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バーバー吉野
(2003年 日本 96分)
2006年12月9日から12月15日まで上映 ■監督・脚本 荻上直子
■出演 もたいまさこ/米田良/大川翔太/村松諒

☆本編はカラーです。

朝もやが漂う、山間の緑豊かな田舎町。刈り取った後の青々とした田畑の中で賛美歌を歌う少年達。少年達の髪型はまるで”こけし”みたいな髪型の「吉野ガリ」に統一されている。

pic町に一軒しかない床屋「バーバー吉野」。町の男の子は絶対にここで髪型を「吉野ガリ」にしなくてはならないという伝統がある。そんな伝統を今も頑なに貫き通す吉野のおばちゃん。その伝統が当たり前だと思っている息子と仲間達。この変てこな伝統が根付く田舎町に東京から転校生がやってきた。しかし彼の髪型は今風の茶色い髪型だった。静かな田舎町で今何かが変わろうとしていた…

規則、髪型、漫画、反抗、恋心、エロ本、転校生、反省文、秘密基地など、『バーバー吉野』は今まで忘れてしまっていた少年時代の色々な記憶達を鮮明に思い出させてくれた。

pic小学生の頃は床屋に散髪に行くことが楽しみだった。何故そんなに楽しみにしていたのだろう。思い当たる理由は少年ジャンプが大量に置いてあったことと、子供料金の千円払うと何故か貰える百円のお小遣いと飴玉等その程度の理由なのだが、あの頃はそれがとても楽しみだったように思う。しかし小学校も高学年になると、床屋で髪を切ることが嫌いになってしまった。でも仕方なかったんだ。格好良くなりたいと思い始めた時期に、その床屋では「スポーツ刈り」と「坊っちゃん刈り」の二つだけしか髪型が選べなかったのだから。

picきっと監督もこんな男子時代を過ごした人なのかなと思っていたのだが、まさか女性監督とは。それにしても男子の気持ちをよく理解しているなと感心してしまった。たまには田舎の友達に連絡でもして、馬鹿だった少年時代の思い出でも語り合ってみようかな。

(パンプキン)



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かもめ食堂
ROUKALA LOKKI
(2005年 日本 102分)
pic 2006年12月9日から12月15日まで上映 ■監督・脚本 荻上直子
■原作 群ようこ
■出演 小林聡美/片桐はいり/もたいまさこ/ヤルッコ・ニエミ

pic炊きたてのお米の湯気にほこほこと包まれながら、ひねくれた考えごとなんてそうそう思いつかない。お腹がすくと気持ちもへこむ。世に起こる悪事の多くは、空腹な時に行なわれているんじゃないかしらと思うほど、ひもじいとイライラしてしまう。胃袋に左右されてしまうことは意地汚いことだと思っていたけど、かもめ食堂のサチエさんならきっと、にかっと笑って引き受けてくれるに違いない。

picフィンランドはヘルシンキの街なかに、なにやらわけありの女が三人、おむすびをこしらえている。定食屋「かもめ食堂」を女手ひとつで切り盛りするサチエ。仕事を辞めて、東京から「とにかく遠いところへ行こうと思って」やって来たミドリは『ガッチャマン』の歌がきっかけでサチエと知り合い、長い滞在期間を一人で持て余すよりは…と、サチエのかもめ食堂を手伝うことに。一人旅の途中で荷物をなくしてしまったマサコは、故郷のにおいに吸い込まれるように、かもめ食堂に辿り着いた。

かくして、日本から遥か遠く離れた北欧の地で、おにぎりをメインメニューにしたかもめ食堂は、小さいながらも堂々と、閑古鳥に鳴かれてもゆるゆると、時にはシナモンロール、時にはおにぎりを少しのお客さんに振舞いながら、ゆっくりと白夜の国に馴染んでいく。

picかもめ食堂を訪れるお客さん。日本びいきの男子学生トンミ、コーヒーのおいしくなる呪文を知っている謎の中年男、窓の外からじっと物憂げに中を見つめる女・・・。ドラマチックなことなんて何も起こさないけど、みんな少しだけ、自分の身の丈の日常に疲れている。それがサチエの作るごはんで、ほろほろとほどけた顔になるのが、なんだかたまらなくいい。「食べることは、間違いなくいいこと」前を向けるメッセージは、いつもおなかに響く。

(猪凡)



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