広島、長崎、沖縄、そして東京大空襲など日本は未だにあの戦争の傷痕を解決できてはいませんが、それは世界も同じように思います。今回の二作品は日本とは少し違う世界の戦争、革命から生まれた悲惨な人間の業を取り上げてみました。

あの時代、なぜ全世界の人々があんなにも苦しまなくてはいけなかったのでしょうか?あんなにも人を憎まなくてはいけなかったのでしょうか?時代が変わった今、この平和な日本に暮らす人々はその答えは知っているのでしょうか?私にはそうは思えません。

知らない事こそが平和への鍵なのでしょうか?違う気がします。知らないとは再び同じ過ちを繰り返す可能性を持つ非常に危ない状況ではないでしょうか。

今、戦争を知らない私達が出来ることは知ることです。真実を知ることです。決して戦争を経験しないと学べないわけではありません。映画とはまさにそうした歴史や違う土地での出来事を自分の身に置き換えて考えさせ、仮想体験させてくれるものではないでしょうか。

知らない事は決して罪ではありません。が、知ろうとしない事は大きな罪だと思います。あの時代多くの人が自分は騙された1人なんだと言っていますが、騙されるのもまた知識欲の欠如からくる怠慢でしかありません。

これから先の未来、自分は知らなかった、騙されたと言い訳をしなくていい平和な世の中のためにまずは一緒に映画を見て、学びませんか?

映画には人類平和の鍵がきっとあるはずです。

なんか重くなりましたが、ただ単純に映画を楽しんでいただけるのもまた幸いです。

君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956
SZABADSAG, SZERELEM
CHILDREN OF GLORY

(2006年 ハンガリー 120分)
2008年5月31日から6月6日まで上映 ■監督 クリスティナ・ゴダ
■原案 ジョー・エスターハス
■脚本 ジョー・エスターハス/エーヴァ・ガールドシュ/ゲーザ・ベレメーニ/レーカ・ディヴィニ
■出演 イヴァーン・フェニェー/カタ・ドボー/シャーンドル・チャーニ/カーロイ・ゲステシ

美しきドナウ河。20世紀ヨーロッパで最も多くの血が流れたドナウ河。その河畔にある街、ブダペストは“ドナウの真珠”と呼ばれ、多くの人を惹きつけてやまないが、一方では悲劇による深い哀しみの刻印を垣間見ることもできる。

1956年、ソ連の衛星国として共産主義政権下にあったハンガリーで、自由を希求する市民が声を上げた。次第に激化し、多くの血を流す戦いとなったこの革命はソ連軍の圧倒的な兵力の前に踏みにじられる。その数週間後、メルボルンで開催されたオリンピックの水球競技でハンガリーチームは運命の悪戯か、ソ連と対戦することとなる。“メルボルンの流血戦”と称されるこの歴史的一戦は、ソ連側の暴力で負傷者が出るほどの白熱した試合となり、最終的にはハンガリーが勝利した。

本作はこの二つの歴史背景を元に描かれた混乱の時代を翻弄されながらも強く生きようとする人々の物語である。はじめは政治からは距離を置き、スポーツマンとして水球と家族を愛するスター選手のカルチは、ある日、革命を信じ、ただ自由を願う“ハンガリーのジャンヌ・ダルク”のような女子大生のヴィキと出会う。お互いに惹かれ合う2人だが、時代の波が2人を引き離す。夢のオリンピックの舞台で世界の強豪たちと戦うカルチと、街で市民と共に自由を求め、激しい銃弾と戦うヴィキ。2人の選んだそれぞれの戦いに待つ結末とは…。



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ヒトラーの贋札
DIE FALSCHER / THE COUNTERFEITERS
(2006年 ドイツ/オーストリア 96分)
pic 2008年5月31日から6月6日まで上映 ■監督・脚本 ステファン・ルツォヴィツキー
■原作 アドルフ・ブルガー『ヒトラーの贋札 悪魔の工房』(朝日新聞社刊)

■出演 カール・マルコヴィクス/アウグスト・ディール/デーヴィト・シュトリーゾフ/マリー・ボイマー

■2007年アカデミー賞外国語映画賞受賞
■オフィシャルサイト http://www.nise-satsu.com/

1958年、オーストリア・トプリッツ湖から大量のポンド紙幣が見つかった。引き上げられたその全てが贋札。一緒に見つかった資料から、第二次世界大戦中にナチス・ドイツがイギリス経済混乱を狙った「ベルンハルト作戦」のもと、強制収容所の紙幣贋札工場で作られたものだと判明した。

本作は強制的に贋札作りに従事させられたユダヤ人技術者の視点から、彼らの苦悩と葛藤が描かれている。自分の命か、それとも家族、仲間を守るのか。

究極の選択の中で彼らは正義を信じ、命をかけてその信念を守り抜いた姿は見る者の心を大きく揺さぶり動かす。驚くべき歴史的事実に隠された、ユダヤ人技術者の愛と正義をかけた感動の一級品!

物語は第二次大戦中のドイツ・ザクセンハウゼン強制収容所。そこ各地から送られてきた世界的贋札師・サリー、印刷技師・ブルガー、美校生・コーリャなどユダヤ系の技術者たちはナチス・ドイツの命令によりポンド札の大量贋造を強制される。しかし、それはナチスに資金を与え戦況を有利にし、収容所にいる家族や恋人、仲間を苦しめることを意味する。自分の命と正義を天秤にかけながら、日々葛藤に苦悩する中、なかなか完成しないことに痺れを切らしたナチス親衛隊将校が見せしめに5人を銃殺すると通告する。究極の人生の分かれ道。彼らが下した決断とは…。

(ローラ)

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