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『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』『マップ・トゥ・ザ・スターズ』
温度の低い視線で淡々と進んでいく両作品は不穏な空気に溢れている。
「いったい何が?」「なぜ?」という疑問をそのままにして、
たやすく衝撃的なシーンを積み重ねていく様子は、
賛否を問わず、記憶に残るのではないだろうか。

『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』では
スカーレット・ヨハンソンが人間の皮を着たエイリアンを演じている。
彼女は黙々と大きな車を運転し男をみつけては、 スイッチが入ったかのように誘惑し、連れ去る。
その機械のような振る舞いにはうすら怖いものを感じるが、
一方で、次々捕獲されてしまう男たちの会話のよそよそしさの内にも、
同じようにそれぞれの目的が見え隠れする。
どちらの皮膚の下にも得体の知れないモンスターが存在しているのだ。

ハリウッドを舞台とする『マップ・トゥ・ザ・スターズ』の登場人物たちもまた、
己のモンスターを抑えることが出来ない。
自身の欲望と不安に引き裂かれ、それでもあがき続ける様子は、物悲しく、滑稽だ。
奔放であることをやめられないハリウッドセレブたち。
母の幽霊にとらわれる落ち目の女優、
謎のツボを押す怪しい療法でカウンセリングするセラピスト、
そしてそのセラピストの息子は超有名子役で薬物中毒。
物語が進むにつれて、華やかな生活の裏にある悲惨さが、
彼らの言動を通して星座のように浮かび上がってくる。
ハリウッドに降り立つ火傷を負った少女の登場が、 彼らの負の循環をゆっくりと映し出す。
歯止めをなくした人間の本性は、なんて不気味なのだろう。

何気ない動作や表情の背後には、見ることのできない感情や目的が渦を巻く。
今週上映する映画はそういった見えないものを形にする。
一方は人間でない者の視点で、もう一方は過剰な人間らしさを通して。
映画の世界だけの話ではなく、現実でも同じようにうごめいている欲望を、
この両作品は冷静な視線でとらえているのだ。

(ジャック)

アンダー・ザ・スキン 種の捕食
UNDER THE SKIN
(2014年 イギリス 108分 DCP R15+ ビスタ) pic 2015年4月18日から4月24日まで上映 ■監督・脚本 ジョナサン・グレイザー
■原作 ミッシェル・フェイバー 「アンダー・ザ・スキン」(アーティストハウス刊)
■製作 ジェームズ・ウィルソン/ニック・ウェクスラー
■脚本 ウォルター・キャンベル
■撮影 ダニエル・ランディン
■編集 ポール・ワッツ
■音楽 ミカ・レヴィ

■出演 スカーレット・ヨハンソン/ポール・ブラニガン

■第70回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品/第57回ロンドン国際映画祭ベストフィルム部門出品/第38回トロント国際映画祭スペシャル・プレゼンテーション部門出品/第12回ダブリン国際映画祭撮影賞受賞/「カイエ・デュ・シネマ」誌2014年ベスト10第3位/「サイト&サウンド」誌2014年ベスト20第5位/英ガーディアン紙2014年ベスト10第1位

宇宙で最も美しく
最も危険な捕食者(エイリアン)

pic真夜中の街で妖艶な美女が、道行く男たちに声をかけては闇に消えていく…。一枚ずつ服を脱ぎながら誘う美女。男たちは彼女たちの正体に気付かないまま、飲み込まれ、そして姿も形も無く、衣服だけが残されている。謎の美女の正体は、地球外生命体だった。慈悲のかけらも無く男を捕食し続けていた彼女だが、あることがきっかけで人間的な感情を持ち始める。だがそれは、さらなる恐るべき惨劇の始まりでもあった――。

地球外生命体の侵略を描いた
SFスリラー小説の映画化!

最もセクシーな女性No.1に2度も選ばれたスカーレット・ヨハンソン。本作では初のフルヌードに挑戦し、撮影当初から話題になっていた。共演は、『天使の分け前』に演技経験もないまま主演し、その演技が注目されたポール・ブラニガン。監督は、ジャミロクワイの「Virtual Insanity」や、レディオヘッドの「karma police」などの名作ミュージックビデオを数多く手がけた映像作家ジョナサン・グレイザー。

pic撮影では、街中に変装させたスカーレット・ヨハンソンを送り出し、周りにスタッフがいないところで演技を行うという手法をとり、自然で緊迫感のある映像を撮ることに成功した。ミッシェル・フェイバーの小説「アンダー・ザ・スキン」を原作に、スタイリッシュで、新たなるSF映画の形を見せ、監督にとって『記憶の棘』以来、ベネチア国際映画祭コンペに2度目の出品をしている。

全米で公開されると、ヨハンソンの話題性もあり週末のアベレージでNo.1を獲得。その内容は賛否を巻き起こしたが、「カイエ・デュ・シネマ」誌の2014年ベスト10第3位をはじめ、世界各国の映画雑誌や批評家から2014年のベスト10に軒並み選出され話題となった。

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マップ・トゥ・ザ・スターズ
MAPS TO THE STARS
(2014年 カナダ/アメリカ/ドイツ/フランス 112分 DCP R15+ ビスタ) pic 2015年4月18日から4月24日まで上映 ■監督 デヴィッド・クローネンバーグ
■脚本 ブルース・ワグナー
■製作 マーティン・カッツ/サイド・ベン・サイド
■撮影 ピーター・サシツキー
■衣装 デニース・クローネンバーグ
■編集 ロナルド・サンダース
■音楽 ハワード・ショア

■出演 ジュリアン・ムーア/ミア・ワシコウスカ/ジョン・キューザック/ロバート・パティンソン/エヴァン・バード/オリヴィア・ウィリアムズ/サラ・ガドン

■2014年カンヌ国際映画祭最優秀女優賞受賞(ジュリアン・ムーア)・パルムドールノミネート/ゴールデン・グローブ賞女優賞ノミネート(ジュリアン・ムーア)

その祈りは、永遠の呪い。

picワイス家は典型的なハリウッドのセレブファミリー。父のワイスはセレブ向けセラピストとして、TV番組も持つ成功者だ。13歳の息子ベンジーはドラッグの問題を乗り越え、超有名子役としてブレイク中。そして母親のクリスティーナは、ステージママとして息子の出演作の物色にいとまがない。いっぽう、ワイスのセラピーを受けている落ち目の女優ハバナは、知人の紹介で顔に火傷のある少女アガサを個人秘書として雇うことに。しかし、この少女はある問題を起こしてフロリダの施設に入れられていたワイス家の長女だった――。

鬼才・クローネンバーグが描く「ハリウッド」。
名声・称賛・絶望、全てを飲み込むこの残酷で美しい街で
極上の悪夢が今、幕を開ける!

pic 世界的映画祭の常連であり、71歳にしてなお新たなテーマに挑戦し続けるクローネンバーグ監督の新作は、ハリウッドでリムジン運転手だった脚本家ブルース・ワグナーの実体験に基づく物語だ。舞台はハリウッド、初のアメリカでの撮影を実施。一見すると何不自由ない華やかな生活を送る人々の心に潜む闇と狂気を、次々と暴き出してゆく。

pic女優ハバナ役を演じたジュリアン・ムーアが見事にカンヌ国際映画祭最優秀女優賞を獲得。さらに若手注目女優ミア・ワシコウスカ、前作『コズモポリス』で監督にほれ込み、脚本があがる前に出演を快諾したロバート・パティンソン、そして名優ジョン・キューザック、オリヴィア・ウィリアムズら豪華キャストが集結。ハリウッドセレブを強烈な風刺とユーモアを交えて描いた本作は、観るものすべてを魅了する。

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