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フラメンコとアルゼンチン・タンゴ。歌・音楽・ダンスが一体となった伝統的なパフォーマンスから、そのジャンルを拡大するように活躍した偉大なアーティストたちがいます。『パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト』『ラスト・タンゴ』で描かれているのは、それぞれの巨匠たちが切り開いてきた、伝統という枠組みを超える革新的な道のりと、その背後にある彼らの人生の軌跡です。

フラメンコ・ギタリストのパコ・デ・ルシアは幼少期からギターを弾き始め、12歳でプロとしてデビューします。早熟なギターテクニックとは裏腹に、街でおしゃべりしている女の子たちの前を通るのが嫌だった、と語るナイーブなエピソードには共感してしまいます。力むことなく、温かく見つめるように話すパコが映し出されるのは、カメラを向けているクーロ・サンチェス監督が実の息子だからかもしれません。あらためて家族の間で話をするときのような、嬉しさと同時に恥ずかしさもある、そんな表情をしていると思います。また、ライブ前の神経を研ぎ澄ましている瞬間に、カメラを向けることができたのも彼が家族だったからかもしれません。私たちがライブやメディアで知ることのできる彼の姿と、そこでは見ることのできない普通の人間としての彼の姿を、このドキュメンタリーは同時にカメラに収めています。そして何より、パコ・デ・ルシアというフラメンコ・ギターのスターについての映画なだけでなく、監督にとっての「父の肖像」でもあるのです。

『ラスト・タンゴ』で描かれるのは伝説のタンゴ・ペア、マリア・ニエベスとフアン・カルロス・コペスの波乱に満ちた人生です。ヘルマン・クラル監督は50年近くペアを組み続けた彼らの愛憎まじる関係性を、マリアとフアンへのインタビューや、彼らの人生をモチーフにしたタンゴ・ダンス、さらにそのダンスを踊る若いダンサーたちの創作過程、という複数のドキュメンタリーで同時に表現します。インタビュー、演技、舞台裏と複数の要素が交錯しながら、次第に交じり合い、一つの映画として統合されていきます。まるで音楽が始まり、男女が組み合うことでタンゴが始まるように、この映画もそれぞれのシーンが組み合うことで成立しているのです。

どちらの映画も、単なる情報だけで作り上げたドキュメンタリーとは一線を画しています。巨匠たちにそれぞれの手法で近づいていくのです。今週お届けするのは、世界中の人々を魅了してきたパコやマリアとフアンの素晴らしいパフォーマンスと、彼らの激動の人生に寄り添った、作り手の息づかいを感じることができるドキュメンタリーの二本立てです。

(ジャック)

パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト
PACO DE LUCIA A JOURNEY
(2014年 スペイン 90分 DCP ビスタ) pic 2017年1月14日から1月20日まで上映 ■監督・脚本・エグゼクティブプロデューサー クーロ・サンチェス
■脚本 カシルダ・サンチェス
■撮影 アレハンドロ・ガルシア・フローレス/カルロス・ガルシア・デ・ディオス

■出演 パコ・デ・ルシア/チック・コリア/カルロス・サンタナ/ジョン・マクラフリン/ルベン・ブラデス/サビーカス/ エストレージャ・モレンテ

■2015年ゴヤ賞ベスト・ドキュメンタリー賞受賞/CEC AWARDSベスト・ドキュメンタリー賞受賞/TURIA AWARDSベスト・ドキュメンタリー賞受賞

©Ziggurat Films

愛を紡ぐ、情熱の旋律。
そして、伝説は生き続ける――。

pic フラメンコに革命を起こし、その超絶的な速弾きと類まれなるテクニックで、ジャンルを超えて世界中の音楽ファンを魅了し続けた偉大なるギタリスト、パコ・デ・ルシア。わずか12歳でプロのフラメンコ・ギタリストとしてデビューし、その才能はフラメンコにとどまらず、ジャズ/フュージョンへと活躍の場を広げた。

1979年には、アル・ディ・メオラ、ジョン・マクラフリンとの3人でアコースティック・ギターのみでツアーを敢行。続く81年に発表したアルバムによって、スーパー・ギター・トリオの愛称で親しまれ、世界中で人気を博すまでとなる。本作では、7歳でギターを手にしてから最後のアルバムとなった“Cancion Andaluza”まで、60年間の軌跡を辿る。

心躍る演奏シーンと貴重なインタビューで綴る、
天才の知られざる素顔

監督クーロ・サンチェスはパコの実の息子であり、プロデューサーのルシア・サンチェス・バレラと脚本の共同執筆者カシルダ・サンチェスは監督の姉妹。滞在先のメキシコで心臓発作で急逝する直前まで回されたカメラには、今まで誰にも見せなかったパコの、人生、政治、芸術、孤独に対する深遠な考えが、プライベートな素顔とともに余すところなく映し出されている。

セクシーな魅力で世の女性たちの心も掴んで離さない、世界を股にかけたスーパー・ギタリストの、頑ななまでの完璧主義ぶりと狂気に近い音楽探求への執念、その生き様に刻まれた栄光と挫折。カルロス・サンタナ、チック・コリアをはじめとするレジェンドたちのインタビューと、圧倒的なテクニックによって生み出される、官能的で華麗なる旋律が奏でる数々の名演奏シーンに心躍る、至福の音楽体験!

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ラスト・タンゴ
UN TANGO MAS
(2015年 ドイツ/アルゼンチン 85分 DCP ビスタ)
pic 2017年1月14日から1月20日まで上映 ■監督・製作・脚本 ヘルマン・クラル
■製作総指揮 ヴィム・ヴェンダース/ロドリゴ・フュルト/ヤコブ・アブラハムソン
■撮影 ヨー・ハイム/フェリックス・モンティ
■音楽 ルイス・ボルダ/セステート・マジョール/ゲルト・バウマン

■出演 マリア・ニエベス/フアン・カルロス・コペス/パブロ・ベロン/アレハンドラ・グティ/フアン・マリシア/アジェレン・アルバレス・ミニョ

©WDR / Lailaps Pictures / Schubert International Film / German Kral Filmproduktion

人生に引き裂かれ、
タンゴで結ばれたふたり

pic名物ダンスとなったテーブル上のタンゴを考案するなど、アルゼンチン・タンゴに革命を起こした伝説のタンゴペア、マリアとフアン。14歳と17歳で出会ってから50年近く踊り続け、世界に名声を轟かせた名コンビだ。しかし栄光の裏ではいくどとなく、愛、嫉妬、裏切りが繰り広げられていた。愛憎を芸術的なタンゴ・ダンスに昇華できたのは、タンゴへの情熱と互いへの尊敬の念があればこそだ。

しかし、1997年、ついにコンビを解消する。他のダンサーでは理想の踊りができないと骨の髄まで知る彼らに、いったい何が起きたのか。以来、対面すら避けていたふたりだったが、後継者となる若きタンゴダンサーに波乱の人生とタンゴへの愛を語り始めた…。

ヴィム・ヴェンダース製作総指揮!
孤高のタンゴ・ダンサーの半生を浮き彫りにする

pic 製作総指揮はドイツの名匠、ヴィム・ヴェンダース。『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ 』、『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち 』などドキュメンタリーの名手でもある彼が、愛弟子のヘルマン・クラル監督をサポートした。アルゼンチン出身のクラル監督は、苦い過去に口をつむぐマリアとフアンに粘り強い取材を敢行。ふたりの心の揺らめきをタンゴ・ダンスで再現したことで、ドキュメンタリーの新境地を切り拓いた。

picマリアとフアンの闘いの日々を表現するのは、サリー・ポッター監督の『タンゴ・レッスン』で本人役を演じたパブロ・ベロンやタンゴダンス世界選手権優勝者など名ダンサーが競演。官能的なタンゴの魅力を、セステート・マジョールなど名門楽団による名曲の数々が彩る。天使のように舞う初恋のダンス、口論のごとく激しく脚を絡め合う憎しみのダンス。秘めた想いをダンスで表現する彼らにとって、タンゴは人生そのものなのだ。ままならない男と女のドラマを情熱的なタンゴ・ダンスで魅せる。

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