北京ヴァイオリン
TOGETHER
(2002年 中国 117分)
2003年12月13日から12月19日まで上映
■監督・脚本・出演 チェン・カイコー
■脚本 シュエ・シャオルー
■出演 タン・ユン/リウ・ペイチー/ワン・チーウエン/チェン・ホン/チェン・チアン/チャン・チン
中国東部の美しい田舎町。ヴァイオリンを得意とする13歳のチュンは、父親リウと二人、慎ましく暮らしている。チュンの大切にしているヴァイオリンは、顔も知らない母の大切な形見だ。
息子の才能を誰よりも信じ、息子のヴァイオリニストとしての成功を心から願い、そのために大奮闘する父親。そこには息子に幸せになってほしいというひたすら純粋な思いしかない。
ある日、二人はコンクール出場のために北京へ旅立つ。惜しくも受賞こそ逃したけれど、父は息子に天賦の才能があることを再認識し、なけなしの金をはたいて息子と一緒に北京に移り住む決意をするのであった。
チュンは父のはたらきかけでヴァイオリンの個人授業を受けることになり、練習に励む。田舎とはうってかわって急激な変化を遂げる競争社会の大都会は、少年の心に影を落としたが、ユニークなヴァイオリン教師や、母的なものを感じさせる女性との出会いに次第に心を和ませていく。また周囲の人も彼のヴァイオリンに心がいやされていくのであった。
やがてチュンは世界にはばたくための大きなチャンスをつかむ。だが、それは愛する父との別れを意味していた。そんな折、少年の出生の秘密も明らかにされ…。心は乱れる中、果たして少年の選びとった道とは…?
ハリウッド進出を果たしたチェン・カイコーが、再び舞台をホームグランドである中国に移し、大都会北京で懸命に生きる地方出身の父子の絆と、2人をとりまく市井の人々との絆をあたたかく描いた感動作。
そしてその絆に大きな力をあたえてくれる重要な役割を果たすのが音楽だ。リスト、ドヴィッシー、チャイコフスキー等、数々のクラシック音楽の調べが、登場人物の気持ちに寄り添うように全編を彩っている。
主演のタン・ユンは、実際にヴァイオリニストを目指して音楽学校に通う学生で、映画初出演ながら新鮮な魅力あふれる演技をみせてくれる。
2002年、サン・セバスチャン国際映画祭で最優秀監督賞を受賞。
(カツオ)
小さな中国のお針子
BALZAC ET LA PETITE TAILLEUSE CHINOISE
(2002年 フランス 110分)
2003年12月13日から12月19日まで上映
■監督・脚本・原作 ダイ・シージェ
■脚本ナディーヌ・ペロン
■出演 ジョウ・シュン/チェン・クン/リウ・イエ/ツォン・チーチュン
舞台は1971年、中国。文化大革命の嵐が吹き荒れる中、医者という知識階級を両親に持ったために、青年ルオーとマーは、反革命分子の子として山奥深くの村に送りこまれる。農村での厳しい労働を通して、再教育を受けるためだ。
この村は文明と呼ばれるすべてのものから隔離され、時間が止まったような不思議な空間であった。ここで2人は美しいお針子と出会う。
美しいお針子に恋をした彼ら。3人は当時の体制化で禁じられていた本をきっかけとして、愛と友情で深くむすびついていく。
文字の読めない彼女を喜ばせようと、物語を語り聞かせる青年。やがて恋人となったルオが語り聞かせるバルザックの小説にすっかり夢中になるお針子。
彼女は言う。バルザックは女性を美しく描くから好きなのだと。様々な本から多様な価値観、そして自由を知ることになったお針子は、それまで想像もしなかった未知の世界が、自分の前に開けていることに気付くのであった…。
原作はフランスで40万部を越す大ベストセラーである『バルザックと小さな中国のお針子』。著者は、フランス在住の中国人作家、ダイ・シージェ。彼の青春時代の思い出をベースに描かれた本作は、原作の面白さをそのまま、いやそれ以上に、もともと映画監督であるシージェ自らが詩情あふれる美しい作品に仕立てた。
2002年カンヌ映画祭‘ある視点’部門オープニング作品として世界初上映され、ラストの、お針子の決断は、大きな感動をよんだ。また、ロケ地の幻想的な湖南省・張家界の風景は、この恋愛物語に、無限の想像力と夢を与えている。