ダンサー・イン・ザ・ダーク
Dancer in the Dark
(2000年 デンマーク 140分 シネスコ・SRD)
2012年6月2日から6月8日まで上映
■監督・脚本 ラース・フォン・トリアー
■撮影 ロビー・ミュラー
■振付 ビンセント・パターソン
■音楽 ビョーク
■出演 ビョーク/カトリーヌ・ドヌーブ/デビッド・モース/ピーター・ストーメア/ジョエル・グレイ/ビンセント・パターソン/ウド・キア
■2000年カンヌ国際映画祭パルムドール・主演女優賞受賞
★本編はカラーです。
60年代、アメリカの片田舎。チェコからやってきたセルマは女手ひとつで息子ジーンを育てながら、工場で働いている。彼女に保護者のような愛情を注いてくれる、年上の同僚キャシーら隣人に囲まれ、つつましくも穏やかに暮らしていた。そんなセルマの生きがいはミュージカル。アマチュア劇団で「サウンド・オブ・ミュージック」の稽古をしたり、仕事帰りにミュージカル映画を観るのがなによりの楽しみだった。
しかし彼女には悲しい秘密があった。遺伝性の病のため視力を失いつつあり、息子ジーンも手術を受けない限り同じ運命を辿ることになるのだ。愛する息子に手術を受けさせたい。その願いを叶えるため、懸命に働くセルマ。しかし、視力の悪化や疲労からくる度重なるミスで、遂に工場を解雇されてしまう。さらにジーンの手術代として貯めていたお金が盗まれ、セルマの運命は思わぬ方向に転がっていく――。
『奇跡の海』『イディオッツ』で世界中から注目を浴びていた鬼才ラース・フォン・トリアー監督が、アイスランド出身のカリスマシンガー、ビョークを主演に迎えて作り上げた本作。苛酷な運命に翻弄されながらも自らの信念を貫き、愛する息子のために全てを投げ打つ母の姿を斬新な映像で描き、2000年のカンヌ国際映画祭において見事パルムドールと主演女優賞の2冠に輝いた。
主人公セルマを演じるビョークは、自ら映画音楽を担当し、全ての曲を映画のために書き下ろしている。また、セルマの友人キャシーには、フランスの大女優カトリーヌ・ドヌーブが扮し、『ロシュフォールの恋人たち』以来の歌声を披露した。
強靭な母の愛、受け継がれていく希望と生命の素晴らしさを訴えかける衝撃的なラスト。セルマの魂の叫びに触れた時、我々は自己存在そのものを揺り動かされるほどの激しい感動に打ち震えるに違いない。
メランコリア
MELANCHOLIA
(2011年 デンマーク・スウェーデン・フランス・ドイツ 135分 シネスコ・SRD)
2012年6月2日から6月8日まで上映
■監督・脚本 ラース・フォン・トリアー
■製作 ミタ・ルイーズ・フォルディガー/ルイーズ・ヴェス
■撮影 マヌエル・アルベルト・クラロ
■出演 キルスティン・ダンスト/シャルロット・ゲンズブール/キーファー・サザーランド/アレクサンダー・スカースガード/シャーロット・ランプリング/ジョン・ハート/ステラン・スカースガード/イェスパー・クリステンセン/ウド・キアー
■2011年カンヌ国際映画祭主演女優賞受賞/全米批評家協会賞作品賞・主演女優賞受賞/ヨーロッパ映画賞作品賞・編集賞・プロダクションデザイン賞受賞
その日はジャスティンにとって、人生最高の1日になるはずだった。マイケルとの結婚パーティーは、いま、姉クレアと夫ジョンの豪華な邸宅で盛大に行われている。しかし、皆の祝福を受けながら、ジャスティンは激しい虚しさと気だるさにとらわれていた。何かに絡みつかれたのように、自らの感情をコントロールできなくなるジャスティン。そして、パーティーは最悪の結末を迎える。
憔悴しきったジャスティンが、クレアとジョンの邸宅を再び訪れたのは、惑星メランコリアが地球に異常接近していた時だった。地球との衝突を恐れて怯えるクレア。しかし、ジャスティンはなぜか心が軽くなっていく感覚を覚える。「地球は邪悪よ。消えても嘆く必要ないわ。」メランコリアが地球に最も接近する夜。ジャスティンはクレアたちと共に、その瞬間が訪れるのを待ち構えていた。それは「世界の終わり」が訪れるかもしれない瞬間――。
世界中の観客、批評家から常に新作が待望されるラース・フォン・トリアー監督が放つ新作は、「世界の終末」に直面した、ある姉妹をめぐる荘厳な叙事詩だ。主人公ジャスティンに扮するのは、『ヴァージン・スーサイズ』『マリー・アントワネット』のキルスティン・ダンスト。本作の演技でカンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞した。ジャスティンを心から気づかいケアをする姉クレアには、トリアー監督の前作『アンチクライスト』で同じく同映画祭の主演女優賞を受賞したシャルロット・ゲンズブール。互いに苦悩、葛藤する姿を、二人は繊細かつ大胆に演じている。
あまりに優雅なワーグナー「トリスタンとイゾルデ」の調べに導かれるように、『メランコリア』は圧倒的な映像美で、その世界観を明らかにしていく。オープニングを飾る、ジャスティンと惑星をめぐる象徴的なイメージの数々や、映画史上類を見ないエンディングは、想像を絶する壮大な光景である。「ある種のハッピーエンド」とトリアー監督が語るこの作品の結末。果たしてこれは魂の救済なのか?2012年最大の問題作が、遂に全貌をあらわす。