天井棧敷の人々
LES ENFANTS DU PARADIS
(1945年 フランス 195分)
2006年1月7日から1月13日まで上映
■監督 マルセル・カルネ
■脚本 ジャック・プレヴェール
■出演 アルレッティ / ジャン=ルイ・バロー / マリア・カザレス
■1946年ヴェネチア国際映画祭特別賞受賞(マルセル・カルネ)
配給:ザジフィルムズ
やっぱり名画を上映してこそ「名画座」だと思うんですよ。21世紀に残すべき古典の名作。『天井棧敷の人々』はフランス映画の奇跡であり、金字塔、そして映画の真髄です。
舞台は19世紀半ばのパリ歓楽街。無言劇役者のバチストと、美女ガランス。二人の恋を軸に、一人の女をめぐる、四人の男の運命の交錯を描いた、悲しくもきらびやかな人生劇。
自分の希望はかなえられない、思いどおりにはならないと、判っていても、それを求めて人生を歩むしかない。確かに辛いが、それもまた人生。では人生とは何か?映画とは何か?犯罪とは?権力とは?──この人間模様を借りてカルネが描いたものは、単なる恋愛絵巻ではなく、権力への抵抗にも思えます。
3年3ヶ月の製作日数、16億円の制作費、2部構成・3時間の超大作(そのため今週は二本立てではありません)。今でこそ目新しくもない数字ですが、この映画が製作されたのは1943年、第二次世界大戦ナチス支配下のフランスなのです。戦時真っ只中に製作されたにもかかわらず、そのことを一切感じさせない作品に、ただ感服してしまいます。
バチスト役ジャン=ルイ・バローの神業的パントマイム、群集の圧倒的存在感をはじめ、素晴らしいのはいろいろあるけれど、詩人であるジャック・プレヴェールの書いた台詞が良い。ひとつひとつが名句で、いちいち頭に残ります。翻訳された日本語の美しさも格別。
(mana)
*ナチスと言えば今月は『ヒトラー〜最期の12日間〜』も上映します。こんな人がいた時代に、その陰でこんな大作が作られていたかと思うとなかなか興味深い。