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今回特集するのは日本返還前後の沖縄について描いた作品たちです。周知の通り、1972年に沖縄は米国から日本に返還されました。同年にデビューした南沙織をはじめ数多くの著名なタレントを輩出する一方、観光地として人気となった沖縄の人々に対する目に見える差別は影を潜めたように見えます。しかし依然として内地は米国の基地を沖縄に集中させたままです。基地反対運動は続いていますし、日本中の大多数の人々も沖縄は他の都道府県と同じ日本だと思っているはずなのに、45年間事態はほとんど変わっていないのが現状です。そしてそんな状態を、私を含む内地の人間も漫然と受け入れてしまっているようなところがあることも否定できません。

根本的な解決策は出ません。しかし、だからこそ東陽一、大島渚そして高嶺剛という日本を代表する映画作家三人が各々の観点で「沖縄」に向き合った作品たちは風化していないのだと思います。今回の特集が、「沖縄」を私たちひとりひとりの前に屹立する問題として考えるきっかけになれば幸いです。

(ルー)

沖縄列島
(1969年 日本 90分 35mm SD/MONO) pic 5/13(土)、15(月)、17(水)、19(金)上映 ■監督・脚本・編集 東陽一
■撮影 池田傳一
■音楽 松村禎三
■ナレーション 岡村春彦/村松克巳

★4日間上映です

私は今日も爆音の中で眠るのだ――
1968年、沖縄。
基地に囲まれた返還前の日常をとらえた
東陽一の長編デビュー作

pic 映画は再生ガラス工場でガラスびんの打ちくだかれるシーンからはじまる。打ちくだかれるのはアメリカ資本の沖縄産コーラの空きびんだ。飛び散るガラスの破片、溶解炉の炎。声がかぶさる。「日本の政府とね、日本の国民はね、私たちをアメリカに売りはらった…それは娘を売りはらった親父と同じ…恥ずかしくないのか」戦後23年の沖縄の現実が、さまざまな断片から浮き彫りにされる。

pic東京・晴海埠頭の渡航制限撤廃闘争で焼き捨てられるパスポート。米軍基地にはりめぐらされている有刺鉄線。床屋になりたい少女の夢。米軍兵士に相手にされない女性の泣き顔。基地をなくすと生活ができなくなると演説する一人の男――返還前の日常に横たわる沖縄の数多くの風景、人々の貌や声。このさまざまな現実の断片が寄せ集められてみると、沖縄列島全体が世界に不協和音を発していることに気づくだろう。東陽一の長編デビュー作にして、基地に囲まれた沖縄の日常を鋭く深くとらえた、新しい記録映画の世界の出現を思わせる問題作。

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やさしいにっぽん人
(1970年 日本 118分 35mm SD/MONO)
pic 5/13(土)、15(月)、17(水)、19(金)上映 ■監督・脚本・編集・音楽 東陽一
■脚本 前田勝弘
■撮影 池田傳一
■編集 関沢孝子
■音楽 田山雅光

■出演 河原崎長一郎/緑魔子/伊丹十三/伊藤惣一/石橋蓮司/蟹江敬三/渡辺美佐子

★4日間上映です

ひとりの青年をとりまく日常と夢――
東陽一が『沖縄列島』につづいて作り上げた初の劇映画

pic主人公は謝花治。友人からはシャカと呼ばれる。オートバイで走ることが好きで、バイクショップで働いている。シャカのガールフレンドがユメ。ふだんは寡黙なシャカが重い口をひらいてしゃべるのがユメとの語らいのひとときだ。シャカの心の傷――それはシャカの記憶の奥底にしかない。1歳あまりの時、集団自決で両親が死に、その場にいたのだった。その傷から解放されたいためか、まわりの人びとの「治療」から逃げるためかシャカは何度もツーリングに出るが…。

pic 長編デビュー作『沖縄列島』でドキュメンタリーを究めた東陽一は、本作では初の劇映画に挑み、沖縄出身の心に傷を秘めたひとりの青年をとりまく日常、そして夢を表現することで沖縄を描いた。河原崎長一郎、緑魔子、伊丹十三、伊藤惣一、石橋蓮司、蟹江敬三、渡辺美佐子など、出演陣の豪華な顔ぶれに目を見張る、さまざまな社会的矛盾をかかえながら高度成長に突き進んでいった時代に生まれた力作。日本映画監督協会新人賞を受賞。

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ウンタマギルー
(1989年 日本 120分 35mm VV/MONO) pic 5/14(日)、16(火)、18(木)上映 ■監督・脚本 高嶺剛
■撮影 田村正毅
■美術 星埜恵子
■編集 吉田博
■音楽 上野耕路

■出演 小林薫/戸川純/青山知可子/平良進/ジョン・セイルズ/照屋林助

©1989 PARCO

★3日間上映です

かつてオキナワは、日本ではなかった。
伝説の義賊(ヒーロー)ウンタマギルーの冒険を軸に
オキナワの風土と歴史を問う高嶺剛の代表作。

pic 1969年、「日本復帰」を目前にしたオキナワ。人々は復帰派、米軍統治維持派、沖縄独立派に別れ、島は日本とアメリカの間で揺れ動いていた。貧しい砂糖きび絞りの青年ギルーは、そのいずれにも属さず平凡な毎日を送っていたが、製糖所の親方の養女・マレーと関係した日から日常は一転する。なんとマレーは豚の化身で、彼女と寝たものは、神の祟りでミイラと化してしまうというのだ。それを免れるため、妖精キジムナーの助けによって、ギルーは伝説に残る義賊ウンタマギルー(運玉義留)へと変わっていく――。

ひとりの平凡な青年が運命のいたずらで超能力を身につけ、義賊(ヒーロー)となって活躍する――そんな痛快冒険ファンタジーを軸に、オキナワの風土と歴史を問うた『ウンタマギルー』。青い空、青い海、珊瑚礁――従来の日本人から見たオキナワの絵葉書的イメージを吹き飛ばし、<オキナワン・チルダイ>(琉球の聖なる気だるさ)を描く。夢と現実、現世と他界、人間と妖精などが絡まり合い、沖縄という場から立ち上ってくるファンタジーと多声的な物語の可能性を開いた高嶺剛の代表作。ベルリン国際映画祭カリガリ賞など国内外の映画祭で多数受賞。

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夏の妹
(1972年 日本 96分 35mm SD/MONO)
pic 5/14(日)、16(火)、18(木)上映 ■監督・脚本 大島渚
■製作 葛井欣士郎/大島瑛子
■脚本 田村孟/佐々木守
■撮影 吉岡康弘
■編集 浦岡敬一
■音楽 武満徹

■出演 小松方正/栗田ひろみ/りりィ/小山明子/石橋正次/佐藤慶/殿山泰司

©大島渚プロダクション

★3日間上映です

本土復帰にわきかえる沖縄の美しい自然を背景に、
少女の心情を通して日本と沖縄の関係を描く
巨匠・大島渚の異色作

pic夏休みも近い日、素直子のもとに一通の手紙が届いた。大村鶴男という沖縄の青年からで、彼の父は、彼が小さい時死んだものだと思っていたが、最近、母から素直子の父・菊地浩佑が鶴男の父らしいと知らされたというのである。夏休みに入り、素直子は父が再婚しようとしている若い女性、小藤田桃子に鶴男のことを打ちあけ、鶴男を探しに二人で沖縄へ旅立つ。

鬼才・大島渚が手掛けた異形のアイドル映画であり、彼が同時代の日本を描いた最後の作品。本土復帰にわきかえる沖縄の美しい自然を背景に、戦中と戦後を通じた日本と沖縄の関係が描かれていく。暗喩に満ちた語り口の端々には、大島の沖縄に対する想いがストレートに吐露されている。人気アイドルだった当時14歳の栗田ひろみが初主演したほか、後に日本映画に欠かせない名女優となるシンガーソングライターのりりィが初めて出演した作品としても知られている。

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