【2024/4/20(土)~4/26(金)】『カラオケ行こ!』『リンダ リンダ リンダ』// 特別モーニング&レイトショー『天然コケッコー』

おまる

山下敦弘監督の作品を観ると、映画ってみんなで作ってるんだな~と思うんです。そしてその現場を想像すると楽しそう。みんなで作るのは当たり前だし、実際の現場は決して楽しいだけじゃないはず。でもそう思ってしまうのはなぜだろう。

『カラオケ行こ!』は、ヤクザの成田狂児が合唱部部長(中3)・岡聡実に歌のレッスンをお願いするところから物語が始まります。ある意味ファンタジーみたいな設定でありながら、お話の真ん中にいる聡実くんが抱えているのは声変わりというリアルな問題。そんな思春期ボーイを演じた齋藤潤くん自身も撮影当時はちょうど15歳だったことも手伝って、子供から大人へのグラデーションが瑞々しく丁寧に映し出されています。二度とは戻れないある瞬間が切り取られている、ただそれだけで心が揺さぶられます。

『リンダ リンダ リンダ』は、今や青春バンド映画といえば真っ先に挙げられる一本。今見ても日本のごくフツーの高校にぺ・ドゥナが存在しているのがまず面白い。画が面白い。高校生最後の文化祭直前に組んだ即席バンドというワケもあって、メンバーのバラバラ感も面白い。それでも一緒に練習する! ブルーハーツを歌う! バンドをする意味とかいらないんです。ただただシンプルな初期衝動が気持ちいい。卒業したらもう会うかも分からないけど、この瞬間はみんなでバンドをする。たったそれだけのストーリーなのに、彼女たちから目が離せなくて、胸が熱くなるのです。

ど田舎が舞台の『天然コケッコー』。海、山、太陽に包まれた日本の原風景のようなロケーションの中で、当時10代の夏帆と岡田将生がそりゃもう眩しくて眩しくて…。夏帆ちゃん演じるちょっとドン臭いけど心優しい方言丸出しのそよちゃんも、山下監督曰く当時「役者前夜」だった岡田くんの飛びぬけるような透明感と初々しさが混じる大沢くんも、ぜんぶが愛おしい。あの瞬間じゃなきゃ撮れなかったふたりです。

なんだか山下監督が羨ましくなってきました。映画作りを通して、心が揺さぶられたり、胸が熱くなったり、愛おしい気持ちでいっぱいになる、そんな尊い瞬間に立ち会ってきたんですね。そうか! 山下監督の映画を観て沸き上がった気持ちはこれなのか。みんなで映画を作った先に、そんなご褒美のような瞬間があるなんて。これからもその瞬間を見逃すわけにはいきません。なんたって今年はこれから3本も監督作の公開が待っているんですから。

カラオケ行こ!
Let's Go Karaoke!

山下敦弘監督作品/2024年/日本/107分/DCP/シネスコ

■監督 山下敦弘
■脚本 野木亜紀子
■原作  和山やま「カラオケ行こ!」(ビームコミックス/KADOKAWA 刊)
■撮影 柳島克己
■編集 佐藤崇
■音楽 世武裕子
■主題歌 Little Glee Monster 「紅」

■出演 綾野剛/齋藤潤/芳根京子/北村一輝/橋本じゅん/やべきょうすけ/吉永秀平/チャンス大城/RED RICE(湘南乃風)/八木美樹/後聖人/井澤徹/岡部ひろき/米村亮太朗/坂井真紀/宮崎吐夢/ヒコロヒー/加藤雅也

©2024『カラオケ行こ!』製作委員会

【2024/4/20(土)~4/26(金)上映】

青春も延長できたらいいのに

合唱部部長の岡聡実はヤクザの成田狂児に突然カラオケに誘われ、歌のレッスンを頼まれる。組のカラオケ大会で最下位になった者に待ち受ける“恐怖”を回避するため、何が何でも上達しなければならないというのだ。狂児の勝負曲はX JAPANの「紅」。聡実は、狂児に嫌々ながらも歌唱指導を行うのだが、いつしかふたりの関係には変化が…。聡実の運命や如何に?そして狂児は最下位を免れることができるのか?

ヤクザmeets中学生feat.カラオケ!?あまりにもありえない出逢いから、思いもよらない物語が始まる――

今最も注目を集める漫画家・和山やまの2020年に発売された「カラオケ行こ!」(KADOKAWA)は、マンガ大賞2021第3位をはじめ、名だたる漫画賞に続々とランクインし、累計発行部数60万部を突破。ついに人気コミックが豪華スタッフ&キャストにより映画化された。

監督は音楽×青春×喜劇が融合した『リンダ リンダ リンダ』や『味園ユニバース』をはじめ、『オーバーフェンス』『1秒先の彼』など、独自の世界観を探求し続ける名手・山下敦弘。そして脚本はドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」、映画『罪の声』など多くの話題作を手がける稀代のヒットメーカー・野木亜紀子。ギャラクシー賞を受賞したドラマ「コタキ兄弟と四苦八苦」に続くタッグで、ユーモラスで愛おしく、優しい感動に包まれる爽快エンターテインメントを作り上げた。

絶対に歌がうまくならなければならないヤクザ・成田狂児役を託されたのは、『ヤクザと家族 The Family』『オールドルーキー』など幾多の映画・ドラマで活躍し続ける実力派・綾野剛。そして物語のカギを握るキャラクターであり、変声期に悩む合唱部部長の中学生・岡聡実役には、オーディションを勝ち抜き選ばれた、期待の新星・齋藤潤。悩める思春期の心をリアルに表現しつつ、ヤクザの歌声を一刀両断する容赦のなさが痛快だ。そのほか、この2人を囲むのは、芳根京子、北村一輝、橋本じゅん、やべきょうすけ、吉永秀平、チャンス大城、RED RICE(湘南乃風)といった多彩な面々。各々が演じる個性的なキャラクターと、その「十八番」を響かせてくれるのも見どころとなっている。

リンダ リンダ リンダ
Linda Linda Linda

山下敦弘監督作品/2005年/日本/114分/DCP/ビスタ

■監督 山下敦弘
■脚本 向井康介/宮下和雅子/山下敦弘
■撮影 池内義浩
■編集 宮島竜治
■音楽 ジェームス・イハ
■バンドプロデュース 白井良明
■主題歌 ザ・ブルーハーツ「終わらない歌」

■出演 ペ・ドゥナ/前田亜季/香椎由宇/関根史織(Base Ball Bear)/三村恭代/湯川潮音/山崎優子(me-ism)/甲本雅裕/松山ケンイチ/小林且弥/小出恵介/三浦誠己/りりィ/藤井かほり/近藤公園/ピエール瀧/山本浩司/山本剛史

■2005年日本映画プロフェッショナル大賞 監督賞受賞

©2005「リンダ リンダ リンダ」パートナーズ

【2024/4/20(土)~4/26(金)上映】

高校生活 最後の文化祭――。ただ、何かを刻みつけたかった。

高校生活最後の文化祭のステージに向けて、オリジナル曲の練習を重ねてきたガールズバンド。ところが本番まであと3日という時になって、メンバー2人が怪我と喧嘩で脱けてしまった。残されたドラムの響子、キーボードからギターに転向した恵、ベースの望の3人はふとしたきっかけからブルーハーツのコピーをやることに! そして彼女たちがボーカルとして声をかけたのは、なんと韓国からの留学生・ソン!? 寄り道だらけの猛練習が始まった!

女子高生がブルーハーツ! 笑えて泣けて、キュンとなる 21世紀型青春バンド・ムービー!

監督は、類い稀なるコメディセンスと的確な演出力が光る山下敦弘。10代の心の微妙な揺れや高揚を繊細かつ明朗に活写し、青春のかけがえのない日々をスクリーンに焼きつけた。

ブルーハーツを演奏するバンド<パーランマウム>のメンバーを演じたのは、ボーカルに大抜擢される留学生・ソンを、『ベイビー・ブローカー』『あしたの少女』など韓国を代表する俳優となったペ・ドゥナ。ドラムの響子役には『バトル・ロワイアル』の前田亜季。ギターの恵役には『パビリオン山椒魚』香椎由宇。そしてベースの望役をロックバンドBase Ball Bearのベーシスト・関根史織が扮している。

映画の核である音楽面では、<パーランマウム>のバンドプロデュースをムーンライダーズの白井良明が手がけているほか、スマッシング・パンプキンズ解散後もシーンをリードし続けるジェームズ・イハが、やさしくも躍動感あふれる劇中スコアを書き下ろし、主人公たちの学園生活を鮮やかに彩っている。

【モーニング&レイトショー】天然コケッコー
【Morning & Late Show】A Gentle Breeze in the Village

山下敦弘監督作品/2007年/日本/121分/35mm/ビスタ

■監督 山下敦弘
■脚本 渡辺あや
■原作  くらもちふさこ「天然コケッコー」(集英社刊)
■撮影 近藤龍人
■編集 宮島竜治
■音楽 レイ・ハラカミ
■主題歌 くるり「言葉はさんかく こころは四角」

■出演 夏帆/岡田将生/夏川結衣/佐藤浩市/柳英里紗/藤村聖子/森下翔梧/本間るい/宮澤砂耶/田代忠雄/二宮弘子/井原幹雄/斉藤暁/廣末哲万/黒田大輔/大内まり

■2007年日本アカデミー賞 新人俳優賞受賞

© 2007 「天然コケッコー」製作委員会

【2024/4/20(土)~4/26(金)上映】

全校生徒たった6人の田舎の分校に ある日 東京から転校生がやってきた

中学二年生の右田そよの住む自然豊かな小さな村には、たった6人の小中学生しかいない。そんな田舎の分校に、ある日、東京からの転校生・大沢広海がやってくる。そよたちの知らない言葉と、都会の匂いを放って。そよにとって大沢は初めての同級生だった。期待に胸を膨らませ、大沢と仲良くしようとするが、都会育ちの乱暴な言葉に驚いてしまう。そんな大沢への誤解から、そよの気持ちはすっかりしぼんでしまうのだが、村のある”近道”をきっかけに、そよは大沢に対して親しみを覚えるようになる…。

海、山、太陽――自然の光と音のなか、きらきらと今を生きる ゆったりとした時の流れが、体の中に入りこみ、不思議な優しさと幸福感があふれる、あたたかな永遠の感動作

田舎で暮らす少女の何気ない日常をリアルに描き、長い間ファンの胸に深く根ざし愛され続けてきた、漫画家くらもちふさこの名作コミック「天然コケッコー」。若草の萌える野のように活き活きとした原作の映画化に挑むのは、鋭い感性と透徹した洞察力を持ち、『リンダ リンダ リンダ』などで日本中を爽やかな感動で包んだ山下敦弘監督。自然豊かな町を舞台に、少女が初恋を経験し、家族や友達や村人に見守られながら成長していく、今を切り取った、笑顔いっぱいの物語となった。

主演には、はじける笑顔が魅力の夏帆と、相手役に爽やかな魅力が光る岡田将生。当時の初々しさがそのまま映し出された二人を中心に脇役に存在感あふれる佐藤浩市、演技派の夏川結衣と期待を裏切らないベテランのキャスティングから、等身大の子供たちの無邪気な演技が冴え渡る。

脚本は映画『ジョゼと虎と魚たち』『メゾン・ド・ヒミコ』、ドラマ「カーネーション」「エルピス-希望、あるいは災い-」などの名脚本を生み出し、研ぎ澄まされた言語感覚で、他の追随を許さない渡辺あや。全編に透徹な空気を生みだした音楽はレイ・ハラカミが担当。そして主題歌にはくるりを迎え、本映画への愛情を綴った歌詞とメロディで、爽やかで感動的なラストを作り出している。