アース
EARTH (2007年 ドイツ/イギリス 98分
pic 2008年7月19日から7月25日まで上映 ■監督 アラステア・フォザーギル/マーク・リンフィールド
■脚本 デヴィッド・アッテンボロー/アラステア・フォザーギル/マーク・リンフィールド

■オフィシャルサイト http://earth.gyao.jp/

『earth アース』。その名の通り、地球に関するドキュメンタリーである。おおよそ、地球を捉えることなど我々にはまだ到底不可能だが、この映画は【地球を見つめる世界で1番熱いまなざし】ということができよう。映り込んでくるのは多種多様な生命体、、、

ホッキョクグマ、アフリカ象、ザトウクジラ、ライオン、チーター、ホオジロザメ、アムール豹 etc…

かと言って我々が普段テレビで見かけるような癒し系動物番組ではない。あくまで【地球】映画である。つまりそこには、美しさも残酷さも兼ね備えた荘厳なイメージが満ち溢れている。イメージに包まれた我々は理由を知ることもなく感動に包まれ…地球を感じるのである。

動物も植物も人間も何もかもが同じ原子だというのに、何故これ程多種多様で可能性に満ちた世界が築かれたのか。地球はまさに可能性そのものだ。実際、この可能性が無限なのか、有限なのか我々には知る由もない。だが1つ言えることは、本来2択だった問題を我々が限りなく変えてしまったということだ。人間の窮屈な有限世界を地球に押しつけているのが現状なのである。

主演:46億歳、地球…ならばその感動はどんな名優にも導き出せない究極レベル!!!これ以上にない現実を感じ、考える機会を見逃さないで頂きたい。

美しさを守るためなら、僕らはきっと優しくなれる★



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いのちの食べかた
OUR DAILY BREAD
(2005年 ドイツ/オーストリア 92分) PG-12
pic 2008年7月19日から7月25日まで上映 ■監督・撮影 ニコラウス・ゲイハルター
■編集 ウォルフガング・ヴィダーホーファー

■オフィシャルサイト http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/

そしてもう1本は『いのちの食べかた』。ドキュメンタリー映画としては、異例のロングランとなった話題作。その背景には、近年日本社会が抱える食の不安と問題があるものと思われる。しかし、この映画は決してそのような風潮に流された内容ではない。あくまで食べるという本質を至極冷静に浮き彫りにしていく。

マイケル・ムーア監督作品に見られるエンターテイメント性はほとんどない、しかしとてつもない力がこの作品には満ち溢れている。観ているだけで、地方などで未だに残る原初的祭りに参加しているかのような…妙な胸騒ぎがするのである。

都市化された祭りは、とてもシステマチックでそれはそれで楽しい。しかし、本来の祭りには何かしら神という絶対的存在が表立って絡んできた。そして神に対する奉げものとして、生きた動物を自らの手で殺し、その後皆で分け合い、食べる…その習慣が食べるという行為に必要な重みを与えてきた。

が都市生活に慣れ親しんだ我々の感覚はどうだろう?ファーストフード業界の興隆…いただきます、ごちそうさまを言わない若者…様々な部分で本来あった食の意味が薄れてきたのではないだろうか?

だからこそ、『いのちの食べかた』は現代都市社会に生きる我々に対し、本来の祭りが持っていたような「食」の重みと共に強烈なメッセージを届ける。そしてそのメッセージは決してこのような場では導き出すことのできない言葉、いや、言葉ですらない。つかみきれないセツナサなのだ。

個人的な話になるが、私には忘れられない小学生時代(80年代後半〜90年代前半)の記憶がある。

家から少し離れたところに某大手食肉加工メーカーの工場があり、よくその前を自転車で通っていた。工場は密閉された造りではなかったので、中からは豚のあげる断末魔の叫び、そして異臭が漂ってきていた。

また、近くを走る国道では、荷台に豚たちを乗せたトラックが走っているのをよく見かけた。そんな音や、匂いや、風景に触れると時々肉を食べるのが嫌になった程だ。

だが、我々は生きていくために食べなければならない、いのちを。ならば逆説的に『いのちの食べかた』は、避けられない「わたしたちの生きかた」として普遍的意味を持ちうるだろう。

私が『いのちの食べかた』を体感した工場はもう跡形もない。それが事実である。では真実はどこへ?…。

もはや事実に埋もれ、本来的生の感覚を失いがちな我々にとってこのドキュメンタリー映画は生の真実を伝える黙示録である。事実は想像できても、真実は想像できない。ならば観よ、『いのちの食べかた』という真実が早稲田松竹で待っている!!!

(アセイ)


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