腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
(2007年 日本 112分)
2008年1月5日から1月11日まで上映 ■監督・脚本 吉田大八
■原作 本谷有希子
■主題歌 チャットモンチー

■出演 佐藤江梨子/佐津川愛美/永作博美/永瀬正敏/山本浩司

■オフィシャルサイト http://www.funuke.com/

グサッ!

これは円満な家族を装っている日本人たちには衝撃的な映画だ!

一見ふざけた様に描かれている登場人物たちだが、表向きのキャラクターに隠された内面の姿を覗いてみると、誰もが自分の中に姉の澄伽(佐藤江梨子)、もしくは妹の清深(佐津川愛美)、兄の宍道(永瀬正敏)、その妻の待子(永作博美)に当てはまるのではないだろうか。

『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』は2000年8月に旗揚げされた「劇団、本谷有希子」によって公演された演劇の映画化である。「劇団、本谷有希子」は独自の感性で女のエゴや自意識、妄想を言葉巧みに表現し、現代の人々が隠し持っている負の部分をブラックユーモアで笑いに変えてさらけ出す。本作でもその執拗な人間観察により構成された一家族の偽りの円満さと偽りの個々の性格が赤裸々にされていく。

自分が特別な存在だと信じ込み、上京していた姉の澄伽が両親の訃報を受け帰郷する。そのことにより平和に日々を暮らしていた和合家が一気に爆発炎上。妹・清深へのいたぶり。兄・宍道との不純な関係。家族はどんどん泥沼にはまっていく。

しかし、漫画家志望の清深は澄伽に怯えながらも自分の抑えられない欲求を筆と紙へと向かわせ、家族の醜態を漫画にしていく。それは不気味で怖い絵だが、どこか面白い。 清深は不気味さの奥に潜む滑稽さを見事にさらけ出す。

そしてその漫画はまるで私たち観客もみんな澄伽なんだよ、と嘲笑っているかのようだ。

妹の清深は姉・澄伽以上に曲者である。そして宍道の妻である待子もまた相当の曲者である。どう曲者なのかはこの映画を観ればお分かり頂けるだろう。

さあ、あなたも勇気を出してこの家族の喧嘩に巻き込まれよう。

『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』であなたもグサッ!とナイフで刺される衝撃間違いなし!

〈ローラ〉



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キサラギ
(2007年 日本 108分)
pic 2008年2月9日から2月15日まで上映 ■監督 佐藤祐一
■原作・脚本 古沢良太

■出演 小栗旬/ユースケ・サンタマリア/小出恵介/塚地武雅/香川照之/宍戸錠

■オフィシャルサイト http://www.kisaragi-movie.com/

薄いドアを開くとそこには、花も恥らう男子の園が。

家元、スネーク、オダ・ユージ、安男、イチゴ娘。

一年前、自宅アパートで焼身自殺をしたD級アイドル、如月ミキ。男達は彼女の一周忌を偲ぶために、ファンサイトの呼びかけで集まった。如月ミキのファンであるということ以外は、お互いの素性も、本名すら知らない5人の男達。しかし如月ミキへの愛と思い出を語り合ううちに、打ち解け、和み、仲を深めていく。やがて、5人全員の胸の内にあったわだかまりが、誰かの一言で爆発した。

「なぜ如月ミキは自殺したのか?本当は誰かに殺されたのではないのか?」

その一言で、男達のハチャメチャな推理が、怒涛の展開を繰り広げる。次第に、5人の男達の正体も現れ始めて…。

アイドル。この青臭くて甘酸っぱい、恥ずかしくて安っぽい響き。でもアイドルなんて言葉がなくても、たいがいの人はその存在を心で知っているだろう。心の奥、秘密の小箱にしまった、他人に見られたら恥ずかしくて、身悶えしてしまうような、あの存在を!耳の後ろを羽根でくすぐられるような甘い気持ちを!

大の男が5人集まって、アイドルについて語らう瞳は、恋する乙女のそれよりも殺気だってて、繊細で、真剣で、まるで秘密基地で世界征服を企む”男子”の瞳だ。もうランドセルは背負わなくても、鬼ごっこでテンションが上がらなくても、半ズボンをはかなくても、寄り集まって何かに熱中しだすと、男は”男子”に、女は”女子”に戻ってしまう。

pic年を取った男子達の推理は、その真剣さとは裏腹に、思いもよらない結果を導き出す。果たして如月ミキの死の真相とは?

迂闊に女子が触ると腐っちゃう。現役の女子だった頃にはわからなかった、男子のそんな純情が詰まっている。(猪凡)


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