ケス
KES
(1969年 イギリス 112分)
2003年7月12日から7月18日まで上映
■監督・脚本 ケン・ローチ
■原作・脚本 バリー・ハインズ
■脚本 トニー・ガーネット
■出演 デヴィッド・ブラッドレイ/リン・ペリー/コリン・ウェランド/フレディ・フレッチャー
『大人は判ってくれない』イギリス版といわれた伝説の傑作。
舞台はヨークシャー地方の炭鉱町。15歳の少年ビリーが主人公である。ビリーは、父親が家出していて、人生に疲れ果てた母親と炭鉱で働く粗暴な兄との3人暮らし。スポーツが下手で、夢見がちなビリーは、同級生からいつもからかわれている。そんな毎日の中で、ビリーはハヤブサの雛を飼い始め、大空を美しく飛び回る‘仲間’を見つけたのだった…。
ビリーは雛を‘ケス’と名付けた。大人たちのつくりあげた価値観に反発を感じていたビリーにとって、ケスはたった一人の友達だったのかもしれない。
誰もが過ごしたあの大人でも子供でもない季節。懐かしい時代。その中で一つは持っていた心の宝物。『ケス』は私達がすでに失ってしまった大切な宝物をあたたかく思い出させてくれるフィルムだ。
独特のユーモア、リアリズム、優しさ、そして繊細さをもって日常生活の痛みや悲しみを表現し、同時に人々の温かい関係を描こうとするケン・ローチ監督自身が、一番好きな作品だと語る初期の伝説のフィルムである。
1969年カルロヴィ・ヴァリ映画祭グランプリ受賞作。
SWEET SIXTEEN
SWEET SIXTEEN
(2002年 イギリス/ドイツ/スペイン 106分)
2003年7月12日から7月18日まで上映
■監督 ケン・ローチ
■脚本 ポール・ラヴァーティ
■出演 マーティン・コムストン/ミッシェル・クルター/アンマリー・フルトン/ウィリアム・ルアン/ゲイリー・マコーマック
■2002年カンヌ国際映画祭脚本賞受賞・パルムドールノミネート
(C)シネカノン緑と水の豊かな美しい風景が広がるスコットランドの田舎町。まもなく16歳になるリアムは、服役中の母ジーンが彼の誕生日前日に釈放されることを機に、今の生活を抜け出す決意をしていた。
チンピラどもの手の届かない安息の場所で、母、姉と送るささやかながらも幸せな生活。まだ味わった事のない、夢に見た暖かい家族のぬくもり。だがそのためにはまずお金を貯めなければならない。リアムが親友ピンボールを始めた計画は、大きなトラブルを巻き起こし深みにはまって行くのだった…。
世界中の多くのクリエーターがリスペクトするイギリスの至宝ケン・ローチ監督。本作は2002年カンヌ国際映画祭で全てのマスコミが絶賛し、脚本賞を受賞。彼の最高傑作とも評された。
ローチは常に社会に対する鋭い批評性と、人間を見つめる厳しくも優しいまなざしを持っている。本作の背景にも児童虐待、家族、ドラッグ、失業など様々な問題が複雑に絡み合いながら横たわっているが、今回は社会性よりも特にドラマ性が突出した輝きを見せている。
厳しい現実から抜け出そうともがき苦しむ少年たちの焦燥感、母を想う無垢な心と親友との葛藤、少年期に特有の無軌道な高揚感、そんな青春の光と影をカメラはすくい取り、少年たちのヒリヒリする様な心の叫びを見事に描き出す。
15歳の少年リアムが、知恵と勇気でストリートを生き抜く姿は観る者全ての胸に突き刺さるような深くて切ない感動を残すだろう。
撮影当時、スコットランド・リーグでプロサッカー選手として活躍していたマーティン・コムストンはリアムの純粋さとしたたかさを併せ持ち、様々な表情を見せる難役を演じきった。