灯台守の恋
L'EQUIPIER
(2004年 フランス 104分)
2006年5月6日から5月12日まで上映 ■監督・脚本 フィリップ・リオレ(『パリ空港の人々』『マドモワゼル』)
■出演 サンドリーヌ・ボネール / フィリップ・トレトン / グレゴリ・デランジェール

■オフィシャルサイト http://www.elephant-picture.jp/todai/

配給:エレファントピクチャー

カミーユは故郷ブルターニュ地方ウエッサン島に、亡き両親の家を売却するために帰ってくる。そこで、カミーユは一冊の本と出会う。その本はアントワーヌ・カッサンディ著『私の世界の果て』。そこには父と母そしてカミーユ自身の出生の秘密が記されていた─―。

pic1963年、“世界の果て”と呼ばれるブルターニュ海岸の辺境の島ウェッサン。住民達はケルト人の子孫として誇りを持ち、共に自然と闘い結束を固めていた。そんな中、ある一人の男が島にやってきた。男の名はアントワーヌ、アルジェリア戦争帰還兵で、左手を負傷していた。結束の固い住民達は、よそ者のアントワーヌに冷たくあたる。アントワーヌはカミーユの父イヴォンが仕切る灯台守の仕事を始めることになる。最初はアントワーヌに敵意を持っていたイヴォンだったが、灯台守の過酷な仕事を共にこなすうちに、彼を理解し、二人の間に友情が芽生えていく。そして、イヴォンは友人として彼を村に迎え入れる。そこで、アントワーヌは一人の女性と恋に落ちてしまう。その女性はイヴォンの妻マペだった…。

技術の進歩と共に何でも無人化が進む現代では、灯台守って言われてもピンとこないのが現実。灯台の中で、灯を灯し続ける仕事と聞くとそんなに大変そうには思えないが、この『灯台守の恋』を見ればその考えが間違っていたことに気付かされる。常に吹き荒れる強風、荒波それら自然の脅威と最前線で闘い続ける灯台守はまさに過酷そのもの。そんな中で芽生えた友情はとても強いに違いない。

picそんな固い友情で結ばれた二人の男は、一人の女性を共に愛してしまう。友人の妻マペを愛してしまい、秘めておかなければと悩むアントワーヌ。妻とアントワーヌの関係を知りながらも、二人を憎むことができないイヴォン。二人の男は葛藤しながらも自分の生き方を選択する。

またこの舞台となる灯台がとても魅力に満ち溢れている。まるで海の中に突き刺さるように建っている灯台。その建造美の美しさだけでも必見の価値があるだろう。

(パンプキン)


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ドア・イン・ザ・フロア
THE DOOR IN THE FLOOR
(2004年 アメリカ 112分 R-15
pic 2006年5月6日から5月12日まで上映 ■監督・脚本 トッド・ウィリアムズ
■原作 ジョン・アーヴィング 『未亡人の一年』(新潮社刊)
■出演 ジェフ・ブリッジス / キム・ベイシンガー / ジョン・フォスター

■オフィシャルサイト http://www.herald.co.jp/official/door/

配給:角川ヘラルド映画(株)

「絶対に 絶対に 絶対に床のドアを開けてはダメ」
(テッド・コール著『床の上のドア』より)

「希望」が最期に残ったというパンドラの箱に、もし強固な鍵がかかっていたならば世界はどうなっていただろうか?箱の中に封印されていた恐ろしい出来事が出て行かなかったかわりに、「希望」をみつけることも出来なかったろうか?

pic著名な児童文学作家のテッド(ジェフ・ブリッジス)と妻のマリアン(キム・ベイシンガー)は、愛くるしい一人娘のルース(エル・ファニング)とともに裕福で申し分のない生活をおくっているように見えた。けれど、実際には夫のテッドは街中に別の部屋を借り、海辺の家と一日おきに寝泊りするという奇妙な別居生活をはじめたばかり。しかも、彼は浮気に明け暮れ、一向に執筆に取り掛かる様子はない。妻のマリアンは、何か大きな傷に打ちのめされたまま無表情に悲しみの淵にうずくまり、娘のルースを抱きしめることすらできない。そしてルースは夜中に家族の写真を眺めて何かを呟いている。

ある日、テッドは住み込みの助手として作家志望の高校生・エディ(ジョン・フォスター)を雇うことにする。そして、あろう事かエディはマリアンに一目ぼれしてしまうのだった。エディの若く熱い想いに、徐々に感情を取り戻していくマリアンであったが、テッドにはエディを雇った本当の目的があった。そして、夫婦の間に横たわる過去の大きな傷が明らかにされ…。

pic『ガープの世界』『サイダーハウス・ルール』等と同様、今作は現代アメリカ文学界の巨匠と呼ばれるジョン・アーヴィングの小説の映画化である。自らの著作を映画化することに積極的な、極めて珍しい作家であるアーヴィングであるが、原作小説『未亡人の一年』に関しては「映画化は無理」と考えていた。最高傑作という評判もあったが、物語の長大さ(アーヴィング作品には珍しくないのだが、一人の登場人物の人生が広範囲に渡って語られる)がその理由であったらしい。

監督・脚本のトット・ウィリアムズは原作小説の前半部のみを切り取るというアイディアで丁寧な脚本を仕上げ、アーヴィングに「彼以外がメガホンをとることは考えられない」といわしめ映画化に漕ぎ着けた。

標題の「ドア・イン・ザ・フロア」とは、劇中でテッドが書く絵本のタイトルでもある。決して開けてはならない床の上のドア。その下には「恐ろしいもの」が隠れており、母親は息子に決してドアを開けるなと教えるが…。

パンドラの箱同様、このドアにもやはり鍵はかかっていない。開けるも開けないも、当事者次第。「恐ろしいもの」を床下に隠しておくこともできる。けれど、その正体やその先にあるかもしれない「希望」を確かめるには、ドアを開けてみるしかない。テッドとマリアンは「床の上のドア」を開けるのだろうか?開けたとしたら何を見つけるのか?

人生の悲劇も喜劇も温かい眼差しで描き、現代のディケンズとも賞されるジョン・アーヴィング。彼の世界感がきっちりといかされた本作であるならば、我々が「希望」をもって登場人物たちの動きを見守ることは、きっと可能だ。

(Sicky)



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