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鈴木清順

1923年、東京日本橋の呉服屋の長男として生まれる。本名は清太郎。

43年に学徒出陣により応召。復員後の48年に松竹大船撮影所の助監督試験に合格。54年、製作再開した日活に移籍し、『港の乾杯 勝利をわが手に』('56)で監督デビュー。58年に鈴木清順と改名。プログラム・ピクチャーの巧い作り手として評価され、以後名作・快作・佳作を連打する。

67年に発表した40本目の作品『殺しの烙印』が当時の日活・堀久作社長の逆鱗に触れ、翌年4月日活から一方的に専属契約を打ち切られる。同時期、シネクラブ研究会が清順作品の上映を計画するも、堀社長はプリント貸出を拒否。それによって映画関係者やジャーナリズムを巻き込んだ「鈴木清順問題共闘会議」が発足(71年12月に和解)。

80年に発表した『ツィゴイネルワイゼン』、続く『陽炎座』('81)、『夢二』('91)の三作が"浪漫三部作"として国内外で評価される。また「日本映画監督協会俳優部」を自称し、俳優としてテレビドラマ「ムー一族」や、映画『ヒポクラテスたち』『不夜城』など多数出演する。

近年も『殺しの烙印』を自らリメイクした『ピストルオペラ』('01)や、長年温めてきた企画『オペレッタ狸御殿』('05)を発表し、カンヌ国際映画祭・栄誉上映特別招待作品として招待された。

81年芸術選奨文部大臣賞、90年紫綬褒章、96年勲四等旭日小綬章。06年に第24回川喜多賞受賞。

filmography

・港の乾杯 勝利をわが手に('56)
・帆綱は唄う 海の純情('56)
・悪魔の街('56)
・浮草の宿('57)
・8時間の恐怖('57)
・裸女と拳銃('57)
・暗黒街の美女('58)
・踏みはずした春('58)
・青い乳房('58)
・影なき声('58)
・らぶれたあ('59)
・暗黒の旅券('59)
・素ッ裸の年齢('59)
・13号待避線より その護送車を狙え('60)
・けものの眠り('60)
・密航0ライン('60)
・すべてが狂ってる('60)
・くたばれ愚連隊 ('60)
・東京騎士隊('61)
・無鉄砲大将('61)
・散弾銃の男('61)
・峠を渡る若い風('61)
・海峡、血に染めて('61)
・百万弗を叩き出せ('61)
・ハイティーンやくざ('62)
・俺に賭けた奴ら('62)
・探偵事務所23 くたばれ悪党ども('63)
・野獣の青春('63)
・悪太郎('63)
・関東無宿('63)
・花と怒濤('64)
・肉体の門('64)
・俺たちの血が許さない('64)
・春婦伝('65)
・悪太郎伝 悪い星の下でも('65)
・刺青一代('65)
・河内カルメン('66)
・東京流れ者('66)
・けんかえれじい('66)
・殺しの烙印('67)
・悲愁物語('77)
・ツィゴイネルワイゼン('80)
・陽炎座('81)
・カポネ大いに泣く('85)
・ルパン三世 バビロンの黄金伝説('85)
・夢二('91)
・結婚('93)
・ピストルオペラ('01)
・オペレッタ狸御殿('04)

※劇場監督作品のみ。

50年代末から60年代の日本において、映画人口はやや減少し出したといっても、まだまだ映画は国民の最大の娯楽のひとつでした。二本立て、三本立て興行が普通だったこの時代、各映画会社は自社スター主演の新作を毎週のように全国の映画館に送り込んでいました。このころは、映画会社の考える「おもしろさ」が、お客さんにストレートに届いていた幸福な時代だったといえると思います。

そんなとき、スター主演の娯楽映画を量産していた日活撮影所の中から、あまりに特異な映画を撮る異端児が登場します。それが今回の特集の主役・鈴木清順監督です。

時に極端に様式化されるスタイリッシュな画面構成、シュールな人物造形、鮮やかな原色の使用や奇抜なセットによって映画の虚構性を前面に押し出した彼の作品は、物語上の意味やメッセージに収斂できない、アヴァンギャルドな感覚を打ち出します。「映画は所詮娯楽ですよ」とでもうそぶくように、普通の劇映画の枠内で確信犯的に映画の常識を破りまくるこの韜晦な天才監督の作品は、一部で熱狂的なファンを獲得しますが、同時に会社からの無理解にもさらされます。68年に日活を解雇された彼は、10年の沈黙ののち、独自の美学に基づくさらに自由奔放な映画づくりの道を突き進んでいくことになるのでした…。

タランティーノやジャームッシュを筆頭に、世界中のクリエーターにリスペクトされる稀代の映画作家・鈴木清順。今回上映するのは、清順の日活時代の代表作4本です。

ワイルド極まりない世界に清冽な詩情が迸る大傑作『けんかえれじい』を始め、清順らしい色づかいが全開の痛快なガンアクション『東京流れ者』、様式美の極致が爆発するクライマックスが語り草になっている『刺青一代』、過激さゆえに、当初の血まみれなラストが日活にカットされてしまったといういわくつきの怪作『野獣の青春』。どれも「清順美学」の炸裂した異色作ですが、今見ると娯楽映画としてのカッチリした完成度の高さにも驚かされます。

清順の到達した独自の映画観は、娯楽映画監督としての矜持あってのものだと思います。あくまでも映画的な「おもしろさ」をトコトン追求する姿勢から生まれたものであり、いわゆる難解さとは無縁のものです。アヴァンギャルドな映像や音づかいも、活劇と一体となってことごとく映画的快楽に奉仕するラディカルさ。清順映画が今なお力づよく、私たちを魅了する理由はそこにあると思います。

まだ清順映画を未体験の方にとって、今回の特集がディープな清順ワールドに足を踏み入れるきっかけになってもらえたら幸いです。

(ルー)

東京流れ者
pic (1966年 日本 83分 35mm シネスコ/MONO)
2014年7月26日から7月28日まで上映
■監督 鈴木清順
■原作・脚本 川内康範
■撮影 峰重義
■美術 木村威夫
■音楽 鏑木創

■出演 渡哲也/松原智恵子/吉田毅/二谷英明/郷えい治/江角英明/川地民夫

★3日間上映です。

<歌謡+任侠>× POPアクション!
世界のファンを魅了した、清順アクション美学の最高峰!

pic「頼む、俺を怒らせないでくれ!」流れ者の歌をくちづさむ“不死鳥の哲”こと本堂哲也を、数名の男がとり囲んだ。哲也の属する倉田組が、やくざ稼業から不動産業にかわったのを根にもち、ことごとく喧嘩をうろうとする大塚組のものであった。哲也は不本意にも、倉田の持ちビルを狙う大塚組との抗争に巻き込まれてしまう…。

『月光仮面』の川内康範が原作と脚本を書き、新人・渡哲也が主演した歌謡アクション。…のはずだったが、出来上がった映画は通俗さの中にアヴァンギャルドな映像美が弾ける傑作。低予算を逆手にとって簡素化/抽象化されたセット、原色にこだわり抜いた映像設計が印象的だが、当初はラストで緑の月が上るはずだったというから、清順恐るべし。『野獣の青春』『殺しの烙印』と並んで、海外での人気も高い。

けんかえれじい
pic (1966年 日本 86分 35mm シネスコ/MONO)
2014年7月26日から7月28日まで上映
■監督 鈴木清順
■原作 鈴木隆
■脚本 新藤兼人
■撮影 萩原憲治
■美術 木村威夫
■音楽 山本直純

■出演 高橋英樹/浅野順子/川津祐介/片桐光雄/宮城千賀子/加藤武/玉川伊佐男/浜村純/佐野浅夫/松尾嘉代

★3日間上映です。

啖呵きったらあとには退けぬ! それが男の生きる道!
逆打ち、跳び蹴り、白刃どり!
熱血ヒデキが見せる、秘伝の喧嘩兵法!

pic岡山中学の名物男・南部麒六は“喧嘩キロク”として有名だ。喧嘩のコツを教えるのが、先輩のスッポン。そのスッポンのすすめでキロクは、OSMS団に入団する。岡山中学五年生タクアンを団長とするガリガリの硬派集団だ。ある日、OSMS団と関中のカッパ団とが対決、キロクの暴れぶりは凄まじく、この喧嘩で忽ち副団長となった。しかしキロクにも悩みがあった。下宿先の娘道子が大好きで、硬派の手前、道子とは口もきけないのだった…。

pic『悪太郎』二部作の延長線上にある青春映画だが、前二作がオーソドックスに描かれていたのに対して、こちらはぐっと猥雑でにぎやかな作り。喧嘩のシーンのアクションとギャグ(映画評論家の石上三登志と森卓也がアイディア面で参加)、喧嘩キロクの異名をとる主人公と憧れのマドンナのユーモラスなくだりなど、娯楽映画としての楽しさ、おもしろさは絶品。『続けんかえれじい』の脚本も完成したが、実現には至らなかった。

刺青一代
pic (1965年 日本 87分 35mm シネスコ/MONO)
2014年7月29日から8月1日まで上映
■監督 鈴木清順
■脚本 直居欽哉/服部佳
■撮影 高村倉太郎
■美術 木村威夫
■音楽 池田正義

■出演 高橋英樹/花ノ本寿/山内明/伊藤弘子/和泉雅子/松尾嘉代/小松方正/高品格/野呂圭介

■パンフレット販売なし

★4日間上映です。

男冥利の、刺青背中に、意地と度胸の白刃飛ぶ!
豪快! 英樹が斬りまくる仁侠巨篇!

pic東京深川の木場で、男が戸塚組の親分岩松を刺した。目にも鮮やかな「白狐」の刺青をした男、“白狐の鉄”と異名をとる大和田組の渡世人、村上鉄太郎であった。堅気になることを条件に、大和田組組長の命令で岩松を刺したのだ。鉄は美術学校に入る為、仏具屋に修業に行っている弟・健次を訪ねた。鉄が大和田組の政吉に銃口をつきつけられ、あわやという時、帰ってきた健次がかけつけ、政吉を射ち殺してしまった。堅気の弟に傷がつくのを恐れ、2人は満州へ逃げようとするが…。

当時の映画青年たちを熱狂させ、映画作家・清順の名を一躍高めた任侠映画の傑作。渡世のしがらみから他人をあやめたやくざ者の姿を描く物語はありふれたものだが、クライマックスの殴り込みのシークエンスで様式美が沸点に達する。無人の座敷でふすまを次々に開けていくくだりの色彩感覚、畳の下からガラス越しに仰角で捉えた立ち回り…。大向こうから声がかかりそうな清順演出に陶然とさせられる。

野獣の青春
pic (1963年 日本 92分 35mm シネスコ/MONO)
2014年7月29日から8月1日まで上映
■監督 鈴木清順
■原作 大藪春彦
■脚本 池田一朗/山崎忠昭
■撮影 永塚一栄
■美術 横尾嘉良
■音楽 奥村一

■出演 宍戸錠/木島一郎/渡辺美佐子/川地民夫/鈴木瑞穂/小林昭二

■パンフレット販売なし

★4日間上映です。

現実を信じるな! リアリズムを打ちのめせ!
世界を驚愕させた宍戸錠×鈴木清順の
ハードボイルドアクションの傑作!

pic連れ込み宿で男と女が死んでいた。男は竹下公一、現職の刑事だった。数日後、盛り場のチンピラたちをやっつけてまわるカッコいい風来坊が現われた。たちまちジョーというその男は野本組の用心棒におさまる。竹下の四十九日の法事の日、ジョーが未亡人のくみ子に挨拶しているのを刑事の広川は見た。ジョーはもと刑事、ふとしたことから免官されグレてしまったのをなにくれとなくかばったのが同僚竹下だったのだ…。

鈴木清順の「美学」が開花した傑作。元刑事が二つのギャング組織の対立の渦中に飛び込み、双方を煽って共倒れさせるというハードボイルド活劇の典型的なパターンながら、その特異なディテールの数々が強烈な魅力を放つ。マジックミラー越しのキャバレーの空間、映画館のスクリーンの裏にある組の事務所、突如巻き起こる黄色い砂塵、ビザールなキャラクター群など、ありふれたプロットが誰も見たことのない夢幻的な空間へと変貌していくさまが見事。

※あらすじ・解説はすべて“日活100周年邦画クラシックス 公式サイト”「清順スタイル(ワイズ出版刊)」より抜粋

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