【2024/7/20(土)~7/26(金)】『哀れなるものたち』+『バービー』

ジャック

今週の上映は『バービー』と『哀れなるものたち』の二本立て。バービー人形の暮らすバービーランドだったり、19世紀の架空のヨーロッパが舞台だったりと、どちらの作品もなんとも突飛な設定です。しかしそこで描かれているのは映画の中だけでは収まり切らない、容赦なく私たちを立ち止まらせ、葛藤させる「現実」の世界が映し出されています。

バービーランドでの楽しい毎日が続くはずだったバービーは、ある日唐突に自分の身体の異変や心の不安を感じ、その原因を探すために人間の世界へと出発します。「世界を自分の目で見たい」という強い欲望に駆られた『哀れなるものたち』のベラは自分の住む家から飛び出し、外の世界への旅を始めます。旅といえば、ワクワクした気持ちになる印象を持ちますが、この二つの映画ではそうはいきません。彼女たちが知る外の世界は、あまりに不公平で歪なのです。

人と自分は違うのに、どうして同じであることを求められてしまうか。訳もわからず任された社会の役割をこなしながら、なんとなく生きている私たちの世界が、この二つの物語に現れているのではないでしょうか。そしてさらに感じることは、その役割を自分が他人にも強要しようとしているのかもしれないという点です。様々な人が共に社会で生きていることを認識しなければならない、現代における重要な問題が『バービー』と『哀れなるものたち』にはあるように思います。

と考えを巡らせながらも思い返すと、どちらの作品も色鮮やかでユーモラス、そしてファンシーな魅力に溢れています。「なんだこれ」とクククと笑うこともできてしまう、まるでおとぎ話のような映画。身につまされる思いになりながらもどこか爽快で、絵本を読み終えた後に残るような味わいを感じる二つの物語を、ぜひお楽しみいただければと思います。

バービー
Barbie

グレタ・ガーウィグ監督作品/2023年/アメリカ/114分/DCP/シネスコ

■監督・脚本・製作総指揮 グレタ・ガーウィグ
■製作 デイビッド・ヘイマン/マーゴット・ロビー/トム・アカーリー/ロビー・ブレナー
■撮影 ロドリゴ・プリエト
■美術 サラ・グリーンウッド
■衣装 ジャクリーン・デュラン

■出演 マーゴット・ロビー/ライアン・ゴズリング/アメリカ・フェレーラ/ケイト・マッキノン/イッサ・レイ/マイケル・セラ/シム・リウ

■第96回 アカデミー賞主題歌賞受賞・作品賞ほか6部門ノミネート/第81回 ゴールデングローブ賞最優秀主題歌賞・シネマティック・ボックスオフィス・アチーブメント賞受賞・ 最優秀作品賞ほか6部門ノミネート ほか多数受賞・ノミネート

©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

【2024/7/20(土)~7/26(金)上映】

完璧なバービーランドから、人間の世界へ──。2人が知った驚きの秘密とは?

すべてが完璧で今日も明日も明後日も《夢》のような毎日が続くバービーランド!バービーとボーイフレンド? のケンが連日繰り広げるのはパーティー、ドライブ、サーフィン。

しかし、ある日突然バービーの身体に異変が!原因を探るために人間の世界へ行く2人。そこはバービーランドとはすべて勝手が違う現実の世界だった。行く先々で大騒動を巻き起こすことに?!彼女たちにとって完璧とは程遠い人間の世界で知った驚きの〈世界の秘密〉とは? そして彼女が選んだ道とは?

世界で一番有名な ファッション・ドール、“バービー”の世界を初の映画化!

ドールの世界に革命を起こし、世界中を熱狂させてきたバービー。オシャレでかわいいだけではなく、常に時代を先回りし、性別や人種を超え「You Can Be Anything(なりたい自分になれる)」を発信、世界中に勇気を与えてきた。そのバービーの、想像をはるかに超えたパワフルな物語が誕生した!

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』のマーゴット・ロビー×『ラ・ラ・ランド』のライアン・ゴズリングが《夢》のようなバービーランドで暮らすバービーとケンを見事に演じ、『レディ・バード』でアカデミー監督賞・脚本賞にノミネートされ評論家から高い評価を得ているグレタ・ガーウィグが監督を務める。

哀れなるものたち
Poor Things

ヨルゴス・ランティモス監督作品/2023年/イギリス/142分/DCP/R18+/ヨーロピアン・ビスタ

■監督 ヨルゴス・ランティモス
■製作 エド・ギニー /アンドリュー・ロウ /ヨルゴス・ランティモス /エマ・ストーン
■原作 アラスター・グレイ (「哀れなるものたち」早川書房刊)
■脚本 トニー・マクナマラ
■撮影 ロビー・ライアン
■編集 ヨルゴス・モブロプサリディス
■衣装デザイナー ホリー・ワディントン
■ヘア・メイクアップ&特殊メイクデザイナー ナディア・ステイシー 

■出演 エマ・ストーン/マーク・ラファロ/ウィレム・デフォー/ラミー・ユセフ/クリストファー・アボット/スージー・ベンバ /ジェロッド・カーマイケル/キャスリン・ハンター/ヴィッキー・ペッパーダイン/マーガレット・クアリー/ハンナ・シグラ

■第80回 ベネチア国際映画祭金獅子賞受賞/第96回 アカデミー賞主演女優賞・美術賞・衣装デザイン賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞受賞・作品賞ほか6部門ノミネート/第81回 ゴールデングローブ賞最優秀作品賞(ミュージカル/コメディ)・最優秀主演女優賞(ミュージカル/コメディ)受賞・最優秀助演男優賞ほか5部門ノミネート ほか多数受賞・ノミネート

©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

【2024/7/20(土)~7/26(金)上映】

あちこち 世界を楽しまなくちゃ

自ら命を絶った不幸な若き女性ベラは、天才外科医ゴッドウィンの手によって、奇跡的に蘇生する。ゴッドウィンの庇護のもと日に日に回復するベラだったが、「世界を自分の目で見たい」という強い欲望に駆られ、放蕩者の弁護士ダンカンの誘惑で、ヨーロッパ横断の旅に出る。急速に、貪欲に世界を吸収していくベラは、やがて時代の偏見から解き放たれ、自分の力で真の自由と平等とを見つけていく。そんな中、ある報せを受け取ったベラは帰郷を決意するのだが…。

ヨルゴス・ランティモスとエマ・ストーンが誘う 大胆で、空前絶後の”冒険”

『女王陛下のお気に入り』で映画賞を席巻したヨルゴス・ランティモス監督が、再びエマ・ストーンとの最強タッグを組んで贈るのは、想像を遥かに超えた麗しくかつあまりにも大胆な冒険物語。世界最高峰の才能を集めて構築されたのは、眩いほどの色彩を散りばめた壮麗かつ緻密な美術、ユーモラスでありながら荘厳で情感あふれる音楽、華麗かつ大胆さを極めた衣装、度肝を抜くカメラワークを駆使した撮影。さらに、奇想天外でありながら映画史に残るカタルシスに満ちたエンディングへと導く脚本に支えられ、ランティモス監督にしか成し得ない、10年に1度の壮大な傑作が誕生した。

主人公ベラに扮するのは『ラ・ラ・ランド』に続き、本作で2度目のアカデミー賞主演女優賞を受賞したエマ・ストーン。ジェンダー、年齢、国籍、時代、そのすべてを超越して、真の自由を手にするために前へと進み続けるベラを、繊細かつダイナミックに演じきり、誰もが初めて出会う爽快なキャラクターを映画史に残した。今回はプロヂューサーとしても名を連ね、企画の立ち上がりから世界観を作り上げることに貢献している。また、ベラの父親代わりとなる天才外科医のゴッドウィンにウィレム・デフォー、ベラを波乱の旅に連れ出すダンカン役にはマーク・ラファロなど、芸達者たちが脇を固める。