マリー・アントワネットの首飾り
THE AFFAIR OF THE NECKLACE
(2001年 アメリカ 118分)
2005年6月4日から6月10日まで上映 ■監督・制作 チャールズ・シャイア
■脚本 ジョン・スウィート
■衣装デザイン ミレーネ・カノネロ

■出演 ヒラリー・スワンク/サイモン・ベイカー/エイドリアン・ブロディ/ジョナサン・ブライス/クリストファー・ウォーケン/ブライアン・コックス

(C)日本ヘラルド映画

フランス革命を導いた要因

その1 七年戦争のロスバッハでの敗北
その2 オランダ戦争における外交の失敗
その3 王室最大のスキャンダル「首飾り事件」

picナポレオン・ボナパルトがそう言い残しているように、かつて王室のみならず国全体をも巻き込んだ「首飾り事件」。このスキャンダルを創り上げたのが、たった25歳の一人の女性であった事をご存知だろうか。ジャンヌ・ド・ラ・モット=ヴァロア(ヒラリー・スワンク)。800年続いたフランス王朝を終幕に導き、王妃マリー・アントワネットとルイ16世を断頭台へと送り込んだ人物である。もともと彼女は、自らの名誉と誇りを取り戻したかっただけで、誰かを傷つけるつもりなどなかった。だが、復讐劇というのは時に思いもよらない方向に暴走するもので、結果この事件に後押しされ革命へと向かっていったのである。

picかつて王位にもついていたフランスの名門ヴァロア家。しかしジャンヌの父の時代に政敵の罠によって両親ともに死亡、ジャンヌは幼い妹と二人わずか9歳で孤児になり、高貴な身分を証明するものはたった一枚の家系図のみとなってしまった。以後ジャンヌは、かつての高貴な身分と屋敷を取り戻すために全生涯を賭けて生きていく事になる。やがて22歳になったジャンヌは小貴族の将校と結婚する。「伯爵夫人」という称号が欲しかったからである。自分の血筋に誇りを持っていたジャンヌは、名門に相応しい生活がしたくて頭が一杯になっていた。名門貴族と自ら周囲に言いふらして借金するも、それは返済のために雪だるま式に膨れ上がり、身動きが取れない。そして考えついたのが、「首飾り事件」なのだ。

ジャンヌは強い意志を持った頭の切れる女性だ。とても200年も前の女性とは思えない、大胆で胆の座った女性である。これまで描かれてきた伯爵夫人ジャンヌは、品がなくてずる賢い詐欺女、といった印象がある。しかしこの作品では、気丈で誇り高く、これまでと違うイメージで描かれているのが斬新だ。そして、見どころの一つでもあるのがアカデミー賞衣装デザイン賞にノミネートされた豪華絢爛な衣装と、映像である。驚くことに、たった一日とはいえヴェルサイユ宮殿での撮影を許可されている。有名な鏡の間での撮影も成功し、映画をよりいっそう盛り上げている。

(cotd)


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ボーイズ・ドント・クライ
BOYS DON'T CRY
(1999年 アメリカ 119分 PG-12
pic 2005年6月4日から6月10日まで上映 ■監督・脚本 キンバリー・ピアース
■脚本 アンディ・ビーネン
■出演 ヒラリー・スランク/クロエ・セヴィニー/ピーター・サースガード

■1999年アカデミー賞主演女優賞受賞(ヒラリー・スワンク)・助演女優賞ノミネート(クロエ・セヴィニー)/1999年インディペンデント・スピリット賞主演女優賞受賞ほか

(C)2003 TWENTIETH CENTURY FOX

見終わった後に、こんなにもやるせない気持ちを引き起こす映画は滅多にないだろう。決して後味がいい類の映画ではない。それでも私達はこの映画を観なくてはいけない。これは実際に起きた事件なのだ。

1993年、ネブラスカ州リンカーン。ブランドンは隣町のフォールズ・シティのバーで、元詐欺師のジョンらと知り合って意気投合。そして彼らの仲間ラナを見た途端、恋に落ちる。地元の男たちにはない、ブランドンのソフトで優しい態度に、ラナをはじめ誰もが魅了された。ラナとの恋に夢中になったブランドンはすっかりフォールズ・シティに居つき、ジョンらとともに徒党を組み、酒を飲んではパーティーに明け暮れていた。そんなある日、ひとつの事件がきっかけでブランドンが隠していた秘密が暴かれてしまう。彼が本当はティーナ・ブランドンという名前の「女」であるということ。そしてそこから、悲劇は始まった…。

pic性同一性障害とは、国際的な疾病分類に記載され、診断基準が設けられている疾患である。性別の自己認知が体の性別と一致していないことを差す。例えばこの映画のブランドンのように、体は女性でも自分自身では男性と感じている。しかしここで一般的に誤解があるのは、性同一性障害は精神疾患ではないということだ。間違っているのは精神ではなく、身体である。ブランドン・ティーナは「男になりたかった女」ではなく、「女の身体を持ち合わせてしまった男」だ。そしてこれは、自分らしく生きようとしたために、起きてしまった事件である。

これが実際に起きた事件であると思うと、耐えられない痛みに襲われる。誰でも本来の自分らしく生きたいと思っている。自分に正直に生きようとすることが、そんなに罪なことなのか。何が正しくて、何が間違っているのか──この映画を観た後に感じる痛みこそ、その答えなのかもしれない。

「いつか私たちが、それぞれの違いを受け入れるだけでなく、違いがあるということを喜べる日が来ることを祈っています」

これはこの映画でアカデミー賞を受賞したヒラリー・スワンクの受賞スピーチの言葉。この映画を観る人が増えることで、そんな日が一日も早く来ればいい。

(mana)



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