クリクリのいた夏
LES ENFANTS DU MARAIS
(1999年 フランス 115分)
2005年3月12日から3月18日まで上映 ■監督 ジャン・ベッケル
■原作 ジョルジュ・モンフレ 『マレの子供たち』
■脚本・台詞 セバスチャン・ジャプリゾ
■出演 ジャック・ガンブラン/ジャック・ヴィユレ/アンドレ・デュソリエ/マルレーヌ・バフィエ/イザベル・カレ

(C)WISE POLICY

夏草の香り、水面をそよぐ風、子供たちのはしゃぐ声。蓄音機からは、ノイズまじりのルイ・アームストロング。ゆったりと過ぎていく時間。なつかしい、しあわせの記憶。今はもう失われてしまった、あの輝かしい日々…。

picそれは少し昔の、フランスのおはなしです。とあるマレ(marais=沼地)の畔に、クリクリの一家は住んでいました。クリクリのお父さんのリトンは、ちょっとだけあたまが弱くて、いつもまわりに迷惑ばかりかけてしまいます。お隣に住むしっかり者のガリスは、決まってその尻拭いをする役目なのでした。リトンとガリスはコンビで仕事をしていて、自生しているすずらんの花をブーケにしたり、沼地で蛙やエスカルゴを捕ってマルシェで売ったりして、生活していました。

その愉快でおだやかな暮らしぶりは、行く先々で出会う街の住人たちをも魅了して、マレのガリスの家は、一風変わった同士たちの社交場になりました。でも、そんな和やかな日々も束の間、またしてもリトンのヘマのせいで、大変な事件が起こってしまうのです。果して彼らはこの窮地を脱することができるのでしょうか。

picそれまで『殺意の夏』や『エリザ』で、ざらざらしたサスペンスを撮ってきたジャン・ベッケルですが、まるで方向転換を図ったかのような、静かで美しい映画を作り出しました。

細やかなカット描写を重ねた美しい映像で紡がれる、シンプルながらも味わいのある物語は、父ジャック・ベッケルの「詩的リアリズム」の概念を思い起こさせます。やっぱり親子なんですね。今回併映の『ピエロの赤い鼻』とあわせて観ると、むしろこれまでの作品の方が意外に思われるかもしれません。

とりとめのないのんびりとした空気、派手さはないけどじんわりと心に沁みる、良い映画です。お金では決して買うことができない「豊かさ」の意味を考えてしまいますね。忙しい生活に追われている方こそ、ぜひどうぞ。

(mana)


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ピエロの赤い鼻
EFFROYABLES JARDINS
(2003年 フランス 95分)
pic 2005年3月12日から3月18日まで上映 ■監督・脚本 ジャン・ベッケル
■原作 ミシェル・カン
■脚本 ジャン・コスモ/ギョーム・ローラン

■出演 ジャック・ヴィユレ/アンドレ・デュソリエ/ティエリー・レルミット/ブノワ・マジメル/シュザンヌ・フロン/イザベル・カンディエ

(C)WISE POLICY

1960年代の、フランスの、とある田舎町。小学校教師のジャック(ジャック・ヴィユレ)の息子の14歳になるリュシアン(ダミアン・ジュイユロ)は、朝から浮かない顔をしていた。その理由は、毎週日曜日になるとパパが赤い鼻をつけたピエロの格好をして、お祭り会場にやって来た観客を集めて笑わせているから。

リュシアンには解らなかった。どうして大好きなパパがアマチュアのピエロなんかに扮して、みんなの笑いの的になっているのかが。そんなパパの姿はもう見たくないと思っていた。今日も、そんなパパにウンザリで、仏頂面のリュシアンに声を掛けて来たのが、ジャックの親友であり、家族ぐるみの付き合いもしているアンドレ(アンドレ・デュソリエ)だった。アンドレは浮かない顔のリュシアンにゆっくりと、穏やかに話し始める。ジャックがどうしてピエロになって、みんなを笑わせているのかを…。

picこうして話は10数年前にさかのぼって行きます。フランスが、ドイツ占領下の時代、第二次世界大戦末期の頃へ。捕虜となったフランス人4人と、ドイツ兵との心の交流は私たちに人間としてのあり方、優しさを考えさせてくれます。

この物語には、とあるピエロがでてきますが、彼の笑いはみんなを落ち着かせ、勇気づけました。弱い立場の人間にとてつもない大きな力を与えたのです。

『クリクリのいた夏』でジャン・ベッケルとコンビを組んだ脚本家のセバスチャン・ジャプリゾが「笑いは最強の武器だ」と言っていましたが、本当にそのとおりだと思いました。そしてシャルル・トレネの『よろこびのうた』が、思い出も記憶も包み込み、希望をのせて私たちの中に残っていくことと思います。

(cotd)



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