【2024/6/8(土)~6/14(金)】『エグザイル/絆 』+『ブレイキング・ニュース』/ 『柔道龍虎房』+『暗戦 デッドエンド』// 特別レイトショー『城市特警』

<杜 琪峯 JOHNNIE TO PROFILE>

1955年香港生まれ。80年代後半より映画監督となる。

96年に製作会社「銀河映像/Milky way Image」をワイ・カーファイと共に設立。独自の作風を全面に打ち出すようになり、レオン・ライ、そして盟友ラウ・チンワンを主演に迎えた『ヒーロー・ネバー・ダイ』といった傑作を続々と輩出するようになる。

一方、大スターを起用せず、男の静かな友情を描いた金字塔とも言うべき傑作『ザ・ミッション/非情の掟』を発表し、香港金像奨監督賞を獲得。満を持して発表した『エレクション』は完成度の高さから、カンヌ映画祭パルムドール候補に選ばれた。直後に公開された『エグザイル/絆』の世界的大成功、ハリウッドでのリメイク決定などを受けてその名声と人気を不動のものとした。最も国際的に注目されているアジア人作家の一人として、09年にはフランスから芸術文化勲章を授与され、香港の監督として初めて、世界三大映画祭(2008年ヴェネチア国際映画祭、2011年カンヌ国際映画祭、2023年ベルリン国際映画祭)のメインコンペティション部門の審査員に招待された。

現在までに香港電影金像奨で3度の監督賞、金馬奨で3度の監督賞を受賞している。香港電影金像奨の監督賞に18回、金馬奨の監督賞に8回ノミネートされており、最も多くノミネートされている監督である。

ミ・ナミ

私がジョニー・トーの作品にはじめて触れたのは、2013年の『奪命金』でした。虚構とリアルのかなりきわどい線を行く人間たちの作劇に、アクの強い容貌に似合わぬ飄々としたラウ・チンワンの立ち居振る舞い。2010年欧州ソブリン危機の際の香港を舞台にしているという実は骨の太い設定もまた魅力的なものでした。フィルモグラフィーの中ではややおとなしめであるという『奪命金』を観たため、ジョニー・トーのジョニー・トーたる所以であるアクション描写を備えた『エグザイル/絆』を観たときの驚きもまた忘れられません。ジョニー・トーの代名詞とされる、いわゆる“壮絶なガンアクション”…のみならず、その先に待ち受ける激烈かつエモーショナルなワンショットにこそ、魂が宿る。己の映画についての態度をここまで維持するシネアストというのは、もはや稀有な存在なように思います。

厚い友情と非情な裏切り、徹底した暴力という主題が彩るジャンルものとして評価されることを厭う様子の全くないところもジョニー・トー作品の美点であると、私は思います。その一方、かつて香港がイギリスの統治を受けていたという歴史的現実を背負う『城市特警』がわかりやすいように、香港の映画監督というジョニー・トーのアイデンティティが映画のそこかしこに見受けられるのも、私が彼を映画監督として信頼する理由です。爆発と血しぶきの中にある矜持とインテリジェンス―こんな硬い言い回しを本人は忌避するかもしれませんが、そう言うべきものなのかもしれません。

また、ジョニー・トーの映画はそのまま、香港名優陣のカタログと言っても過言ではありません。先ほど挙げたラウ・チンワンはもちろん、アンソニー・ウォン、フランシス・ン、ニック・チョン、ラム・シュー、レイ・チーホン、サイモン・ヤム…誰をとっても唯一無二のコクと味わい深さで、何度見ても飽きることがありません。

今週の早稲田松竹は、『エグザイル/絆』『ブレイキング・ニュース』『柔道龍虎房』『暗戦 デッドエンド』、そしてレイトショーとして『城市特警』を上映いたします。ジョニー・トーのオリジンをたずねる5作品。大きなスクリーンで味わうジョニー・トーの美学とパッション、ぜひ全身に浴びに来ていただければ幸いです。

エグザイル/絆 デジタルリマスター版
Exiled

ジョニー・トー監督作品/2006年/香港・中国/109分/DCP/シネスコ

■監督・製作 ジョニー・トー
■脚本 セット・カムユエン/イップ・ティンシン/ミルキーウェイ創作組
■アクション指導 ウォン・チーワイ/リー・チュンポン
■撮影 チェン・シウキョン
■編集 デイビッド・リチャードソン
■音楽 ガイ・ゼラファ/デイブ・クロッツ

■出演 アンソニー・ウォン/フランシス・ン/ニック・チョン/ジョシー・ホー/リッチー・レン/ロイ・チョン/ラム・シュー/サイモン・ヤム/ラム・カートン/エディ・チョン/ホイ・シウホン

■2006年ベネチア国際映画祭コンペティション部門正式出品/台湾金馬奨最優秀アクション奨受賞/香港映画批評家賞最優秀監督賞受賞/アジアン・フィルム・アワード最優秀作品賞監督賞ノミネート/第8回東京フィルメックスアニエスベー・アワード(観客賞)受賞

© 2006 Media Asia Films (BVI) Ltd. All Rights Reserved.
(AMGエンタテインメント提供)

【2024/6/8(土)~6/14(金)上映】

彼らこそ、最高だった。

かつて仲間だった5人だが、今は立場を違えていた。ボスを狙撃して逃亡していたウーを、ボスの命令で殺しにきたブレイズとファット、そのウーを守るために来たタイとキャット。再会は銃撃戦となり、運命の歯車が動き出す…。変わりゆく時代の策略にさらされる5人の絆。ラスト、男たちは約束を守るため再び戻る…彼らのあの日へ。

すべてを即興で演じ、現実の絆を結んだ俳優たち。世界中の映画ファンを興奮させた傑作!

初期の代表作『ミッション/非情の掟』のメインキャストが再集結した『エグザイル/絆』。続編的な企画として始まったものの途中から変更され、トー監督が、とにかく自分の取りたい画を撮り、そこから作品の内容を決めていくという即興的なスタイルで作られていった。

物語の中心となる5人の男には、『インファナル・アフェア』シリーズのアンソニー・ウォン、『インファナル・アフェアⅡ』のフランシス・ンをはじめ、ロイ・チョン、ラム・シュ、ニック・チョンいずれもがジョニー・トー組。また、サイモン・ヤム、ラム・カートン、リッチー・レンらジョニー・トー作品でおなじみの俳優が脇を固める。脚本はなくすべてが即興の演技。気心のしれた信頼する仲間たちでなければできないからこそ、本作には幸福感があふれている。

物語が二転三転するたびに「これぞクライマックス」と思わせる目を奪う銃撃戦が展開される。バレエのバリエーションのようなコレオグラフィックなその名シーンは、まさに映画史に記憶される素晴らしさだ。そして映画は、名作『ワイルドバンチ』を彷彿させる見事なフィナーレへ。新たな時代へと変わりゆく中で、自分のルールでしか生きられない男たちの絆が、美しく現代に甦る。

ブレイキング・ニュース デジタルリマスター版
Breaking News

ジョニー・トー監督作品/2004年/香港・中国/89分/DCP/シネスコ

■監督 ジョニー・トー
■脚本 イップ・ティンシン/チャン・ヒンカイ/ミルキーウェイ創作組
■武術指導 ユン・ブン
■現場監督 ロー・ウィンチョン
■撮影 チェン・シウキョン
■編集 デイビッド・リチャードソン
■音楽 チュン・チーウィン/ベン・チョン

■出演 ケリー・チャン/ニック・チョン/リッチー・レン/サイモン・ヤム/ホイ・シウホン/ラム・シュー/マギー・シュウ/エディ・チョン/ユウ・ヨン

■2004年カンヌ国際映画祭特別招待作品/東京国際映画祭正式出品/台湾金馬映画賞監督賞・編集賞受賞/第37回カタロニア国際映画祭最優秀監督賞受賞

© 2004 Media Asia Films (BVI) Ltd. All Rights Reserved.
(AMGエンタテインメント提供)

【2024/6/8(土)~6/14(金)上映】

警察 VS 強盗団――世紀の"ライブショー”開幕!

香港の市街地で、警察と銀行強盗団による銃撃戦が発生。激しい攻防戦が続くなか、犯人に銃を向けられた、ひとりの警官が両手を挙げて命乞いをしてしまう。偶然にも、その瞬間を現場に居合わせたTVカメラマンが捉えていた。さらにCID(重犯罪特捜班)のチョン警部補は、ユアン率いる犯人グループを取り逃がしてしまう…。

圧巻のオープニング7分間&クライマックス1カットの長回し! 600万人の香港市民が見守るブレイキング・ニュース<大事件>の結末は?!

先の読めないストーリー展開と独特な映像美で香港はもとより全世界を唸らせる監督、ジョニー・トー。本作『ブレイキング・ニュース』は、スタイリッシュ・ノワールの巨匠が、冒頭7分間に及ぶワンカット・ワンシーンの銃撃戦や息詰まる心理戦など、新たな挑戦を試みた意欲作。ハードなアクション、警察機構と犯人側とのメディアを巻き込んだ火花散る心理戦。まさに最後まで目が離せない、パワーに圧倒される超一級エンターテインメント!

大胆なメディア戦略を行う新任指揮官・レベッカを演じるのは『インファナル・アフェア』『冷静と情熱のあいだ』のケリー・チャン。強盗団のリーダー、ユアンを演じるのは『星願/あなたにもういちど』『ゴージャス』のリッチー・レン。そして2人の心理戦に挟まれながら現場を捜査するチョン警部補には『ゴッド・ギャンブラー』『決戦・紫禁城』のニック・チョン。その他、ラム・シュー、サイモン・ヤム、ホウ・シウホンら、トー作品でおなじみの俳優が共演。また、チャン・イーモウ作品などで活躍するユウ・ヨンが強盗団のリーダー、ユアンと心を通わせる殺し屋を演じ、作品により一層深みを与えている。

柔道龍虎房
Throw Down

ジョニー・トー監督作品/2004年/香港/95分/DCP/シネスコ

■監督 ジョニー・トー
■プロデューサー ジョニー・トー/スティーヴン・ラム
■武術指導 ユン・ブン
■脚本 ヤウ・ナイホイ/イップ・ティンシン/オー・キンイー
■撮影 チェン・シュウキョン
■編集 デイビッド・リチャードソン
■音楽 トニー・ユー

■出演 ルイス・クー/アーロン・クォック/チェリー・イン/レオン・カーファイ/ロー・ホイパン/カルヴァン・チョイ/チョン・シウファイ/ジャック・カオ

■第41回金馬奨最優秀脚本賞受賞

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(JAIHO提供)

【2024/6/8(土)~6/14(金)上映】

泣いてもいいから前を見ろ!

数年前に突然柔道を辞めた伝説の選手シト・ポウは、今は雇われマスター兼バンドリーダーとして酒場でギターを弾き、酒に溺れ自堕落な生活を送っていた。そんな時、トニーという男が酒場に現れて柔道の勝負を挑む。最初は無視していたシトだが、突然、ステージに上がってサキソフォンを吹き出すトニーをなぜか気に入るようになる。やがて、日本で歌手になることを夢見る女性シウモンが酒場に現れ、奇妙な3人の生活が始まる。さらに現役時代のライバル、レイ・アコンがやってくるなど、シトの酒場は柔道の技を競い、果たせなかった夢を叶える場所となっていく…。

香港の巨匠ジョニー・トーが黒澤明監督に敬意を表し絶頂期2004年に発表した傑作

『ヒーロー・ネバー・ダイ』、『暗戦 デッドエンド』、『ザ・ミッション/非情の掟』などの成功で、世界で最も注目される香港の映画作家となったジョニー・トー監督が、その絶頂期2004年に発表した傑作群の1本。日本発祥の格闘技、柔道をモチーフに、黒澤明監督に敬意を表し、同時に70年代に香港で放映され大人気となった竹脇無我主演のTV版「姿三四郎」(1970)の主題歌も引用してオマージュを捧げた異色の青春アクション映画。第41回金馬奨で最優秀脚本賞を受賞した。

暗戦 デッドエンド
Running out of Time

ジョニー・トー監督作品/1999年/香港/93分/DCP/ビスタ

■監督・製作 ジョニー・トー
■脚本 ヤウ・ナイホイ/ロラン・クルティオ/ジュリアン・カーボン
■撮影 チェン・シウキョン

■出演 アンディ・ラウ/ラウ・チンワン/ヨーヨー・モン/レイ・チーホン/ホイ・シューハン/ラム・シュー

■第19回香港電影金像奨主演男優賞受賞

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【2024/6/8(土)~6/14(金)上映】

命の期限(デッドエンド)まであと72時間。男が挑んだ最期の完全犯罪(ゲーム)!

末期のガンで余命4週間と宣告された男が完全犯罪を計画し、高層ビルの最上階にある大手コンサルティング会社で支配人を人質に取って立て籠ると、香港警察屈指の交渉人ホーを交渉相手に指名し、72時間のゲームをしようと挑む。だが、男は鮮やかなトリックで現場から逃走してしまう。ホーは警察を翻弄しながら犯行を重ねる男を追う中、彼が善人を傷つけないというポリシーを持ち、さらに何か大きな意図を持っていることに気付く。やがて、ホーはインターポールからの情報で、彼の父親がマフィアの罠にはめられ、1年前に死亡していることを知る…。

香港を代表する巨匠ジョニー・トー×主演アンディ・ラウが贈る究極の犯罪ゲーム

ジョニー・トーが1999年に発表した傑作犯罪サスペンス。第19回香港電影金像奨でアンディ・ラウが初めて最優秀主演男優賞を獲得、第5回香港電影金紫荊獎では最優秀脚本賞を受賞した。香港で興収1465万香港ドルをあげるロングラン・ヒットとなり、2001年に続編『デッドエンド 暗戦リターンズ』が製作された。

【レイトショー】城市特警
【Late Show】The Big Heat

ジョニー・トー | アンドリュー・カム監督作品/1988年/香港/97分/DCP/ビスタ

■監督 ジョニー・トー/アンドリュー・カム
■製作 ツイ・ハーク
■アクション指導 フィリップ・クォク ほか
■脚本 ゴードン・チャン
■撮影 ウォン・ウィンハン
■編集 デイヴィッド・ウー
■音楽 ロー・ターヨウ

■出演 リー・チーホン/ジョイ・ウォン/マシュー・ウォン/フリィップ・クォク/ライオネル・ロー/チュウ・コウ/カーク・ウォン/ロイ・チョン

© 2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.
(JAIHO提供)

【2024/6/8(土)~6/14(金)上映】

城市特警<シティ・コップス> VS 麻薬マフィア 最・終・決・戦!

香港警察の敏腕捜査官ウォン警部は、銃撃戦の最中に脊髄神経からくる手の痺れに襲われたことから引退を決意する。だが、かつて危険な現場で命をかけた捜査を協力して行った元相棒で親友でもあったツェがマレーシアでの潜入捜査中に惨殺されたとの知らせを受け、引退を延期してツェを殺した犯人を追う。やがてツェ殺害の黒幕が、コカイン密売組織のボス、ハン・チンであることがわかるが、組織は捜査関係者を次々と殺害し、コカイン密輸の証拠も消していく。ウォンと彼の捜査チームはハン・チンの悪事の決定的証拠を掴むが、武装した集団の襲撃を受け、一人また一人と命を落としていく。満身創痍の中、ウォンは怒りの銃弾をハン・チンに向ける…。

ツイ・ハーク、ゴードン・チャン、ジョニー・トー…、香港の鬼才たちがタッグを組んだバイオレンス満載のポリス・アクション

大ヒット作『男たちの挽歌』(1986)でブレイクしたレイ・チーホンを主演にツイ・ハークが製作したバイオレンス満載のポリス・アクション。当初テレビ界出身の新鋭として注目されていたジョニー・トー単独監督作だったが、ツイ・ハークの介入でハークのアシスタントを数多く務めたアンドリュー・カムとの共同監督作となり、1988年にようやく公開された。ジョニー・トーは後にこの映画の現場を「カオスだった」と語っている。中国への返還が迫り、犯罪が激増する香港の苦悩を描いた脚本はその後エース監督となる『デッドヒート』(1995)などのゴードン・チャン。アクション指導は主人公の同僚刑事役で出演もしている『狼たちの絆』(1991)のフィリップ・クォク他。