【2024/5/25(土)~5/31(金)】『レザボア・ドッグス』『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』『ストップ・メイキング・センス』

もっさ

早稲田松竹の5月のラインアップチラシはご覧になりましたでしょうか。この特集のメインビジュアルにも使われておりますね。どうです? この表情! 今週の早稲田松竹は、1992年に公開されたハーヴェイ・カイテル主演作の2本立て。どちらもハーヴェイ無くしては存在しなかったであろう傑作です。

1本目は、アメリカインディーズ映画の鬼才アベル・フェラーラ監督作『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』。汚職まみれの主人公LTは、見事なまでに最低最悪すぎて、魅力ゼロどころかマイナス100。監督が描き続けてきたテーマである聖と俗の葛藤も、LTのキャラクターだけを追っていると説得力に欠けそうなほどクソ野郎です。しかし、本作の見どころはとにかく「すべてを晒せ」というキャッチコピーの通り、全てを晒すハーヴェイにあり! 説明なんてなくても伝わるLTの生き様をその身一つで語ってしまうハーヴェイ様。とにかくすごいです。一体何を見せられているのか…これは映画なのか、ハーヴェイ・カイテルの日常なのか?(そんなわけない)と錯覚するほどに、終始圧倒されてしまいます。そして、ラストに待ち受けるのはあの表情。もぅ…嫌悪感を抱いていたはずなのに、気付いたらエンドロールで泣いてました、私。

2本目の『レザボア・ドッグス』はクエンティン・タランティーノの長編監督デビュー作。これがデビュー作とは思えない完成度の高さに驚きです。さて、本作でのハーヴェイは『バッド・ルーテナント~』と打って変わって、超絶イイ男に変身します。宝石店襲撃に失敗した強盗たちの確執を描いた本作。強盗のために集められたメンバーはそれぞれ色のコードネームを付けられます。ハーヴェイが演じるMr.ホワイトは、メンバーの中でも経験豊富な年長者。渋くて落ち着きがあり、情にアツくて慈悲深いところが魅力的なイケおじギャングです。

そのカッコ良さは物語に留まりません。もともとハーヴェイ・カイテルのファンだったというタランティーノ監督。20代後半の彼が自主映画を撮るべく書き上げた本作の脚本が、巡り巡ってハーヴェイの元に。脚本を気に入ったハーヴェイが、出演のみならずプロデュースしたいと名乗りを上げたのです。キャスティングについても「ニューヨークでオーディションした方がいい」と助言し、その費用を全額負担してくれたんだとか。そのお陰で、ティム・ロスやマイケル・マドセン、スティーヴ・ブシェミという超個性派の若手俳優を揃えることができたんですね。そうして進んだ企画はもう言わずもがな。ストーリーはもちろん、キャスティングもバチバチにハマってキマッてます。ハーヴェイがいなければこの形では存在しなかったであろう奇跡の作品なのです。

1992年に公開された両作品が、どういうわけか共に同じタイミングでデジタルリマスターされスクリーンに戻ってきました。公開当時に観た方も、レンタルや配信でしか観たことのない方も、これから初めて観る方も、30年の時を経ても変わらぬ名画を、ぜひ劇場でご堪能ください。そして、ハーヴェイ・カイテルの魅力に浸りましょう!

バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト
Bad Lieutenant

アベル・フェラーラ監督作品/1992年/アメリカ/96分/DCP/R15+/ビスタ

■監督 アベル・フェラーラ
■製作 エドワード・R・プレスマン/メアリー・ケイン
■脚本 ゾーイ・ルンド/アベル・フェラーラ
■撮影 ケン・ケルシュ
■音楽 ジョー・デリア
 
■出演 ハーヴェイ・カイテル/ゾーイ・ルンド/ヴィクター・アルゴ/ポール・ヒップ

■第45回 カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品/1992年インディペンデント・スピリット賞主演男優賞受賞、作品賞・監督賞ノミネート

© 1992 Bad Lt. PRODUCTIONS, INC

【2024/5/25(土)~5/31(金)上映】

すべてを晒せ。

ニューヨークの警部補LTは、よき家庭人としての顔も持ちながらもドラッグやセックスに溺れ、警官としても人間としてもあるまじき行為に明け暮れる男。ある日、教会の尼僧が何者かに強姦されるというむごたらしい事件が起こる。LTは野球賭博の借金をカバーしようと懸賞金5万ドル目当てに躍起になるが、自分を犯した犯人を許そうとする尼僧の気高さに触れて混乱に陥る。自らの悪行と崇高な信仰心の間で揺れるLTはある選択をするが…。

奇跡の怪優ハーヴェイ・カイテル×鬼才中の鬼才アベル・フェラーラ監督。2024年、この傑作に対峙する時がやってきた。

『ミーン・ストリート』、『タクシー・ドライバー』といったスコセッシ作品で名を馳せ、『ピアノ・レッスン』『スモーク』などで稀代の名優へと上り詰めたハーヴェイ・カイテル。彼が『レザボア・ドッグス』と同じ1992年に主演した代表作にして悪魔的怪作が、デジタルリマスターの美しい映像で復活を果たした。コカイン、アルコール、買春、野球賭博、汚職と、悪徳の限りを尽くすニューヨーク市ブロンクスの警部補LT。この映画史上希に見るアンチ・ヒーローが、善と悪、理性と欲望、信仰と背信の間で引き裂かれる様を丹念に追う本作は、神をも恐れぬショッキングなシーンの数々によって公開当時物議を醸すと同時に、批評家からはカトリシズムと贖罪を真っ向から描いた作品として高く評価された。全編にわたって強いアルコールに溺れているかのような酩酊感。きらびやかなネオンにあぶり出された大都市の闇のリアルな描写。そしてなんといってもあらゆる罪をむき出しの肉体に引き受け、怒り、慟哭し、果てるまで爆走するハーヴェイ・カイテルの演技。その壮絶な映像体験は観る者の感覚を麻痺させ、倫理観を揺さぶり、やがて究極のクライマックスへと導いていく。

監督はクリストファー・ウォーケン主演の『キング・オブ・ニューヨーク』、『フューネラル』、さらにはヴェネチア国際映画祭審査員特別賞受賞作『マリー ~もうひとりのマリア~』など、本国はもとより欧州で絶大な支持を集めるインディーズ映画界の重鎮、アベル・フェラーラ。一貫して聖と俗の葛藤を、暴力をもって描き続ける彼にとっても紛れもないマスターピースとして燦然と輝く本作。人間はどこまで堕ちることができるのか。地獄の世界にも神は存在するのか。そして魂の救済は誰の元にも訪れるのか。30年以上の時を超え、ついに奇跡の怪優と鬼才中の鬼才が放つ過激な傑作と対峙する時がやってきた。

レザボア・ドッグス デジタルリマスター版
Reservoir Dogs

クエンティン・タランティーノ監督作品/1992年/アメリカ/99分/DCP/PG12/シネスコ

■監督・脚本 クエンティン・タランティーノ
■製作 ローレンス・ベンダー
■撮影 アンジェイ・セクラ
■編集 サリー・メンケ
■音楽監修 カリン・ラクトマン/キャシー・ネルソン
 
■出演 ハーヴェイ・カイテル/ティム・ロス/クリス・ペン/スティーヴ・ブシェミ/ローレンス・ティアニー/マイケル・マドセン/エディ・バンカー/クエンティン・タランティーノ

■1992年サンダンス映画祭上映/1992年インディペンデント・スピリット賞助演男優賞受賞、監督賞・新人作品賞ノミネート

© 1991 Dog Eat Dog Productions, Inc. All Rights Reserved.

【2024/5/25(土)~5/31(金)上映】

全世界の度肝を抜いた鮮烈のバイオレンス!

計画を遂行するためだけに集められた6人の男たち。 狙いは宝飾店。準備も万全だった。 しかし、襲撃と同時に彼らは罠にハメられていたことに気づく。男たちは集合場所にたどり着くが、ある疑いを捨てきれない。 裏切者がいるのではないか? 男たちはぶつかり合い、やがて予想しなかった結末を迎える。

現代の映画は“ここ”から始まった。裏切り、信頼、忠誠が交錯する 史上最高のインディペンデント映画、30年ぶりに劇場公開

1992年、サンダンス映画祭で上映された1本の低予算映画が熱狂を巻き起こした。当時28歳の若手監督クエンティン・タランティーノの初長編作『レザボア・ドッグス』だ。登場人物は黒服のギャング、題材は銀行強盗。ありきたりなジャンル映画に思えたが本作は“すべて”が違った!

冒頭から観客を飲み込む勢いで繰り出されるギャングたちのムダ話、時制を組み替えることで生まれる驚きと発見、そしてこちらのテンションを弄ぶようなプロットと油断した瞬間に炸裂する衝撃的な展開…。大手メジャースタジオからは絶対に生まれない、映画を愛する者たちによる、映画を愛する者たちに向けた“俺たちの映画”の登場は世界各地で絶賛を集め、さらには本作を観た若者たちが“自分たちの映画”をつくりはじめた。現代の映画は“ここ”から始まったのだ。

日本では1993年4月の初公開以降、“聖地”である映画館からは長らく姿を消していた。いまも映画ファンに愛され続ける6人の“イヌたち”は、2024年の観客に決して消えることのない強烈な傷と衝撃を与えるにちがいない。

【レイトショー】ストップ・メイキング・センス 4Kレストア
【Late Show】Stop Making Sense

ジョナサン・デミ監督作品/1984年/アメリカ/89分/DCP/ビスタ

■監督 ジョナサン・デミ
■舞台構想 デイヴィッド・バーン
■製作 ゲイリー・ゴーツマン
■撮影 ジョーダン・クローネンウェス
■編集 リサ・デイ 
■タイトル パブロ・フェロ

■出演 デイヴィッド・バーン/ティナ・ウェイマス/クリス・フランツ/ジェリー・ハリスン/スティーヴ・スケールズ/リン・メイブリー/エドナ・ホルト/アレックス・ウィアー/バーニー・ウォーレル

© 1984 TALKING HEADS FILMS

【2024/5/25(土)~5/31(金)上映】

バンド結成50周年! ストップ・メイキング・センス映画公開40周年! 史上最高のトーキング・ヘッズを全身で浴びる熱狂の89分!

トーキング・ヘッズの伝説とも言われる、1983年12月ハリウッド・パンテージ・シアターでのライブ。デイヴィッド・バーンらによる躍動感溢れるパフォーマンスに、能楽からインスピレーションを得たというシンボリックな「ビッグスーツ」、エキセントリックなダンスとエキサイティングな演出が加わった、史上最高と称される圧巻の舞台だ。1992年から人知れず眠っていた本作のネガを執念で探し出し、サウンドはジェリー・ハリスン自ら監修した完全リマスター。収録から40年を経ても全く色褪せないこの最高級エンターテインメントを、A24が4Kレストア版でスクリーンに復活させた!

監督を務めたのは、2017年に惜しくもこの世を去った『羊たちの沈黙』『フィラデルフィア』で知られる名匠ジョナサン・デミ。本作以外にも『ニール・ヤング/ハート・オブ・ゴールド ~孤独の旅路~』、『ジャスティン・ティンバーレイク+ザ・テネシー・キッズ』など、コンサート映画も数多く監督している。