰しもそんな経験の一つや二つあるのではないだろうか。不器用な恋に笑い、涙して共感する。大人になってみればなんであんなにドキドキしていたのだろうと思うけれど、恋とは人を臆病にさせる。本気であれば本気であるほど。そんなことを繰り返し人は大人になっていくのだろう。
日本での当時の邦題は『純愛日記』。『小さな恋のメロディー』と同時公開された。
愛おしき隣人
YOU, THE LIVING
(2007年 スウェーデン/フランス/デンマーク/ドイツ/ノルウェー/日本 94分)
2008年11月15日から11月21日まで上映
■監督・脚本 ロイ・アンダーソン
■出演 ジェシカ・ランバーグ/エリザベート・ヘランダー/ビヨルン・イングランド/レイフ・ラーソン/オリー・オルソン/ケマル・セナー
■オフィシャルサイト http://kittoshiawase.jp/
夢か現実か、観る者を陶酔させる本作は莫大な時間と労力を費やし、CG全盛期のこの時代に、ローテクで創り上げられた名品!
北欧のとある街の住人たち。ロックスターとの結婚を夢見る少女、世界で一番ついてない夫婦、誰からも愛されたことのない男、「誰も私を理解してくれない!」と泣き叫び、歌いだす少女、困窮した家計を静かに嘆く精神科医。
そんな住人たちが集う、とあるバー。ユーモアが私たちを救う。生きていればいろんなことが起こる。1日の終りに、バーテンダーは言う。「ラストオーダー!また明日があるよ!」
人間は誰しも孤独を感じ人とつながっていたいと思う生き物だ。私も近所のバーにかれこれ10年ぐらい通っているが、そこのおかげでいろんな人と出会い、一人暮らしの寂しさも吹き飛ばしてくれる。ある日、店が閉まり、「また明日」と別れた人が次の日亡くなったこともあった。なんともやるせない。当たり前のことだが、人は死ぬまで生き続ける。時には苦しみをユーモアで吹き飛ばす。そんな生き方は理想だ。
際立ったキャラクターの住人たちには、ほとんどプロの俳優はキャスティングせず、路上や、町などで監督、プロデューサー自らがスカウトしたらしい。作品をあたたかく包むシニカルなユーモアセンスがたまらない。
戦闘機、電気椅子、笑えない小道具もちりばめられていたり。人間模様とともに、命と向き合う人間のテーマも語られている。
スウェーデンという国のイメージとして、音楽が好きな私はエモーショナルという言葉を思いつく。「エモ」といわれるロックのジャンルなのだが、あたたかく、涙線を刺激する。そんな土壌がロイ・アンダーソンを生んだ。なにか納得させられる。
(ラオウ)