サマータイムマシン・ブルース
(2005年 日本 107分)
2006年3月18日から3月24日まで上映
■監督 本広克行(『踊る大走査線』シリーズ)
■原作・脚本 上田誠
■出演 瑛太 / 上野樹里 / 与座嘉秋 / 川岡大次郎 / ムロツヨシ
暑すぎる夏。ある大学のSF研究会部室。SF研究など全くせず、部室でだらりと夏休みを過ごす五人の男子学生と、二人の女性写真部員。ふと気付くと部屋の隅に何故かタイムマシンが!?そこで前日壊れたクーラーのリモコンを取りに昨日に行ってみることに。軽い気持ちで乗ってみたら、思わぬ事態が次々に。果たして無事に「今日」に戻れるのか。
タイムマシン。日本人には何故だか馴染み深いタイムマシン。何故だろう?たぶん『バック・トゥ・ザ・フューチャー』よりも猫型ロボットとメガネ少年でお馴染みの某アニメのお陰で、タイムマシンは日本人なら誰もが知るSFアイテムになっているのだろう。
そんな最強SFアイテムのタイムマシンを題材に、『踊る大走査線』でお馴染みのヒットメイカー本広克行監督がメガホンを取るとなると、なんとなく超大作を予感させる…しかし、蓋を開けてみるとユルユルの大学生達の日常が繰り広げられる。アレ、これ本広監督作品だよね?ソース顔のあの刑事物を撮ってる人だよね。今作は金かけてんな〜という感じの超大作作品とは打って変わって、会話のテンポとか日常の些細なこととかを上手に演出している。こういう作品の方が実は向いているのでは…。
また今作は本当に脚本が良く出来ている。前半に張ったいくつもの伏線を巧妙に解消していく構成力、スピード感に溢れた会話は、三谷幸喜?クドカン?と思ってしまう。しかし脚本を手掛ける上田誠は弱冠25歳の若手。また上田誠は映画の元となった劇団「ヨーロッパ企画」も手掛けている。末恐ろしい若手がまた現れたものだ。
(パンプキン)
リンダ リンダ リンダ
(2005年 日本 114分)
2006年3月18日から3月24日まで上映
■監督・脚本 山下敦弘(『リアリズムの宿』『くりいむレモン』)
■脚本 向井康介 / 宮下和雅子
■音楽 ジェームズ・イハ
■主題歌 ザ・ブルーハーツ
■出演 ペ・ドゥナ / 前田亜季 / 香椎由宇 / 関根史織 / 三村泰代
「終わらない」青春の日々。文化祭ライブにむけて濃くて緩くて、やっぱり熱い3日間がはじまった!ブールーハーツのファンは勿論、ブルーハーツを知らなくても楽しめる力の抜けた「青春映画」。2005年のキネマ旬報ベストテン邦画ランキング、第6位。
とある地方都市にある芝崎高校。文化祭を明日に控え、準備に余念のない生徒たちの中で、途方にくれる恵、響子、望。同じバンドのメンバーである三人は文化祭ライヴのためにオリジナル曲をつくり練習を重ねてきたのだが、直前になってギターの萌が指を骨折。ぶち切れたボーカルの凛子までが抜け、突如バンドが空中分解してしまったのだ。
3人だけで演奏できる楽曲はないものか?なにやら探していると、偶然にもブルーハーツの「リンダ リンダ リンダ」が聞こえてきた。勢いブルーハーツのコピーをやろうと決めた三人は、たまたま通りかかった韓国人留学生のソンをボーカルに誘う。わけがわからないまま「ハイ!」と応えたソン。本番の文化祭最終日まであと3日。急造バンド4人は猛練習を重ねていく。
「ブルーハーツのコピーバンドを女子高生達がやる」という企画だけを聞けば、ワクワクすると同時に嫌な予感がする人も少なくはないだろう。特に80年代中頃から90年代に青春を過ごしてきた世代にしてみると、大事なバンドが利用されるという感覚を持つ人すらいるかもしれない。後継ともいえるようなバンド(90年代末からの青春パンクブームは記憶に新しいところ)が続々と現れたとはいえ、ブルーハーツは常に新しいファンを生み出しつづけている。今作に限らず、様々な映画やTVドラマあるいはCMで耳にすることが多いのは大きな要因だろうが、当然楽曲の良さがあっての話。その中でも代表曲といえる「リンダ リンダ リンダ」をタイトルにし、その演奏シーンがクライマックスになる映画を作るとなれば、相当の覚悟が必要とされることは想像に難くない。
が、しかし、である。今作には作り手の力みは感じられない。勿論力のこもった作品ではあるのだが、バンド・文化祭・女子高生といったモチーフから想起されるような映画的(あるいは劇画的)な「熱さ」はない。ライブシーンのカタルシスを含め、実に笑えて泣ける作品に仕上がっているのだが、それも「日本のカウリスマキ」とも評される山下監督特有の程よい脱力具合があってこそ。
もともと、プロデューサーがブルーハーツのカバーを演奏するライヴに行って着想したというこの企画には、何人かの監督候補がいたという。その中で山下監督がメガホンを持つことになったのは、全ての観客(非ブルーハーツファンを含む)にとって幸運といえるだろう。
『ローレライ』の香椎由宇、『バトルロワイヤル』の前田亜季、実際にバンド“Base Ball Bear”のベーシストである関根史織、そして『ほえる犬は噛まない』『子猫をお願い』のペ・ドゥナ。吹替えなしの演奏シーンを含め、四人四様にキャラの立った役を見事に演じている。ちなみに、四人の担任役で出演の甲本雅裕は甲本ヒロトの実兄。
(Sicky)