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大衆の多くは無知で愚かである―アドルフ・ヒトラー

今週の早稲田松竹は『帰ってきたヒトラー』『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』の二本立て。この二本の映画は、民衆たちの拭い去れない恐怖や不安から生まれ、大きく歴史を変えてしまった出来事を題材に作られています。

アドルフ・ヒトラーのような独裁者を生み出してしまったことや、罪なき思想の持ち主を政治犯として投獄・迫害してしまう事件。これらは時の為政者たちの考えや陰謀を反映したものであったとはいえ、民衆たちに望まれて起きたことだと言えます。

『帰ってきたヒトラー』で現代のドイツにヒトラーが現れた時、彼は時代錯誤と思える発言をしつつも、その情熱的で強い意志を持って発せられる言葉は、現在のドイツが抱えている問題と出会うことで説得力を持ってしまいます。

映画の物語と同様、撮影でヒトラーの物真似をしながら俳優がドイツの街を歩くとき、人々は彼をどう受け取るか。この作品ではセミ・ドキュメンタリー形式で多くの人々との対話のシーンがあります。「まさかヒトラーが現在にいるわけない」「あの悪夢のような歴史を繰り返すわけない」そんな慢心でしょうか。それともヒトラー自身に魅力があったというのでしょうか。SNSや動画共有サイトを通じて彼の発言力は高まり、難民問題を抱える不満から、愛国心を強くするドイツ国民は映画の中で、ヒトラーの存在を無視することができません。

『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』で描かれている50年代のハリウッドでは、全米を覆うマッカーシズム(反共産主義の社会運動)の波の中で、多くの知識人だけでなく著名な監督や脚本家も尋問を受けていました。脚本家であるダルトン・トランボはその中で、己の意見を変えずに公聴会での証言を拒んだため、服役。出所後も彼の名前で仕事をさせてくれる映画会社はなく、関わった作品からは原則的に名前が消されるようになってしまいました。

「赤狩り」と呼ばれるこの事件では、仲間を密告する者や反抗する者、ひそかに主義主張を変える人々がいました。その結果、その後の人生を大きく狂わせて、数多くの才能がハリウッドから消え去ることになります。ハリウッドではいまだにこの傷を癒すことはできていません。

資本主義経済の行き詰まりや、紛争地帯からの難民の流入による職業難。すでに欧米だけに留まらない世界的なテロの恐怖。自国の資本の流出を防ぎ、国家の治安や利益を守ろうと、世界中でナショナリズムが高まる現代。わたしたちを取り巻く状況は不安や恐怖に溢れています。

「英雄も敗者もいなかった。いたのは被害者だけだ」書くことでこの追放が無意味であることを証明しようとしたトランボは言います。この歴史を繰り返さないために、不毛な出来事が二度と起こらないようにと願いを込められて作られた映画たち。奇しくも『独裁者』でヒトラーを演じて、その後赤狩りによってアメリカを追放されたチャールズ・チャップリンに捧げたくなる二本立て。現代社会のモラルをいま考えてみるのはいかがでしょうか。

(ぽっけ)

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
TRUMBO
(2015年 アメリカ 124分 DCP ビスタ) pic 2016年12月24日から12月30日まで上映 ■監督 ジェイ・ローチ
■原作 ブルース・クルック「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(世界文化社刊)
■脚本 ジョン・マクナマラ
■撮影 ジム・デノールト
■音楽 セオドア・シャピロ

■出演 ブライアン・クランストン/ダイアン・レイン/ヘレン・ミレン/ルイス・C・K/エル・ファニング/ ジョン・グッドマン/マイケル・スタールバーグ

■第88回アカデミー賞主演男優賞ノミネート/ゴールデン・グローブ賞主演男優賞・助演女優賞ノミネート

©2015 Trumbo Productions, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

『ローマの休日』を書いた男は、
なぜハリウッドから追放されたのか?

pic 第二次世界大戦後、共産主義排斥活動“赤狩り”が猛威を振るうアメリカ。その理不尽な弾圧はハリウッドにも飛び火し、売れっ子脚本家ダルトン・トランボは、議会での証言拒否を理由に投獄されてしまう。やがて出所し、最愛の家族の元に戻ったものの、すでにハリウッドでのキャリアを絶たれた彼には仕事がなかった。しかし、友人にこっそり脚本を託した『ローマの休日』に続き、偽名で書いた別の作品でもアカデミー賞に輝いたトランボは、再起への歩みを力強く踏み出すのだった…。

理不尽な弾圧と闘い抜いた脚本家の
苦難と復活の軌跡を描く感動の実話!

picオードリー・ヘプバーンの可憐な美しさとともに語り継がれる『ローマの休日』は、恋愛映画の不朽の名作として世界中で愛されているが、誰がこの物語を思いつき、脚本を書いたのかを知る人はほとんどいない。本編にクレジットされなかった真の作者ダルトン・トランボは、いわれなき汚名を着せられてハリウッドから追放され、栄えあるアカデミー賞のオスカー像を受け取ることもできなかったのだ。

pic 1940〜50年代にハリウッドを震撼させた赤狩りによって、長らく偽名での創作活動を強いられたトランボが、愛する家族の支えを得て不屈の闘いを繰り広げる姿を描いた『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』。テレビシリーズ「ブレイキング・バッド」で知られるブライアン・クランストンが、硬い信念を貫いたトランボの型破りでユーモアに満ちた生き様を体現し、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。激動期のハリウッドの内幕をきめ細やかに描くとともに、言論や思想の自由という現代に通じるテーマを追求した本作は、観る者の心を揺さぶってやまない。

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帰ってきたヒトラー
Er ist wieder da
(2015年 ドイツ 116分 DCP ビスタ)
pic 2016年12月24日から12月30日まで上映 ■監督・脚本 デヴィッド・ヴェンド
■原作 ティムール・ヴェルメシュ「帰ってきたヒトラー」(河出文庫刊)
■撮影 ハンノ・レンツ
■音楽 エニス・ロトホフ

■出演 オリヴァー・マスッチ/ファビアン・ブッシュ/クリストフ・マリア・ヘルプスト/カッチャ・リーマン/フランツィスカ・ウルフ/ラース・ルドルフ/マイケル・ケスラー/トーマス・ティーメ

©2015 Mythos Film Produktions GmbH & Co. KG Constantin Film Produktion GmbH Claussen & Wobke & Putz Filmproduktion GmbH

21世紀の諸君、お待たせしました。
現代にタイムスリップしたヒトラーが
モノマネ芸人として大ブレイク!

picヒトラーの姿をした男が突如街に現れたら? リストラされたテレビマンに発掘され、復帰の足がかりにテレビ出演させられた男は、長い沈黙の後、とんでもない演説を繰り出し、視聴者のドギモを抜く。自信に満ちた演説は、かつてのヒトラーを模した完成度の高い芸と認識され、過激な毒演は、ユーモラスで真理をついていると話題になり、大衆の心を掴み始める。しかし、皆気づいていなかった。彼がタイムスリップしてきた【ホンモノ】であることを――。

ギャップに笑い、まっすぐな情熱に惹かれ、
正気と狂気の一線を見失う――。
世界中を沸かせた【超問題アリ】ベストセラー
恐れを知らぬ映画化!

pic 歴史上【絶対悪】であるヒトラーが現代に甦り、モノマネ芸人として引っ張り出されたテレビの世界で大スターになるという大胆不敵な小説が2012年にドイツで発売。絶賛と非難の爆風をくぐり抜け、国内で200万部を売り上げた。世界41カ国で翻訳、権威あるタイムズのベストセラーリストでも堂々NO.1に輝いた問題小説が、まさかの映画化!

主役を演じるのは、リアリティを追求するために選ばれた無名の実力派舞台俳優。ヒトラーに扮した彼が街に飛び込み、実在の政治家や有名人、果てはネオナチと顔を合わせるというアドリブシーンを盛り込んだセンセーショナルな展開と、原作とは違う予測不能な結末は、一大ブームを巻き起こした。

第二次世界大戦から70年が経ち、全てが変わった現代社会で、あの頃と変わらぬ思想とともに生きる男が繰り出すギャップに笑い、かつて熱狂的に支持されたままの、誰よりも愛国心に富んだまっすぐな情熱に惹かれ、正気と狂気の一線を見失っていく現代の人々の危うさ――。モラルと背徳の狭間ギリギリの危険なコメディが、あなたの足元をぐらつかせる。

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