【2019/12/21(土)~12/27(金)】『永遠に僕のもの』+『僕たちは希望という名の列車に乗った』// 特別レイトショー『恐るべき子供たち』

パズー

1956年、東ドイツ。ハンガリーの民衆蜂起のニュースに衝撃を受け、高校生たちは学校で2分間の黙祷を実行した。ベルリンの壁建設の5年前、まだ社会主義が信じられていた時代。進学校に通い青春を謳歌していた彼らの、ちょっとした思い付きと純粋な追悼ゆえの行動は、国家から不穏分子と見なされ、やがて彼らの家族までをも巻き込む事態となっていく。

1971年、アルゼンチン。17歳の少年カルリートスは、見惚れるほど美しい容姿をもち優しい両親のもとで育ちながら、しかしすべてに満たされていなかった。刺激を求め繰り返す窃盗や侵入。そのうち意気投合した級友ラモンとともに殺しもいとわない悪事に手を染めていく。カルリートスにとって罪を犯すことは、生を感じること。特別な感情を抱き、唯一の同士だと思っていたラモンが自分から離れていったとき、その狂気は加速していく。

今週の上映作品は、驚くことにどちらも実際の事件や出来事をもとにした若者たちの物語。自分たちの“正義”を信じた『僕たちは希望という名の列車に乗った』の高校生たちと、圧倒的な“悪”に己の生を見出そうとした『永遠に僕のもの』の少年。その方向は違えど、彼らは“自由”を渇望していた。

「生きてるんだ。楽しまなきゃ」と少年カルリートスは言う。若者たちは行動する。何かをせずにはいられない。それが国家や法律や家族にさえ背くことだとしても。一寸先はどうなるわからない若者たちの危うさや美しさが描かれた青春映画二本立てです。

僕たちは希望という名の列車に乗った
The Silent Revolution

ラース・クラウメ 監督作品/2018年/ドイツ/111分/DCP/PG12/シネスコ

■監督・脚本 ラース・クラウメ
■原作 ディートリッヒ・ガルスカ「沈黙する教室 1956年東ドイツ―自由のために国境を越えた高校生たちの真実の物語」(アルファベータブックス刊)
■撮影 イェンス・ハラント
■音楽 クリストフ・カイザー/ユリアン・マース

■出演 レオナルド・シャイヒャー/トム・グラメンツ/レナ・クレンク/ヨナス・ダスラー/イザイア・ミカルスキ/ロナルト・ツェアフェルト/ブルクハルト・クラウスナー

©Studiocanal GmbH Julia Terjung

【2019年12月21日から12月27日まで上映】

すべては、たった2分間の黙祷から始まった――

1956年、東ドイツの高校に通うテオとクルトは、列車に乗って訪れた西ベルリンの映画館でハンガリーの民衆蜂起を伝えるニュース映像を目の当たりにする。クラスの中心的な存在であるふたりは、級友たちに呼びかけて授業中に2分間の黙祷を実行した。それは自由を求めるハンガリー市民に共感した彼らの純粋な哀悼だったが、ソ連の影響下に置かれた東ドイツでは”社会主義国家への反逆”と見なされる行為だった。やがて調査に乗り出した当局から、一週間以内に首謀者を告げるよう宣告された生徒たちは、人生そのものに関わる重大な選択を迫られる…。

なぜ18歳の若者たちは国家を敵に回してしまったのか? ベルリンの壁建設の5年前に旧東ドイツで起こった衝撃と感動の実話

監督は、ナチスによる戦争犯罪の追及に執念を燃やした孤高の検事フリッツ・バウアーにスポットを当て、ドイツ映画賞6部門を制した『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』の気鋭ラース・クラウメ。原作者ディートリッヒ・ガルスカ自身の実体験を綴ったノンフィクションを、綿密なリサーチで迫真のサスペンスと繊細にして深みのある感動のドラマとして描き上げた。

また、注目すべきは本作のために発掘された新人俳優たちのフレッシュな魅力。そして『東ベルリンから来た女』のロナルト・ツェアフェルトら旧東ドイツ出身の実力派キャストたちが、過去の戦争や悲劇的な事実を語ることができない親たちの愛と葛藤を体現する。

無意識のうちに政治的タブーを犯してしまった若者たちが、仲間との友情や恋を育みながら、あるときはまっすぐに主張をぶつけ合い、人間として正しきこととは何かをひたむきに模索していく姿は観る者の心を強く揺さぶる。過酷な現実にさらされた彼らの、人生のすべてを懸けた決断とは? 希望を追い求めた若者たちの“小さな革命”を未来へと続く“列車”とともに描き上げた感動の実録青春映画!

永遠に僕のもの
The Angel

ルイス・オルテガ監督作品/2018年/アルゼンチン / スペイン /115分/DCP/R15+/ビスタ

■監督 ルイス・オルテガ
■製作 ペドロ・アルモドバル/アグスティン・アルモドバル/ハビエル・ブリア
■脚本 ルイス・オルテガ/セルヒオ・オルギン
■撮影 フリアン・アペステギア/ロドルフォ・パラシオス
■編集 ギレルモ・ガッティ

■出演  ロレンソ・フェロ/チノ・ダリン/ ダニエル・ファネゴ/メルセデス・モラーン/セシリア・ロス

■第71回カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品

©2018 CAPITAL INTELECTUAL S.A / UNDERGROUND PRODUCCIONES / EL DESEO

【2019年12月21日から12月27日まで上映】

1971年、重大事件で逮捕された少年に世界は魅了され欲情した――

ブロンドの巻き毛に透き通る瞳、艶やかに濡れた唇、磁器のように滑らかな白い肌。神様が愛をこめて創ったとしか思えない美しすぎる17歳の少年、カルリートス。彼は欲しいものは何でも手に入れ、目障りなものは誰でも殺す。

息をするように、ダンスを踊るように、ナチュラルに優雅に。やがて新しい学校であった、荒々しい魅力を放つラモンと意気投合したカルリートスは、二人で様々な犯罪に手を染めていく。だが、カルリートスはどんなに悪事を重ねても満たされない想いに気づき始める――。

アルゼンチンの新たなる才能たちが目の眩むほどの熱量で放つ、興奮と陶酔のクライム青春ムービー

1971年、ブエノスアイレスで殺人と強盗の罪で逮捕され、その天使のような顔立ちで世界を魅了した少年がいた。アルゼンチンでは知らない者のない彼をモデルに、衝撃の実話を官能的なエンターテインメントに仕上げた本作。プロデューサーは、『トーク・トゥ・ハー』のペドロ・アルモドバルとその弟のアグスティン・アルモドバル、そして『人生スイッチ』のハビエル・ブリアなどが名を連ねる。

巨匠アルモドバルが、自身の美意識を引き継ぐ者として本作の監督に選んだのが、エッジーな映像センスが高く評価され、世界各国の映画祭で様々な賞を受賞してきたアルゼンチンのルイス・オルテガ監督。カルリートスを演じるのは、これが映画デビュー作にして、スクリーンから驚異のオーラを放つロレンソ・フェロ。

天使のように美しい17歳の少年カルリートスは、なぜ悪にその身を捧げたのか? 破滅への逃避行の中、カルリートスが一度だけ流した大粒の涙の意味とは? ボブ・ディランやアニマルズも愛した名曲「朝日のあたる家」の不穏で切ないメロディに乗せて、観る者の心を興奮と陶酔でざわめかせるクライム青春ムービー!

【特別レイトショー】恐るべき子供たち
【Late Show】The Terrible Children

ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品/1950年/フランス/105分/35mm/スタンダード/MONO

■監督・製作 ジャン=ピエール・メルヴィル
■原作・脚色・台詞 ジャン・コクトー
■撮影 アンリ・ドカエ
■衣装 クリスチャン・ディオール
■音楽 ヨハン・セバスチャン・バッハ/アントニオ・ヴィヴァルディ
■ナレーション ジャン・コクトー

■出演 ニコール・ステファーヌ/エドゥアール・デルミット/ルネー・コジマ/ジャック・ベルナール/ロジェ・ガイヤール

★レイトショー上映はどなた様も一律1000円でご鑑賞いただけます。
★チケットは連日、朝の開場時より受付にて販売いたします(当日券のみ)。
★ご入場は、チケットに記載された整理番号順となります。

O.G.C.

【2019年12月21日から12月27日まで上映】

死をかけて愛しあい、傷つけあう美しい姉と弟の恐るべき遊び。

母の死を契機に2人だけの世界をつくって愛し合う姉弟、エリザベートとポール。エリザベートの女友だちが、憧れていた男友だちにそっくりなことに気づいたポールは彼女と次第に恋心を通わせるようになる。それに嫉妬したエリザベートは2人の仲を引き裂こうとするのだが…。

ジャン・コクトーの代表作をJ・P・メルヴィルが映画化。ヌーヴェル・ヴァーグの先駆的作品!

深く愛しながらも争ってばかりいる姉弟、エリザベートとポール。この2人の奇妙な姉弟愛を描いた小説「恐るべき子供たち」は、小説家としてのジャン・コクトーの代表作である。監督は『いぬ』『ギャング』などフィルム・ノワールの第一人者として知られるジャン=ピエール・メルヴィル。本作では低予算、小編成スタッフで、撮影所のスタジオに一切頼らず撮影し、ヌーヴェル・ヴァーグの作家たちの手本となった。

コクトーは、メルヴィルから映画化の申し出があるまですべて断ってきたが、彼の処女作『海の沈黙』を見て映画化を許可したのだった。結果は見事なできばえで、メルヴィルの格調高い演出と詩的映像は深い感銘を与える。また、バッハの「4台のハープシコートの協奏曲」とヴィヴァルディのコンチェルトが、この作品の映像と見事に調和している。

撮影のアンリ・ドカエは『海の沈黙』でデビューし、後にルイ・マルの『死刑台のエレベーター』、シャブロルの『いとこ同士』、トリュフォーの『大人は判ってくれない』などの作品を手がげ、ヌーヴェル・ヴァーグ作品に欠かせないカメラマンとなった。