愛についてのキンゼイ・レポート
KINSEY
(2004年 アメリカ/ドイツ 118分)
2006年2月11日から2月17日まで上映
■監督・脚本 ビル・コンドン(『ゴッド・アンド・モンスター』)
■出演 リーアム・ニーソン / ローラ・リニー / クリス・オドネル / ピーター・サースガード
今の相手とのセックスに満足していますか?
前戯にかける時間はどのくらいですか?
今までに何人の人とセックスしましたか?
「これって普通なの?」「こんなことしてんのって私だけ?」気にはなるんだけど他人に聞きづらい、故に浮かぶ「自分は異常ではないのか?」という疑問。性に対する考えが今よりもはるかに保守的だった1940〜50年代のアメリカで、アルフレッド・C・キンゼイ博士が発表した、世界初の性に関する調査報告書"キンゼイ・レポート"は、大勢の人々のそんな疑問や不安を解消し、後に続くフリーセックスの時代の扉を開けました。本作『愛についてのキンゼイ・レポート』は、そのキンゼイ博士の研究経緯や詳細、博士自身の生涯を描いた作品です。
キンゼイ・レポートは、そもそも18,000人に対して個々に行ったインタビューがデータ元。でもこの種の質問に対する答えには、見栄や嘘がつきもの(ですよね?)。そこでキンゼイ博士が開発した、嘘を見抜いたり、見栄を言わせない、独自のインタビュー方法が面白い!
しかし、バカがつくほどに真面目なキンゼイ博士の“研究”には、「感心する」を通り越して「ここまでやるか?」と呆れてしまうほど。その徹底した内容はぜひご自分の目でご確認ください。
「セックス調査」と「中絶」という、タブーとされるものの二本立てですが、両作ともそこで描かれるのは、ある愛のかたち。早稲田松竹はバレンタインに普通の恋愛映画など持ってきません!
(mana)
ヴェラ・ドレイク
VERA DRAKE
(2004年 イギリス/フランス/ニュージーランド 125分)
2006年2月11日から2月17日まで上映
■監督・脚本 マイク・リー(『秘密と嘘』)
■出演 イメルダ・スタウントン / フィル・デイヴィス / ピーター・ワイト
■2004年アカデミー賞3部門ノミネート(監督・脚本・主演女優)
(C)2004VERA DRAKE Limited/Les Films Alain Sarde/UK Film Council.1950年の階級差別の残るイギリス。ヴェラ・ドレイクは愛する家族に囲まれて、誰にでも優しく温かく接して生きてきた。しかし、そんな彼女には家族にも言うことが出来ない秘密があった。ヴェラは望まない妊娠をした女性たちの堕胎を手伝っていた。この時代、イギリスでは、人工妊娠中絶は法律で禁じられていた。また、手術を受ける場合も、手術代は高額で、とても労働階級の者には払うことができなかった。貧しい人々は非合法な堕胎手術に頼るしかなかった。そんなある日、ヴェラが助けた娘の体調が急変し、警察がドレイク家にやってきた。家族の絆は初めての危機を迎えた。
ヴェラが行なっている行為は確かに法律に触れる違法行為である。しかし、困っている人が目の前にいて、自分には助けることができるなら、それを助けるのが人間なのではないだろうか。法律を守ることが善で、破ることが悪なのだろうか。いや、時に法律で善悪を判断することはできないときもある。
また、そんな危機に家族は最初はとまどいながらも、夫スタンの揺るぎない愛が、家族の気持ちを変えて行く。もしも家族の誰かが罪を犯してしまった時、その人を信じ、許し、待ち続けることはとても難しいことだ。だがそれが出来るのが、愛でつながった家族だ。
マイク・リー監督は事前に役者たちに脚本を読ませずに、役作りだけをさせておいて、即興で撮影をするという演出をすることで有名な監督だ。この『ヴェラ・ドレイク』でもその演出のお陰で、作品にリアリティーを出すことに成功している。
またヴェラを演じたイメルダ・スタウントンの演技は、素晴らしいの一言。彼女の表情の一つ一つが、言葉の一つ一つがまるでドキュメンタリーを見ているかのように自然なのだ。彼女以外ではヴェラ・ドレイクを完璧に演じることは出来なかったのではないだろうか。
(パンプキン)