【2022/8/13(土)~8/19(金)】『余命10年』『ちょっと思い出しただけ』

もっさ

『ちょっと思い出しただけ』は、2021年の7月26日から一年ずつ同じ日を遡り、恋人たちの“終わりから始まり”の6年間を描きます。コロナ禍の今(2021年)とそれ以前ですっかり様変わりした世の中が描かれることで、「あの頃には戻れない」という思いに胸が痛くなります。

私がこの作品で気に入っているのは、主人公・照生の部屋です。一年を振り返る度に映し出されるその部屋には、彼の生活や精神的な変化が見事に表れています。一人の時もあれば、恋人・葉と共に過ごす時もあり。部屋が映るシーンはそんなに多くないけれど、それまでの一年にどんな日々を送っていたのかなぁ~と、想像力を掻き立てられてしまうのです。誰かと生活を共にすると、いやでも影響を受けるもので、二人がそれぞれ同じ音楽に合わせてちょっと変わった動きで腕を回す姿が印象的です。それはほんの些細なことかもしれませんが、確実に習慣として蓄積されていくのだなぁと感じます。そうやって積み重なったものが今の自分を形成していると思うと、なんだか愛おしいです。

『余命10年』は難病に侵された主人公・茉莉が余命宣告をされてからの10年を描きます。物語は恋愛が軸になっていますが、私が一番心に刺さったシーンは、家族のシーンです。互いに抱えている苦しみや悲しみが分かっているからこそ、感情を抑えて普通に接しているけれど、言葉の端々や視線だけでも伝わる愛情の大きさが余計に切なく胸を締め付けられます。

10年という長いとも短いとも言いきれない時の中で、彼女は同級生の和人と再会し恋をします。二人の心が交わる瞬間の、桜並木のシーンがとても素敵で、そして儚くて…。和人にとっては、茉莉との恋の始まりが彼女と共に歩む未来への一歩なのに、茉莉にとっては、そこから人生のカウントダウンが始まってしまうのです。だから二人で過ごす日常がひときわ輝いて見えるし、どんなに幸せなシーンであっても、茉莉の心の葛藤がひしひしと伝わります。

願っても、戻れないあの日。私たちの生活も、つい3年前までの普通とは変わってしまいました。今週お届けする映画は、『ちょっと思い出しただけ』と『余命10年』。なんでもない毎日が、かけがえのないものだと知った私たちの胸にぐさぐさと刺さる二本立てです。

ちょっと思い出しただけ
Just Remembering

松居大悟監督作品/2021年/日本/115分/DCP/ビスタ

■監督・脚本 松居大悟
■撮影 塩谷大樹
■振付 皆川まゆむ 
■編集 瀧田隆一
■劇伴 森優太
■主題歌 クリープハイプ『ナイトオンザプラネット』

■出演 池松壮亮/伊藤沙莉/河合優実/大関れいか/屋敷裕政/尾崎世界観/渋川清彦/成田凌/市川実和子/高岡早紀/神野三鈴/菅田俊/ 鈴木慶一/國村隼/永瀬正敏

■第34回東京国際映画祭観客賞・スペシャル・メンション受賞

©2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

【2022年8月13日から8月19日まで上映】

”ある1日”で遡る、ふたりの6年間――

2021年7⽉26⽇、この⽇34回⽬の誕⽣⽇を迎えた佐伯照⽣は、朝起きていつものようにサボテンに⽔をあげ、ラジオから流れる⾳楽に合わせて体を動かす。ステージ照明の仕事をしている彼は、誕⽣⽇の今⽇もダンサーに照明を当てている。

⼀⽅、タクシー運転⼿の葉は、ミュージシャンの男を乗せてコロナ禍の東京の夜の街を⾛っていた。⽬的地へ向かう途中でトイレに⾏きたいという男を降ろし、⾃⾝もタクシーを降りると、どこからか聴こえてくる⾜⾳に吸い込まれるように歩いて⾏く葉。すると彼⼥の視線の先にはステージで踊る照⽣の姿があった。

時は1年、また1年と遡り、照⽣と葉の恋の始まりや、出会いの瞬間が丁寧に描かれていく。不器⽤な2⼈の⼆度と戻らない愛しい⽇々を“ちょっと思い出しただけ”。

池松壮亮×伊藤沙莉主演!クリープハイプの新曲をもとに書き上げた、松居大悟監督初のオリジナルラブストーリー

クリープハイプの尾崎世界観が自身のオールタイムベストに挙げるジム・ジャームッシュの名作映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』に着想を得て書き上げた、本作の主題歌「ナイトオンザプラネット」。この楽曲を受けて、『バイプレイヤーズ』シリーズ、『くれなずめ』などこれまで仲間たちとの友情を描いてきた松居大悟監督が、初となる完全オリジナルラブストーリーを描く。

主演には実力・人気を兼ね備え、これまで『君が君で君だ』などで松居監督作品にも多く出演してきた池松壮亮と、今や数々の作品から引く手数多の伊藤沙莉が初共演。その他タクシーの乗客たち、主人公2人が行きつけのバーマスターや常連など個性豊かな登場人物には、永瀬正敏、國村隼、尾崎世界観、河合優実、成田凌を筆頭に豪華キャストが出演する。

余命10年
The Last 10 Years

藤井道人監督作品/2021年/日本/124分/DCP/シネスコ

■監督 藤井道人
■原作 小坂流加「余命10年」(文芸社文庫NEO刊)
■脚本 岡田惠和/渡邉真子
■撮影 今村圭佑
■編集 古川達馬
■音楽・主題歌 RADWIMPS『うるうびと』

■出演 小松菜奈/坂口健太郎/山田裕貴/奈緒/井口理/黒木華/田中哲司/原日出子/リリー・フランキー/松重豊

©2022映画「余命10年」製作委員会

【2022年8月13日から8月19日まで上映】

きみと出会って、この世界が愛おしくなった。

数万人に一人という不治の病で余命が10年であることを知った二十歳の茉莉。彼女は生きることに執着しないよう、恋だけはしないと心に決めて生きていた。そんなとき、同窓会で再会したのは、かつて同級生だった和人。別々の人生を歩んでいた二人は、この出会いをきっかけに急接近することに——。

もう会ってはいけないと思いながら、自らが病に侵されていることを隠して、どこにでもいる男女のように和人と楽しい時を重ねてしまう茉莉。——「これ以上カズくんといたら、死ぬのが怖くなる」。思い出の数が増えるたびに失われていく残された時間。二人が最後に選んだ道とは……?

監督:藤井道人×小松菜奈×坂口健太郎  映画全編をRADWIMPSの音楽で紡ぐ、涙よりも切ないラブストーリー 

切なすぎる小説としてSNS等で反響が広がり続け、ベストセラーを記録している原作小説を、『新聞記者』『ヤクザと家族 The Family』など、透明感のある映像美の評価が高い藤井道人監督が映画化。脚本は、多くの大ヒット作を世に放ってきた岡田惠和、渡邉真子が担い、実写映画の劇伴を手がけるのは初となるRADWIMPSが、主題歌「うるうびと」も書き下ろし、10年にわたる二人の物語に音で寄り添った。

二十歳で難病を発症し、余命10年となった茉莉に小松菜奈。茉莉と恋に落ち、その運命を大きく変える和人を演じたのは坂口健太郎。初共演となる最旬実力派の二人が、小説の文庫化を待たずして亡くなった著者の想いを引き継ぎ、「10年」の物語を全身全霊で演じる。また、二人の友人役に山田裕貴と奈緒が共演。茉莉の家族に黒木華、松重豊、原日出子。さらに田中哲司、リリー・フランキー、井口理など、豪華俳優陣が集結。

約一年に渡って四季を撮り続け、かけがえのない一瞬一瞬を鮮明に映し出し、誰もが経験する「大切な人たちとの日々」の素晴らしさを伝えてくれる感動作が誕生した。