【2020/2/22(土)~2/27(木)】『レイジング・ブル』『キング・オブ・コメディ』// 特別レイトショー『タクシードライバー』

ルー

現代アメリカ映画界を代表する大監督マーティン・スコセッシが多岐に渡る長いキャリアの中で迎えた最初の頂点こそ、最高の盟友ロバート・デ・ニーロとタッグを組んだ今回上映する初期から中期の代表作三本です。この傑作群でデ・ニーロが演じたのは、善人とも悪人とも二分できない、複雑な感情と衝動を抱えた男です。風紀の乱れを嘆きながらも街の浄化政策を掲げる大統領候補者を暗殺しようとするタクシー運転手(『タクシードライバー』)。妄執にとらわれどん底を生きながらも闘い続けるボクサー(『レイジング・ブル』)。ひとりよがりな大事件を起こしながらも悪びれず栄光に向かって突っ走るコメディアン(『キング・オブ・コメディ』)。

常識的に考えれば彼らは皆あまりに不合理で破滅的で滑稽ですらあるのですが、自分の信念を貫き爆発させていくその生き様には、例え法に触れたとしても否定しようがない高貴な輝きが宿ります(実際に周囲にいたら迷惑でしょうが…)。「一度きりの人生、俺はとことん自分の道を進む。あんたはどうなんだい?」とこちらに挑発的に問いかけるようなデ・ニーロのギラついたまなざしに痺れてください。

キング・オブ・コメディ
The King of Comedy

マーティン・スコセッシ監督作品/1983年/アメリカ/109分/ブルーレイ/ビスタ

■監督 マーティン・スコセッシ
■脚本 ポール・D・ジマーマン
■撮影 フレッド・シュラー
■編集 セルマ・スクーンメイカー
■音楽 ロビー・ロバートソン

■出演 ロバート・デ・ニーロ/ジェリー・ルイス/ダイアン・アボット/ サンドラ・バーンハード/シェリー・ハック

■1983年カンヌ国際映画祭パルムドールノミネート/全米批評家協会賞助演女優賞受賞/英国アカデミー賞オリジナル脚本賞受賞・主演男優賞ほか3部門ノミネート

Images courtesy of Park Circus/20th Century Fox

【2020年2月22日から2月27日まで上映】

どん底で終わるより 一晩だけでもキングになりたい!

ニューヨークに住むパプキンは人気コメディアン、ジェリー・ラングフォードの大ファン。ある日、やはり熱狂的なラングフォード・ファンであるマーシャと知り合い、2人で大胆な作戦をくわだてる。なんとラングフォードを誘拐し、替わりにパプキンがTVショーに出演しようというのだ。ラングフォードを縛りあげ、TV局に向かうパプキンだが……。

画面にみなぎる不気味なリアリティーー背筋をつたうTV界の恐怖を描くショッキング・コメディ

第一作『ミーン・ストリート』で組んで以来、常にセンセーションを起こしてきた映画界のゴールデン・コンビ、主演ロバート・デ・ニーロ×監督マーティン・スコセッシのマニアックな演技・演出がカンヌ映画祭で騒然たる話題を呼んだドラマチック・コメディ。

脚本は元ニューズウィーク誌ライター、ポール・D・ジマーマンによるオリジナル。スターに対して偏執的妄想を抱くファンの異常心理が横行していた当時のアメリカのTV界の恐怖を衝いている。また、音楽は『ラスト・ワルツ』以来、スコセッシのお気に入りロビー・ロバートソン(元”ザ・バンド”リーダー)が担当した。

レイジング・ブル
Raging Bull

マーティン・スコセッシ監督作品/1980年/アメリカ/128分/ブルーレイ/ビスタ

■監督 マーティン・スコセッシ
■原作 ジェイク・ラモッタ
■脚本 ポール・シュレイダー/マーディク・マーティン
■撮影 マイケル・チャップマン
■編集 セルマ・スクーンメイカー
■音楽 レス・ラザロビッツ

■出演 ロバート・デ・ニーロ/キャシー・モリアーティ/ジョー・ペシ/フランク・ヴィンセント/ニコラス・コラサント/テレサ・サルダナ

■1980年アカデミー賞主演男優賞・編集賞受賞・作品賞・監督賞ほか4部門ノミネート/全米批評家協会賞助演男優賞・監督賞・撮影賞受賞/ゴールデングローブ賞男優賞受賞 ほか多数受賞

Images courtesy of Park Circus/MGM

【2020年2月22日から2月27日まで上映】

闘い続けることしか生きるすべを知らなかった野獣のような男の暗く苦いメモワール…

1949年、デトロイトのブリッグス・スタジアム。割れるような歓呼の中から、いま一人の英雄が誕生した。必殺のハンマー・パンチでフランスの英雄マルセル・セルダンを10ラウンドのリングに叩きつけ、世界ミドル級チャンピョンの王座に就いたジェイク・ラモッタ。人は彼を、その戦いぶり故に”ブロンクスの猛牛”と呼び喝采を送ったが、驚くべきその前半生を知り、後の数奇な運命の転変を予想する者はその場に一人としていなかった――。

デ・ニーロ×スコセッシの情熱がスクリーンに爆発する!

かっぱらい、暴行などあらゆる悪に染まったサウス・ブロンクスのスラムから這いあがり、不屈の闘魂で49年から51年のプロ・ボクシング世界ミドル級王座に君臨したジェイク・ラモッタ。史上類を見ない栄光と破滅の両極を歩んだ彼の半生を描く。

主演のロバート・デ・ニーロは、ラモッタ役にリアリティを与えるため、数ヶ月で25kgもの増量させるという驚異の役作りを魅せた。また、モデルとなったラモッタ自身がデ・ニーロに自らのファイティング・テクニックを伝授したことも話題となり、見事アカデミー賞主演男優賞に輝いた。

【特別レイトショー】タクシードライバー
【Late Show】Taxi Driver

マーティン・スコセッシ監督作品/1976年/アメリカ/114分/35mm/PG12/ビスタ/SR

■監督 マーティン・スコセッシ
■脚本 ポール・シュレイダー
■撮影 マイケル・チャップマン
■音楽 バーナード・ハーマン

■出演 ロバート・デ・ニーロ/シビル・シェパード/ピーター・ボイル/ジョディ・フォスター/アルバート・ブルックス/ハーヴェイ・カイテル

■1976年カンヌ国際映画祭パルム・ドール/アカデミー賞作品賞、主演男優賞、助演女優賞、作曲賞ノミネート/全米批評家協会監督賞・主演男優賞・助演女優賞受賞

©1976, renewed, 2004 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

【2020年2月22日から2月27日まで上映】

ニューヨークの夜が、ひそやかな何かをはらんで いま、明けてゆく…

ベトナム帰りのタクシードライバー、トラヴィス。彼は毎夜ニューヨークの街を流しながら、世の中への苛立ちを抱えていた。そんなある日、トラヴィスは大統領候補の選挙事務所に勤めるベッツィに目をつけ、デートの約束を取り付ける。しかし彼はこともあろうに彼女をポルノ映画館に連れて行き、絶交されてしまった。鬱屈した精神状態へと追い込まれるトラヴィス。やがて、闇のルートで強力な銃を手に入れ、自己鍛錬に励むようになるが…。

元ベトナム帰還兵のタクシードライバーを通して現代社会の病理を痛烈にえぐり出す、アメリカン・ニューシネマ最後の傑作

1976年のカンヌ映画祭パルム・ドールを受賞した、鬼才マーティン・スコセッシの出世作。お互いに心のふれあうことのない大都会で、ひとりの青年が自分の存在を必死で世間に認めさせようとする姿を描く。

主演のデ・ニーロは、本作の役作りとして毎日12時間、1カ月の間タクシードライバーとして過ごしたという。また、売春婦アイリス役は250人以上の応募者がいたオーディションで当時13歳のジョディ・フォス ターが勝ち取った。

音楽を担当したのは、ヒッチコック作品の多くを手掛けたバーナード・ハーマン。ニューヨークの乾いた空気を表現た音楽は秀逸。脚本は、『レイジング・ブル』の脚本も手掛けたポール・シュレイダー。後に『アメリカン・ジゴロ』など監督としても活躍し、近年では『魂のゆくえ』で監督・脚本を担当し高い評価を得ている。