エレファント・マン
THE ELEPHANT MAN
(1980年 アメリカ/イギリス 124分)
2007年9月22日から9月28日まで上映 ■監督・脚本 デヴィッド・リンチ
■原作 フレデリック・トリーブス/アシュリー・モンダギュー
■脚本 クリストファー・デヴォア/エリック・バーグレン

■出演 ジョン・ハート/アンソニー・ホプキンス/アン・バンクロフト/ジョン・ギールグッド

■オフィシャル・サイト http://www.zaziefilms.com/elephant_man/

1981年、エレファント・マン日本初公開。それは、その年の全公開作品中ナンバーワン、全国で350万人以上の動員を記録し、デイヴィッド・リンチの名を世に知らしめた作品である。

この話は実話である。奇病に冒され、その特異な姿から、エレファント・マンと呼ばれ続けたジョゼフ・メリックという男の哀しい物語…であるが、エレファント・マンの生涯の哀しさと、誰も触れない彼の内面の美しさには、常に離れず付きまとうものがあった。それは、人間の「好奇心」「怖いもの見たさ」「偽善の心」という、どんな人間も少なからず持っている心。

エレファント・マンの純粋無垢が見えれば見えるほど、これらがクローズアップされ、直視出来ないような気持ちになる。リンチが描いているのはジョゼフ・メリックの生涯そのものよりも、これらの人間の愚かしさと哀しさである。ジョゼフ・メリックを救おうとした外科医トリーブスは、後に自分のメリックに対する心は偽善ではないのかと悩む。だが、その苦悩する心そのものが、偽りではない優しさであることを、メリックはわかっていたのではないか。

もし私が巨大で塔に触れることが出来たとしても
あるいは手のひらで海を掴むことが出来たとしても
私は精神によって測られるべきである
精神こそが、人間のもの差しなのだから
                        ___ジョゼフ・メリック

pic皮を剥いでしまえば、人間なんてみんな同じはずだ。誰だってそんなこと分かっているはずだけれど。エレファント・マンを自分と重ね、胸を痛める。だが同時に気付いてしまう。彼をとりまく人間もまた、自分自身だということに。

(リンナ)



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マルホランド・ドライブ
MULHOLLAND DR.
(2001年 アメリカ 146分)
pic 2007年9月22日から9月28日まで上映 ■監督・脚本 デヴィッド・リンチ
■音楽 アンジェロ・バダラメンティ

■出演 ナオミ・ワッツ/ローラ・エレナ・ハリング/アン・ミラー/ジャスティン・セロー/ダン・ヘダヤ/マーク・ペルグリノ

まずはじめに、お断りしておきます。この映画『マルホランド・ドライブ』を完全に理解したいと思う方には、残念ながら本作をお勧めすることはできません。なぜなら完全なストーリーが元々存在しないからです。しかし、この映画を少しでも理解されたい方は以下の10個のヒントを覚えていれば、その謎の片鱗に触れることが出来るかもしれません。

映画公開時にリンチにより掲示された、ストーリーを理解するための10個のヒント

@映画の冒頭に、特に注意を払うように。少なくとも2つの手がかりが、
クレジットの前に現れている。
A赤いランプに注目せよ。
Bアダム・ケイシャーがオーディションを行っている映画のタイトルは?
そのタイトルは再度誰かが言及するか?
C事故はひどいものだった。その事故が起きた場所に注目せよ。
D誰が鍵をくれたのか? なぜ?
Eバスローブ、灰皿、コーヒーカップに注目せよ。
Fクラブ・シレンシオで、彼女たちが感じたこと、気づいたこと、下した結論は?
Gカミーラは才能のみで成功を勝ち取ったのか?
HWinkiesの裏にいる男の周囲で起きていることに注目せよ。
Iルース叔母さんはどこにいる?

本作品『マルホランド・ドライブ』は、直線的に進行するストーリーが存在しません。この映画は大まかに分けて現実のシーン、回想のシーン、空想のシーン、夢のシーン、ストーリーに関わりのなさそうな第三者のシーンなどに分けられています。しかしそのシーンがどこなのかの説明は一切省かれています。それが誰の「回想・空想・夢」なのか、果たして「現実のシーン」など本当にあるのかさえ疑わしいくらいです。こうした手法はリンチが『イレイザーヘッド』『ブルーベルベット』『ツイン・ピークス』『ロスト・ハイウェイ』と言った、自身で脚本を書いている作品から脈々と受け継がれています。

そんな映画なので楽しむ方法も一風変わっています。
楽しむ方法その@ ストーリーを理解しようと一所懸命に悩み苦しむ。
楽しむ方法そのA 映画から手に入れた情報全体から、自分なりのストーリーを作り出す。ストーリーは見た人個人で様々に変化する。
楽しむ方法そのB 幻惑的とも言えるシーン展開にただただ身を任せ、夢心地を味わう。

世の中、物事を完全に理解することなんてできないんです。理解したつもりになって満足するしかないのです。謎は謎のままでもいいんです。そんなに都合よく全部謎が解けるはずはないんです。謎がある程度残るほうが本当は自然なことではないのでしょうか?それでも謎を解き明かしたくなるのが人間の心理ですけどね。

(縞馬)




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